2003年度夏学期「租税法」

(1)目的 租税制度の法的構造を学ぶこと。

(2)概要 租税は家計と企業の行動に広範な影響を与えている。税制の法的構造に関する正確な理解なしに経済活動について語ることは、ほとんど無謀な企てといってよい。そこでこの講義では、《現行課税ルールがどのような論理でできているか》を概観する。と同時に、租税論の現代的展開をふまえ、《課税ルールが人々の行動にどう影響するか》という視点から、財産権と市場機構に関する理解を深めたい。

 

(3)構成 3部構成とする。

T序論:租税法という分野の歴史的・憲法的基礎を講ずる。

U国税のシステム:所得税・法人税・相続税・消費税といった主要税目につき、課税ルールの骨格を概観する。

Vシステム間関係:地方税と国際課税を扱う。

 

(4)進め方 双方向の対話を織り交ぜつつ講義を行う。取り上げる素材は基本的なものにしぼる。多くの細目を詰め込むことよりは、基本問題をじっくり考え、応用可能性をもつ《租税の論理(tax logic)》を習得することこそが大切だからである。授業では具体例を想定し課税ルールの基本を身に付けるための反復練習を繰り返す。たとえば、NHK受信料はなぜ租税の形で徴収しないのか。地租改正作業が民法典制定に先行したのはなぜか。隣人訴訟で一部勝訴した原告が損害賠償金を受けとったとき課税関係はどうなるか。会社の役員がストック・オプションを行使して外国親会社の株式を取得したらどうか。あなたが国境なき医師団日本に寄付を行ったら寄付金控除を受けられるか。このような素材につき対話を重ねることにより、租税法の《ものの考え方》を学ぶ。

 

(5)その他 定期試験では、税金の計算方法を丸暗記することを求めるのではもちろんなく、基本的な考え方がどこまで習得できているかどうかを問う。オフィスアワーは、月曜日午後12時半から2時、法学部4号館751号室。

 

(6)教材・主要参考文献 金子宏『租税法』(弘文堂、第9版)と、所得税法が掲載されている六法を、用意されたい。