所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための

日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約

〔平成十六年三月三十日号外条約第二号〕

 

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、所得に対する租税に関し、二重課税を回避し及び脱税を防止するための新たな条約を締結することを希望して、次のとおり協定した。

 

第一条

1 この条約は、この条約に別段の定めがある場合を除くほか、一方又は双方の締約国の居住者である者にのみ適用する。

2 この条約の規定は、次のものによって現在又は将来認められる非課税、免税、所得控除、税額控除その他の租税の減免をいかなる態様においても制限するものと解してはならない。

(a)  一方の締約国が課する租税の額を決定するに当たって適用される当該一方の締約国の法令

(b)  両締約国間の他の二国間協定又は両締約国が当事国となっている多数国間協定

(a) 2(b)の規定にかかわらず、

(@) この条約の解釈又は適用(ある措置がこの条約の適用の対象となるか否かを含む。)に関して生ずる問題は、第二十五条の規定に従ってのみ解決される。

(A) サービスの貿易に関する一般協定第十七条の規定は、両締約国の権限のある当局がその措置が第二十四条の適用の対象とならないと合意する場合を除くほか、当該措置には適用しない。

(b)  この3の適用上、「措置」とは、次条及び第三条1(d)の規定にかかわらず、一方の締約国が課するすべての種類の租税に関する法令、規則、手続、決定、行政上の行為その他同様の規定又は行為をいう。

(a) この条約は、5の場合を除くほか、第四条の規定に基づき一方の締約国の居住者とされる者に対する当該一方の締約国の課税及び合衆 国の市民に対する合衆国の課税に影響を及ぼすものではない。

(b)  この条約の他の規定にかかわらず、合衆国の市民であった個人又は合衆国において長期居住者とされる個人に対しては、当該個人が合衆国の法令において租税の回避を主たる目的の一つとして合衆国の市民としての地位を喪失したとされる場合(合衆国の法令において合衆国の市民としての地位を喪失した個人と同様の取扱いを受ける場合を含む。)には、その市民としての地位を喪失した時から十年間、合衆国において、合衆国の法令に従って租税を課することができる。

5 4の規定は、第九条2及び3、第十七条3、第十八条、第十九条、第二十条、第二十三条、第二十四条、第二十五条並びに第二十八条の規定に基づき一方の締約国により認められる特典に影響を及ぼすものではない。もっとも、第十八条、第十九条及び第二十条の規定に基づき合衆国により認められる特典については、これを要求する者が合衆国の市民でなく、かつ、合衆国における永住を適法に認められた者でない場合に限り、認められる。

第二条

1 この条約は、次の租税について適用する。

(a)  日本国については、

(@) 所得税

(A) 法人税

(以下「日本国の租税」という。)

(b)  合衆国については、内国歳入法によって課される連邦所得税(社会保障税を除く。以下「合衆国の租税」という。)

2 この条約は、1に掲げる租税に加えて又はこれに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって1に掲げる租税と同一であるもの又は実質的に類似するものについても、適用する。両締約国の権限のある当局は、各締約国の租税に関する法令について行われた実質的な改正又はこの条約における両締約国の義務に重大な影響を与える他の法令の改正を、その改正後の妥当な期間内に、相互に通知する

第三条

1 この条約の適用上、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

(a)  「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域(領海を含む。)及びその領域の外側に位置する区域で日本国が国際法に基づき管轄権を有し日本国の租税に関する法令が施行されているすべての区域(海底及びその下を含む。)をいう。

(b) 「合衆国」とは、アメリカ合衆国をいい、地理的意味で用いる場合には、アメリカ合衆国の諸州及びコロンビア特別区をいう。また、合衆国には、その領海並びにその領海に隣接し、合衆国が国際法に基づいて主権的権利を行使する海底区域の海底及びその下を含む。ただし、合衆国には、プエルトリコ、バージン諸島、グア厶その他の合衆国の属地又は準州を含まない。

