2005年度夏学期法学部「租税法」 (増井良啓)

(目的)租税制度の法的構造を学びます。

(概要)みなさんは、国や地方公共団体が活動するために租税が必要であることを知っているでしょう。また、これまで民法や商法で学んできたいろいろな取引 が、実務の世界では租税の考慮に大きく動かされていると聞いたことがあるでしょう。しかし、税制について何となく知っていたり聞いていたりしたことがあっ ても、現行課税ルールがどのような論理でできているか、あるいは、契約をかわしたり事業を行ったりするさいに租税がどのように意思決定に影響するか、自分 の言葉できちんと説明できますか。この授業では、租税制度の法的構造を体系的に分析します。それによって、今後の税制改革のあり方や私的取引との交錯につ いて、自分の頭で考えるための力を養います。

(構成)3部構成とします。
T序論:租税法という分野の歴史的・憲法的基礎を講じます。
U国税のシステム:所得税・法人税・相続税・消費税といった主要税目について、課税ルールの骨格を分析します。
Vシステム間関係:地方税と国際課税を扱います。

(進め方)双方向の議論をおりまぜつつ講義を行います。とりあげる素材は基本的なものにしぼります。多くの細目をつめこむことよりは、基本問題をじっくり 考え、応用可能性をもつ《租税の論理(tax logic)》を習得することこそが大切だからです。授業では具体例を用いて、課税ルールの基本を身につけるための反復練習をくりかえします。たとえば、 NHKの活動が租税でなく受信料でまかなわれているのはなぜか。どうして地租改正が民法典制定に先行したのか。隣人訴訟で一部勝訴した原告が損害賠償金を 受け取ったらどう課税されるか。サザエさんがマスオさんと離婚し財産を分与すると課税関係はどうなるか。このような素材につき対話を重ねることにより、租 税法の《ものの考え方》が分かってくるはずです。

(その他)定期試験では、税金の計算方法を丸暗記することを求めるのではもちろんなく、基本的な考え方がどこまで習得できているかを問います。