2006年度冬学期「国際課税」
675S   増井良啓 月曜日5限

(内容) 
経済活動はグローバルに展開していますが、税制はローカルであり各国まちまちです。その結果、同一の経済活動に対して、複数の国が何度も課税 したり、どの国も課税しなかったりする現象が生じます。この問題に対処するため、19世紀末から、国内法と条約の両面で、さまざまな工夫がなされてきまし た。これが、国際課税とよばれる分野です。このゼミは、国際課税の基本的な枠組みについてじっくり考え、議論することを目的とします。

(すすめ方) 
2部構成とし、国際課税に関する基礎知識を獲得するための前半(11月まで)と、具体的な問題に関する参加者報告を中心とする後半(12月以降)に分けます。後半にとりあげる素材については、参加メンバーの問題関心に応じ、演習開始後に相談して決めます。たとえば、次のようなものが候補となり ます。

*日本の租税条約締結ポリシーの歴史的変遷 手がかりとなる文献リスト

*日米租税条約の2004年改訂の意義 財務省サイト

*日仏租税条約改訂議定書の2007年1月12日署名 財務省サイト
*PEに帰属する利得に関するOECDの2006年12月リリース OECDサイト

*カナダにおける会社形態からインカム・トラストへの転換と所得課税 エコノミスト誌の記事

*デット・アサンプションと源泉徴収 東京高判平成17・12・21

American Bar Associationの国際課税改革論 報告書(pdfで164頁あります)

*原油価格変動リスクのヘッジと有効性判定 新日本石油プレスリリース

*アジア開発銀行の税制をめぐる対話活動 第16回会議

U2の事業拠点選択とメディア Daily Telegraph  関連記事
*移転価格税制の取引単位利益法に関するOECDの取り組み ビジネスからのコメント

*知的財産立国と移転価格税制 武田薬品プレスリリース
*国境を越えるM&Aと税制 公認会計士協会研究報告
*タックス・ヘイブンの存在とOECDの対抗措置 OECDサイト
*国際的脱税工作の現況 米国上院ヒアリング
*機会の平等と遺産税に関する米国の議論  Alstott article

*EU税制調和化と無差別原則の役割 Graetz & Warren article
*国際航空と消費税 金子宏・日経新聞2006年8月3日経済教室 仏国際連帯税
*外航海運業の現状とトン数標準税制 日本船主協会サイト  など

(その他)
租税法の履修は特に参加要件としませんが、未知の問題に挑戦し、必要に応じて文献を渉猟し、積極的に議論に参加する意欲が不可欠です。参加を考える人は、税制調査会『わが国税制の現状と課題−21世紀に向けた国民の参加と選択−』(2000年7月)のこの部分をご覧になっておくと、おおまかな感じがつかめるでしょう。参考文献はその都度指示しますが、最近の興味深い研究としてこれがあります。OECDモデル租税条約は、ここからダウンロードできます。

(進行)

10/16

顔合わせ ゲスト:Prof. Rick Krever

10/23

導入

10/30

導入(つづき)、租税条約

11/6

対内取引

11/13

対外取引 ゲスト:Prof. Michael Lang

11/20

国際的租税回避 ゲスト:中山清教授

11/27

報告題目決定

12/4

A班(浅井健人・朝倉淳登・田畠宏一・丸山真司)「外国税額控除余裕枠流用の可否―りそな銀行事件―」

B班(安藤裕子・伊藤香織・今村義幸・中島稔雄)「21世紀の特許権使用料ソースルールのあり方」

12/11

C班(木村直登・久重雅弘・武士俣隆介)「保険料の損金算入の是非」

D班(山口崇・宇垣浩彰・岡部真弓・神田啓史)「移転価格税制をめぐる無形資産の評価―その可能性と限界―」

12/18

E班(熊本哲也・菊田直也・坂本太郎・佐々木邦仁)「投資ファンド課税―TKスキームを中心に―」

F班(佐藤賢・關隆太郎・寺田知洋・中西真也)「PE概念の検討―電子商取引を例として」

1/15

G班(日向寺裕芽子・藤本哲明・馬見塚哲太郎・村田智美)「ハイブリッド事業体を用いた租税回避について―新日米租税条約が対処できない問題」

H班(渡邉康司・森奏太郎・江崎元紀・山内由梨佳)「日本の二国間租税条約におけるLOB条項のあり方―日米租税条約22条の検討を中心として―」

1/22

まとめ