(c)  「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又は合衆国をいう。

(d)  「租税」とは、文脈により、日本国の租税又は合衆国の租税をいう。

(e)  「者」には、個人、法人及び法人以外の団体を含む。

(f)  「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

(g)  「企業」は、あらゆる事業の遂行について用いる。

(h)  「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。

(i)  「国際運輸」とは、一方の締約国の企業が運用する船舶又は航空機による運送(他方の締約国内の地点の間においてのみ行われる運送を除く。)をいう。

(j)  一方の締約国の「国民」とは、次の者をいう。

(@) 日本国については、日本国の国籍を有するすべての個人及び日本国において施行されている法令によってその地位を与えられたすべての法人その他の団体

(A) 合衆国については、合衆国の市民権を有するすべての個人及び合衆国において施行されている法令によってその地位を与えられたすべての法人、パートナーシップその他の団体

(k)  「権限のある当局」とは、次の者をいう。

(@) 日本国については、財務大臣又は権限を与えられたその代理者

(A) 合衆国については、財務長官又は権限を与えられたその代理者

(l)  「事業」には、自由職業その他の独立の性格を有する活動を含む。

(m)  「年金基金」とは、次の(@)から(B)までに掲げる要件を満たす者をいう。

(@) 一方の締約国の法令に基づいて組織されること。

(A) 当該一方の締約国において主として退職年金その他これに類する報酬(社会保障制度に基づく給付を含む。)の管理又は給付のために設立され、かつ、維持されること。

(B) (A)にいう活動に関して当該一方の締約国において租税を免除されること。

2 一方の締約国によるこの条約の適用に際しては、この条約において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合又は両締約国の権限のある当局が第二十五条の規定に基づきこの条約の適用上の用語の意義について別に合意する場合を除くほか、この条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令において当該用語がその適用の時点で有する意義を有するものとする。当該一方の締約国において適用される租税に関する法令における当該用語の意義は、当該一方の締約国の他の法令における当該用語の意義に優先するものとする。

第四条

1 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、市民権、本店又は主たる事務所の所在地、法人の設立場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいい、次のものを含む。

(a)  当該一方の締約国及び当該一方の締約国の地方政府又は地方公共団体

(b)  当該一方の締約国の法令に基づいて組織された年金基金

(c)  当該一方の締約国の法令に基づいて組織された者で、専ら宗教、慈善、教育、科学、芸術、文化その他公の目的のために当該一方の締約国において設立され、かつ、維持されるもの(当該一方の締約国において租税を免除される者を含む。)ただし、一方の締約国の居住者には、当該一方の締約国内に源泉のある所得又は当該一方の締約国内にある恒久的施設に帰せられる利得のみについて当該一方の締約国において租税を課される者を含まない。

2 1の規定にかかわらず、合衆国の市民又は合衆国の法令に基づいて合衆国における永住を適法に認められた外国人である個人は、次の(a)から(c)までに掲げる要件を満たす場合に限り、合衆国の居住者とされる。

(a)  当該個人が、1の規定により日本国の居住者に該当する者でないこと。

(b)  当該個人が、合衆国内に実質的に所在し、又は恒久的住居若しくは常用の住居を有すること。

(c)  当該個人が、日本国と合衆国以外の国との間の二重課税の回避のための条約又は協定の適用上当該合衆国以外の国の居住者とされる者でないこと。

3 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人(2の規定の対象となる合衆国の市民又は外国人である個人を除く。)については、次のとおりその地位を決定する。

(a)  当該個人は、その使用する恒久的住居が所在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居を双方の締約国内に有する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある締約国)の居住者とみなす。

(b)  その重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又はその使用する恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、その有する常用の住居が所在する締約国の居住者とみなす。

(c)  その常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はこれをいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、当該個人が国民である締約国の居住者とみなす。

(d)  当該個人が双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意により当該事案を解決する。

   この3の規定により一方の締約国の居住者とみなされる個人は、この条約の適用上、当該一方の締約国のみの居住者とみなす。

4 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する者で個人以外のものについては、両締約国の権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その者が居住者とみなされる締約国を決定する。両締約国の権限のある当局による合意がない場合には、その者は、この条約により認められる特典を要求する上で、いずれの締約国の居住者ともされない。

