早稲田大学法学部2003年「国際租税法」火曜3限

★前期用の法令集と、後期用の法令集その2とを、必ず教室に持参してください。
★新しい日米租税条約が署名されました
 

(1)この講義のポイント
経済活動はグローバルに展開していますが、税制はローカルであり各国まちまちです。その結果、同一の経済活動に対して、複数の国が何度も課税したり、どの国も課税しなかったりする現象が生じます。この問題に対処するため、19世紀末から、国内法と条約の両面で、さまざまな工夫がなされてきました。これが、国際課税または国際租税法とよばれる分野です。この授業では、国際租税法について体系的に学びます。

(2)教科書
水野忠恒編著『国際課税の理論と課題』(改訂版1999年)を購入してください。必要な法令については、コピーして配付する予定です。よい参考書がたくさん出版されていますので、それらについては、随時説明します。学習のためには、村井正編『教材国際租税法T』(2001年)に、事例と設問が付されています。

(3)進行予定
T 序説
U 対内取引
V 対外取引
W 租税条約
参加者の「顔の見える」対話型の授業にしますので、意欲のある積極的な方の参加を歓迎します。

(4)リンク
OECDの「有害な税の競争」関係文書(とくに1998年報告書
税制調査会「平成15年度における税制改革についての答申」(中でも五5国際課税の部分)

(5)過去問
2002年9月試験問題(前期末)
第1問(30分相当)
 現行所得税法7条は、つぎのように定めています。
「所得税は、次の各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に掲げる所得について課する。・・・二 非永住者 第161条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得・・・及びこれ以外の所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの」
 これを改正し、
「所得税は、次の各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に掲げる所得について課する。・・・二 非永住者 すべての所得」
としたならば、何が変わりますか。この改正は望ましいですか。
第2問(30分相当)
 米国メジャーリーグで活躍する野球選手タローは、カリフォルニア州法にもとづいてT社を設立した。T社は、日本のJ社と契約を締結し、J社が日本国内でタローのオリジナルグッズを販売する場合、その売上高の10%を受け取ることとした。T社はまた、「タローのページ」というウェブサイトを開設し、タローの在日ファンクラブ会員が有料で、インターネットを通じ、「野球を100倍楽しむ方法」などのアドバイスをタロー本人から受けることができるものとした。
 この事例における日本での課税関係はどうなりますか。必要に応じ事実を補いつつ、国内法の適用関係を論じてください。日米租税条約の存在は無視してかまいません。

2003年2月試験問題(後期末)
日米租税条約の改訂にあたり課題となる点をいくつか選び出し、任意の角度からコメントせよ。

2002年度学年末未済・再試験問題
租税条約と通商協定の異同について論ぜよ。

(6)前期試験問題
第1問(60点)
現行所得税法161条は「この編において『国内源泉所得』とは、次に掲げるものをいう。」として、「5 内国法人から受ける第24条第1項(配当所得)に規定する配当等」と定めている。いま仮にこの規定を改正し、「5 内国法人及び国内に恒久的施設を有する外国法人から受ける第24条第1項(配当所得)に規定する配当等」としたとしよう。
(1) 現行法と比べて何が変わるか。具体例をあげて現行法との違いを示してください。
(2) この改正は望ましいか。多角的に論じてください。
第2問(40点)
ボストンに本店のあるX社は、経営コンサルティングを主たる業務としている。X社は、複数の大手日本企業の再建を支援するため、新宿西口に事務所を構えようとしている。幹部クラス従業員を数名、いずれも4年間滞在予定で本店から派遣するほか、東京でも新たに従業員を雇用する。当座の余裕資金は邦銀に預けることにした。日本での課税関係はどうなりますか。