2004年度夏学期「組織課税」
 
★概要
 
太郎と花子がそれぞれ100万円ずつ出資し、共同でパン屋さんを始めます。2人で話し合った結果、事業利益の取り分を1対4とすることにしました。ある年に50万円のもうけがでたので、太郎が10万円、花子が40万円それぞれ受け取りました。課税関係はどうなりますか?

現在の日本法は、こんなに基本的な問題についてすら、きちんとした答えが出せない状態にあります。それは、組合や信託といった、それ自体としては法人税の納税義務を負わない組織について、課税ルールが決定的に未発達だからです。そこでこのゼミでは、組合と信託に焦点をあて、現在の市場でそれらがどのように利用されているか、課税がどうなっているか、今後どういうルールを置くべきか、を、調査し・発表し・議論します。

租税法の前提知識は不要ですが、新しい課題に取り組む意欲と柔軟な思考力が求められます。新しいというのは、ベンチャー事業や新種投資媒体をはじめ、革新的な素材を扱うからです。柔軟というのは、契約によって自由に構成員間の権利義務関係を構築できる対象だからです。単位は発表とレポートによります。
 

★進行予定

4月13日 開講
4月20日 概観
4月27日 概観・報告担当決定
5月11日 小林秀
5月18日 山中
5月25日 芳谷
6月1日 市川
6月8日 ゲスト(張勝和教授)
6月15日 高島・高宮
6月22日 金本・福岡
6月29日 砂本・中澤
7月6日 小林祐
7月13日 西本・石堂
7月20日 ゲスト(郷治友孝氏)・レポート提出
 

 
★参考文献

税制調査会金融小委員会「金融課税の一体化についての基本的考え方」(2004.06.15)
日本銀行金融研究所「組織形態と法に関する研究会」報告書(2003)

租税法学会編『組織形態の多様化と所得課税』租税法研究30号(2002)
財務省財務総合政策研究所編『税制特集U』フィナンシャルレビュー69号(2003)
水野忠恒『租税法』第2編第2節(2003)
金子宏編『パートナーシップの課税問題』日税研論集44号(2000)
佐藤英明『信託と課税』(2000)
西村総合法律事務所編『ファイナンス法大全下』(2003)
公認会計士協会租税調査会研究報告第9号(中間報告)「匿名組合に係る税制について」(平成15年7月22日付け公表)
渕圭吾「匿名組合契約と所得課税―なぜ日本の匿名組合契約は節税目的で用いられるのか?」ジュリスト1251号177-184頁(2003)
宮武敏夫「匿名組合契約と税務」ジュリスト1255号106-116頁(2003)
国税不服審判所平成13年2月26日裁決
経済産業省のLLC報告書
産業金融機能強化のための金融所得課税のあり方に関する検討小委員会報告書平成16年4月30日
投資事業有限責任組合及び民法上の任意組合を通じた株式等への投資に係る所得税の取扱いについて
 

冒頭の設例についての私の回答は

増井良啓「組合損益の出資者への帰属」税務事例研究49号47頁(1999)
 

★この演習はCOEソフトロープロジェクトの一環です
配布した通達