5 この条約の規定に従い一方の締約国が他方の締約国の居住者の所得に対する租税の率を軽減し、又はその租税を免除する場合において、当該他方の締約国において施行されている法令により、当該居住者が、その所得のうち当該他方の締約国に送金され、又は当該他方の締約国内で受領された部分についてのみ当該他方の締約国において租税を課されることとされているときは、その軽減又は免除は、その所得のうち当該他方の締約国に送金され、又は当該他方の締約国内で受領された部分についてのみ適用する。

6 この条約の適用上、

(a)  一方の締約国において取得される所得であって、

(@) 他方の締約国において組織された団体を通じて取得され、かつ、

(A) 当該他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の受益者、構成員又は参加者の所得として取り扱われるものに対しては、当該一方の締約国の租税に関する法令に基づき当該受益者、構成員又は参加者の所得として取り扱われるか否かにかかわらず、当該他方の締約国の居住者である当該受益者、構成員又は参加者(この条約に別に定める要件を満たすものに限る。)の所得として取り扱われる部分についてのみ、この条約の特典(当該受益者、構成員又は参加者が直接に取得したものとした場合に認められる特典に限る。)が与えられる。

(b) 一方の締約国において取得される所得であって、

(@) 他方の締約国において組織された団体を通じて取得され、かつ、

(A) 当該他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の所得として取り扱われるものに対しては、当該一方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の所得として取り扱われるか否かにかかわらず、当該団体が当該他方の締約国の居住者であり、かつ、この条約に別に定める要件を満たす場合にのみ、この条約の特典(当該他方の締約国の居住者が取得したものとした場合に認められる特典に限る。)が与えられる。

(c) 一方の締約国において取得される所得であって、

(@) 両締約国以外の国において組織された団体を通じて取得され、かつ、

(A) 他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の受益者、構成員又は参加者の所得として取り扱われるもの

に対しては、当該一方の締約国又は当該両締約国以外の国の租税に関する法令に基づき当該受益者、構成員又は参加者の所得として取り扱われるか否かにかかわらず、当該他方の締約国の居住者である当該受益者、構成員又は参加者(この条約に別に定める要件を満たすものに限る。)の所得として取り扱われる部分についてのみ、この条約の特典(当該受益者、構成員又は参加者が直接に取得したものとした場合に認められる特典に限る。)が与えられる。

(d) 一方の締約国において取得される所得であって、

(@) 両締約国以外の国において組織された団体を通じて取得され、かつ、

(A) 他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の所得として取り扱われるもの

に対しては、この条約の特典は与えられない。

(e) 一方の締約国において取得される所得であって、

(@) 当該一方の締約国において組織された団体を通じて取得され、かつ、

(A) 他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の所得として取り扱われるもの

に対しては、この条約の特典は与えられない。

第五条

1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。

2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

(a) 事業の管理の場所

(b) 支店

(c) 事務所

(d) 工場

(e) 作業場

(f) 鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所

3 建築工事現場、建設若しくは据付けの工事又は天然資源の探査のために使用される設備、掘削機器若しくは掘削船については、これらの工事現場、工事又は探査が十二箇月を超える期間存続する場合には、恒久的施設を構成するものとする。

4 1から3までの規定にかかわらず、「恒久的施設」には、次のことは、含まないものとする。

(a) 企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。

(b) 企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。

(c) 企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。

(d) 企業のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(e) 企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(f) (a)から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。ただし、当該一定の場所におけるこのような組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。

5 1及び2の規定にかかわらず、企業に代わって行動する者(6の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)が、一方の締約国内で、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使する場合には、当該企業は、その者が当該企業のために行うすべての活動について、当該一方の締約国内に恒久的施設を有するものとされる。ただし、その者の活動が4に掲げる活動(事業を行う一定の場所で行われたとしても、4の規定により当該一定の場所が恒久的施設とされない活動)のみである場合は、この限りでない。

6 企業は、通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人を通じて一方の締約国内で事業を行っているという理由のみでは、当該一方の締約国内に恒久的施設を有するものとされない。

7 一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人若しくは他方の締約国内において事業(恒久的施設を通じて行われるものであるか否かを問わない。)を行う法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実によっては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設とはされない。

