2001年度冬学期専修コース特別講義「法の定立と公共政策」

 

「在外日本人・在日外国人をめぐる諸問題」についてのオムニバス講義のうち、つぎの3回を担当します
11月30日  第8回 財政法・租税法(1)(増井)
12月7日  第9回 財政法・租税法(2)(増井)
12月14日  第10回 財政法・租税法(3)(増井)

 
個人所得課税を主な素材としつつ、次の点について論ずる予定です
○居住者と非居住者――課税管轄の基礎、住所基準と市民権基準、他の法分野との比較
○居住者の課税――二重課税の排除、非永住者制度の存在意義、いわゆるexit tax
○非居住者の課税――人の移動と内外無差別原則、年金やストックオプションにかかる課税

 
必要な法令資料などは配付します
参考文献として以下のものがあります
Rijkele Betten, Income Tax Aspects of Emigration and Immigration of Individuals (1998)
宮本十至子「人の国際的移動(labour mobility)に伴う企業年金掛金の課税問題」第22回日税研究賞入選論文集41頁(1999)
増井良啓「非永住者の給与分割」税務事例研究43号35頁(1998)
 
 

2002年2月実施の試験(第3問)の講評
問題
「国境を越える個人の移動に関して、日本の所得税法のルールは、今後どのような方向に進むべきですか。授業で論じた点を踏まえ、大きな青写真を描いてください。」
講評
よくできていました。答案は、おおむね2つのことを論じていました。
1、 国際課税の基本について(居住地管轄と源泉地管轄、CENとCIN、二重課税排除の方式)。
2、 各論的な論点について(非永住者制度の存在意義、個人株主に対する間接外国税額控除の要否、租税条約の調和、国際的な税務執行の協力など)。
中には、全世界所得課税のルールに正面から疑問を呈し、現行制度に果敢に挑戦するものもあり、自分の頭で論理を構築しているところを高く評価しました。ただし、出国に伴うキャピタル・ゲイン課税のあり方や、拡張的納税義務の要否などについては、授業で論じただけに、意見を述べてほしかった。なお、以上の他にも、非居住者と無差別取扱い、駐在員の年金課税、ストックオプションの課税など、日本法は多くの課題をかかえています。今後さらに勉強を継続していってください。