租税法 2年次選択必修 4単位

○経済活動を行うさいには,必ずといってよいほど租税が関係します。そのため,租税法を学んでおくことは,法科大学院での貴重な時間を割いて取り組むに値するプロジェクトです。

○この授業の学習目標は,租税法の基本を理解したうえで,条文を読み解き,適切な先例を参照しながら,さまざまな経済取引にあてはめる力を身につけることです。さらに,租税が人々の行動にどう影響するかを知り,あるべきルールを提案するための訓練を行います。

○とりあげる素材は所得税法を中心とし, これに関連する範囲で法人税法国税通則法を含み,いずれも基本的な部分に限ります。 租税専門の法律家(tax lawyer)をめざす方だけでなく,より広い範囲の受講者を念頭におきます。 より専門的な事項については,3年次開講の「国際租税法」「金融取引課税法」「租税と諸法」などで扱います。

○教材としては、『ケースブック租税法(第5版)』を使って授業を進めます。詳しい予習範囲や,新しい判例などについては,法科大学院教育支援システムのサイトをごらんください。

〇税制調査会の答申へのリンク

〇授業担当者の問題意識については第1回の授業でお話ししますが,一言でいいますと《急激なビジネスモデルの変化にどう対応するか》ということになります。 この点につき,平成29年度税制改正の解説「国際課税関係の改正」は,次のように述べています。
「近年、企業のビジネスモデルは大きく変化しています。グローバル化や情報通信技術の進展を背 景に、多国籍企業の活動は複雑化の一途を辿っており、生産、雇用、販売、マーケティング等をグ ローバルなレベルで最適な国・地域に配分するようになっています。
 このようなビジネスモデルの変化に伴い、グローバルな資本や資産の移動にも顕著な変化が見ら れ、例えば、増加傾向にあるクロスボーダーの直接投資については、工場設立を通じた海外進出や 実体のある企業のM&Aだけでなく、投資先国での活動を前提としない実体の伴わないペーパー・ カンパニー等への投資が増加しています。また、知的財産の開発の場所と、知的財産からの収益が 受領される場所が一致しない傾向も見られます。
 このような企業行動の変化や国際資本移動の変容に、国際課税制度を適合させていく際には、健 全な企業活動が阻害されないようにすることはもとより、一部の行き過ぎたタックス・プランニン グを行っている企業に対して競争上不利になることも避けなければなりません。また、公平な競争 条件をグローバルに整えるためには、税制の隙間や抜け穴をふさぎ、国際課税ルールを再構築して いく努力を各国が協調して継続していくことが欠かせません。」
 この記述が念頭においている国際課税ルールの再構築は,一見すると国際租税法のテクニカルな話題のようにみえますが,実は,公財政の土台に深く関係し,しかも,国内税制に関する基礎的な理解抜きで進めることはできません。 授業では租税法に関する基本的な事項の理解につとめ,そういった基本が,経済のデジタル化といった最新のトピックとどう関係しているかを,見通していきたいと思います。
 なお,上記引用の記述を裏付けるデータは,税制調査会のこのサイトで一覧できます。