第六条

1 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得(農業又は林業から生ずる所得を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 この条約において、「不動産」とは、当該財産が存在する締約国の法令における不動産の意義を有するものとする。不動産には、いかなる場合にも、これに附属する財産、農業又は林業に用いられる家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(固定的な料金であるか否かを問わない。)を受領する権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。

3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他のすべての形式による使用から生ずる所得について適用する。

4 1及び3の規定は、企業の不動産から生ずる所得についても、適用する。

第七条

1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 3の規定に従うことを条件として、一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、当該恒久的施設が、同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行う別個のかつ分離した企業であって、当該恒久的施設を有する企業と全く独立の立場で取引を行うものであるとしたならば当該恒久的施設が取得したとみられる利得が、各締約国において当該恒久的施設に帰せられるものとする。

3 恒久的施設の利得を決定するに当たっては、経営費及び一般管理費を含む費用で当該恒久的施設のために生じたものは、当該恒久的施設が存在する締約国内において生じたものであるか他の場所において生じたものであるかを問わず、控除することを認められる。

4 一方の締約国の権限のある当局が入手することができる情報が恒久的施設に帰せられる利得を決定するために十分でない場合には、この条のいかなる規定も、当該恒久的施設を有する者の納税義務の決定に関する当該締約国の法令の適用に影響を及ぼすものではない。ただし、当該情報に基づいて恒久的施設の利得を決定する場合には、この条に定める原則に従うものとする。

5 恒久的施設が企業のために物品又は商品の単なる購入を行ったことを理由としては、いかなる利得も、当該恒久的施設に帰せられることはない。

6 1から5までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によって決定する。ただし、別の方法を用いることにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。

7 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が企業の利得に含まれる場合には、当該他の条の規定は、この条の規定によって影響されることはない。

第八条

1 一方の締約国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 この条の適用上、船舶又は航空機を運用することによって取得する利得には、船舶又は航空機の賃貸によって取得する利得(裸用船による船舶又は航空機の賃貸によって取得する利得については、当該賃貸が船舶又は航空機の国際運輸における運用に付随するものである場合に限る。)が含まれる。いずれかの締約国内における貨物又は旅客の国内運送によって取得する利得は、当該運送が国際運輸の一部として行われる場合には、船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得として取り扱う。

3 第二条及び第三条1(d)の規定にかかわらず、いかなる合衆国の地方政府又は地方公共団体も日本国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することにつき日本国における住民税又は事業税に類似する租税を課さないことを条件として、合衆国の企業は、船舶又は航空機を国際運輸に運用することにつき日本国において住民税及び事業税を免除される。

4 一方の締約国の企業がコンテナー(コンテナーの運送のためのトレーラー、はしけ及び関連設備を含む。)を使用し、保持し又は賃貸することによって取得する利得に対しては、当該コンテナーが他方の締約国内においてのみ使用される場合を除くほか、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

5 1から4までの規定は、共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加していることによって取得する利得についても、適用する。

第九条

1 次の(a)又は(b)に該当する場合であって、そのいずれの場合においても、商業上又は資金上の関係において、双方の企業の間に、独立の企業の間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されているときは、その条件がないとしたならば一方の企業の利得となったとみられる利得であってその条件のために当該一方の企業の利得とならなかったものに対しては、これを当該一方の企業の利得に算入して租税を課することができる。

(a) 一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配又は資本に直接又は間接に参加している場合

(b) 同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配又は資本に直接又は間接に参加している場合

2 一方の締約国において租税を課された当該一方の締約国の企業の利得を他方の締約国が当該他方の締約国の企業の利得に算入して租税を課する場合において、当該一方の締約国が、その算入された利得が、双方の企業の間に設けられた条件が独立の企業の間に設けられたであろう条件であったとしたならば当該他方の締約国の企業の利得となったとみられる利得であることにつき当該他方の締約国との間で合意するときは、当該一方の締約国は、当該利得に対して当該一方の締約国において課された租税の額について適当な調整を行う。この調整に当たっては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払う。

3 1の規定にかかわらず、一方の締約国は、1にいう条件がないとしたならば当該一方の締約国の企業の利得として更正の対象となったとみられる利得に係る課税年度の終了時から七年以内に当該企業に対する調査が開始されない場合には、1にいう状況においても、当該利得の更正をしてはならない。この3の規定は、不正に租税を免れた場合又は定められた期間内に調査を開始することができないことが当該企業の作為若しくは不作為に帰せられる場合には、適用しない。

第十条

1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、4及び5に定める場合を除くほか、次の額を超えないものとする。

(a) 当該配当の受益者が、当該配当の支払を受ける者が特定される日に、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の十パーセント以上を直接又は間接に所有する法人である場合には、当該配当の額の五パーセント

(b) その他のすべての場合には、当該配当の額の十パーセント

この2の規定は、当該配当を支払う法人のその配当に充てられる利得に対する課税に影響を及ぼすものではない。

3 2の規定にかかわらず、1の配当に対しては、当該配当の受益者が次の(a)又は(b)に該当する場合には、当該配当を支払う法人が居住者とされる締約国においては租税を課することができない。

(a) 他方の締約国の居住者であり、かつ、当該配当の支払を受ける者が特定される日をその末日とする十二箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の五十パーセントを超える株式を直接に又はいずれかの締約国の一若しくは二以上の居住者を通じて間接に所有する法人であって、次のいずれかに該当するもの

(@) 第二十二条1(c)(@)又は(A)に該当する法人

(A) 第二十二条1(f)(@)及び(A)に規定する要件を満たす法人で、当該配当に関し同条2に規定する条件を満たすもの

(B) この3の規定の適用に関し、第二十二条4の規定により認定を受けたもの

(b) 他方の締約国の居住者である年金基金。ただし、当該配当が、当該年金基金が直接又は間接に事業を遂行することにより取得されたものでない場合に限る。

4 2(a)及び3(a)の規定は、合衆国の規制投資会社(以下この4において「規制投資会社」という。)又は合衆国の不動産投資信託(以下この4において「不動産投資信託」という。)によって支払われる配当については、適用しない。規制投資会社によって支払われる配当については、2(b)及び3(b)の規定を適用する。不動産投資信託によって支払われる配当については、次のいずれかの場合に該当するときに限り、2(b)及び3(b)の規定を適用する。

(a) 当該配当の受益者が、当該不動産投資信託の十パーセント以下の持分を保有する個人又は当該不動産投資信託の十パーセント以下の持分を保有する年金基金である場合

(b) 当該配当が当該不動産投資信託の一般に取引される種類の持分に関して支払われ、かつ、当該配当の受益者が当該不動産投資信託のいずれの種類の持分についてもその五パーセント以下の持分を保有する者である場合

(c) 当該配当の受益者が当該不動産投資信託の十パーセント以下の持分を保有する者であり、かつ、当該不動産投資信託が分散投資している場合

5 2(a)及び3(a)の規定は、日本国における課税所得の計算上受益者に対して支払う配当を控除することができる法人によって支払われる配当については、適用しない。当該法人の有する資産のうち日本国内に存在する不動産により直接又は間接に構成される部分の割合が五十パーセント以下である場合は、当該法人によって支払われる配当については、2(b)及び3(b)の規定を適用する。当該法人に係る当該割合が五十パーセントを超える場合は、当該法人によって支払われる配当については、次のいずれかの場合に該当するときに限り、2(b)及び3(b)の規定を適用する。

(a) 当該配当の受益者が、当該法人の十パーセント以下の持分を保有する個人又は当該法人の十パーセント以下の持分を保有する年金基金である場合

(b) 当該配当が当該法人の一般に取引される種類の持分に関して支払われ、かつ、当該配当の受益者が当該法人のいずれの種類の持分についてもその五パーセント以下の持分を保有する者である場合

(c) 当該配当の受益者が当該法人の十パーセント以下の持分を保有する者であり、かつ、当該法人が分散投資している場合

6 この条において、「配当」とは、株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及び支払者が居住者とされる締約国の租税に関する法令上株式から生ずる所得と同様に取り扱われる所得をいう。

7 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である配当の受益者が、当該配当を支払う法人が居住者とされる他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

8 一方の締約国は、他方の締約国の居住者である法人が支払う配当及び当該法人の留保所得については、これらの配当及び留保所得の全部又は一部が当該一方の締約国内において生じた利得又は所得から成る場合においても、当該配当(当該一方の締約国の居住者に支払われる配当及び配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該一方の締約国内にある恒久的施設と実質的な関連を有するものである場合の配当を除く。)に対して租税を課することができず、また、当該留保所得(9の規定により租税を課される所得を除く。)に対して租税を課することができない。

9 一方の締約国の居住者である法人で、他方の締約国内に恒久的施設を有するもの又は第六条若しくは第十三条1若しくは2の規定に従い他方の締約国においてその所得について租税を課されるものに対しては、当該他方の締約国において、この条約の他の規定に従って課される租税に加えて租税を課することができる。ただし、当該租税は、当該恒久的施設に帰せられる利得及び第六条又は第十三条1若しくは2の規定に従い当該他方の締約国において租税を課される所得のうち、これらの利得又は所得に係る活動が法律上独立した団体により行われたとしたならば支払われたとみられる配当の額に相当する所得の額に該当する部分についてのみ課することができる。この9の規定は、次のいずれかに該当する法人については適用しない。

(a) 第二十二条1(c)(@)又は(A)に該当する法人

(b) 第二十二条1(f)(@)及び(A)に規定する要件を満たす法人で、当該所得に関し同条2に規定する条件を満たすもの

(c) この9の規定の適用に関し、第二十二条4の規定により認定を受けたもの

10 9に規定する租税は、2(a)に規定する率を超えて課することができない。

11 一方の締約国の居住者が優先株式その他これに類する持分(以下この11において「優先株式等」という。)に関して他方の締約国の居住者から配当の支払を受ける場合において、次の(a)及び(b)に該当する者が当該優先株式等と同等の当該一方の締約国の居住者の優先株式等を有していないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該配当の支払の基因となる優先株式等の発行を受け又はこれを所有することはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該配当の受益者とはされない。

(a) 当該他方の締約国の居住者が支払う配当に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

(b) いずれの締約国の居住者でもないこと。

第十一条

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の利子に対しては、当該利子が生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該利子の額の十パーセントを超えないものとする。

3 2の規定にかかわらず、一方の締約国内において生ずる利子であって、次のいずれかの場合に該当するものについては、他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a) 当該利子の受益者が、当該他方の締約国、当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行又は当該他方の締約国が全面的に所有する機関である場合

(b) 当該利子の受益者が当該他方の締約国の居住者であって、当該利子が、当該他方の締約国の政府、当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行又は当該他方の締約国が全面的に所有する機関によって保証された債権、これらによって保険の引受けが行われた債権又はこれらによる間接融資に係る債権に関して支払われる場合

(c) 当該利子の受益者が、次のいずれかに該当する当該他方の締約国の居住者である場合

(@) 銀行(投資銀行を含む。)

(A) 保険会社

(B) 登録を受けた証券会社

(C) (@)から(B)までに掲げるもの以外の企業で、当該利子の支払が行われる課税年度の直前の三課税年度において、その負債の五十パーセントを超える部分が金融市場における債券の発行又は有利子預金から成り、かつ、その資産の五十パーセントを超える部分が当該居住者と第九条1(a)又は(b)にいう関係を有しない者に対する信用に係る債権から成るもの

(d) 当該利子の受益者が当該他方の締約国の居住者である年金基金であって、当該利子が、当該年金基金が直接又は間接に事業を遂行することにより取得されたものでない場合

(e) 当該利子の受益者が当該他方の締約国の居住者であって、当該利子が、当該他方の締約国の居住者により行われる信用供与による設備又は物品の販売の一環として生ずる債権に関して支払われる場合

4 3の規定の適用上、「中央銀行」及び「締約国が全面的に所有する機関」とは、次のものをいう。

(a) 日本国については、

(@) 日本銀行

(A) 国際協力銀行

(B) 独立行政法人日本貿易保険

(C) 日本国が資本の全部を所有するその他の類似の機関で両締約国の政府が外交上の公文の交換により随時合意するもの

(b) 合衆国については、

(@) 連邦準備銀行

(A) 合衆国輸出入銀行

(B) 海外民間投資公社

(C) 合衆国が資本の全部を所有するその他の類似の機関で両締約国の政府が外交上の公文の交換により随時合意するもの

5 この条において、「利子」とは、すべての種類の信用に係る債権(担保の有無及び債務者の利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)から生じた所得、特に、公債、債券又は社債から生じた所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)及びその他の所得で当該所得が生じた締約国の租税に関する法令上貸付金から生じた所得と同様に取り扱われるものをいう。前条で取り扱われる所得は、この条約の適用上利子には該当しない。

6 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である利子の受益者が、当該利子の生じた他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該利子の支払の基因となった債権が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

7 利子は、その支払者が一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、利子の支払者(いずれかの締約国の居住者であるか否かを問わない。)が、その者が居住者とされる国以外の国に恒久的施設を有する場合において、当該利子の支払の基因となった債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、当該利子が当該恒久的施設によって負担されるものであるときは、次に定めるところによる。

(a) 当該恒久的施設が一方の締約国内にある場合には、当該利子は、当該一方の締約国内において生じたものとされる。

(b) 当該恒久的施設が両締約国以外の国にある場合には、当該利子は、いずれの締約国内においても生じなかったものとされる。

8 利子の支払の基因となった債権について考慮した場合において、利子の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該利子の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対しては、当該利子の生じた締約国において当該超過分の額の五パーセントを超えない額の租税を課することができる。

9 2及び3の規定にかかわらず、一方の締約国は、不動産により担保された債権又はその他の資産の流動化を行うための団体の持分に関して支払われる利子の額のうち、当該一方の締約国の法令で規定されている比較可能な債券の利子の額を超える部分については、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。

10 一方の締約国の居住者である法人の所得のうち次の(a)又は(b)に該当するものの金額の計算上控除することができる利子の額が、他方の締約国内にある当該法人の恒久的施設により支払われる利子の額又は他方の締約国内に存在する不動産により担保された債務に関して支払われる利子の額を超える場合には、当該超過分の額は、当該他方の締約国内において生じ、かつ、当該一方の締約国の居住者が受益者である利子とみなされる。そのみなされた利子に対しては、当該法人が当該他方の締約国において租税が免除される3(a)から(e)までに規定する者に該当する場合を除くほか、当該他方の締約国において、2に規定する率を超えない率により租税を課することができる。

(a) 当該恒久的施設に帰せられるもの

(b) 第六条又は第十三条1若しくは2の規定に従って当該他方の締約国において租税を課されるもの

11 一方の締約国の居住者がある債権に関して他方の締約国の居住者から利子の支払を受ける場合において、次の(a)及び(b)に該当する者が当該債権と同等の債権を当該一方の締約国の居住者に対して有していないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該利子の支払の基因となる債権を取得することはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該利子の受益者とはされない。

(a) 当該他方の締約国内において生ずる利子に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

(b) いずれの締約国の居住者でもないこと。

第十二条

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 この条において、「使用料」とは、文学上、芸術上若しくは学術上の著作物(映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィル厶又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領されるすべての種類の支払金等をいう。

3 1の規定は、一方の締約国の居住者である使用料の受益者が、当該使用料の生じた他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該使用料の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

4 使用料の支払の基因となった使用、権利又は情報について考慮した場合において、使用料の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該使用料の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対しては、当該使用料の生じた締約国において当該超過分の額の五パーセントを超えない額の租税を課することができる。

5 一方の締約国の居住者がある無体財産権の使用に関して他方の締約国の居住者から使用料の支払を受ける場合において、次の(a)及び(b)に該当する者が当該無体財産権と同一の無体財産権の使用に関して当該一方の締約国の居住者から使用料の支払を受けないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該無体財産権の使用に関して当該他方の締約国の居住者から使用料の支払を受けることはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該使用料の受益者とはされない。

(a) 当該他方の締約国内において生ずる使用料に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

(b) いずれの締約国の居住者でもないこと。

第十三条

1 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産の譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

  (a) 一方の締約国の居住者が、他方の締約国の居住者である法人(その資産の価値の五十パーセント以上が当該他方の締約国内に存在する不動産により直接又は間接に構成される法人に限る。)の株式その他同等の権利の譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。ただし、当該譲渡に係る株式と同じ種類の株式が第二十二条5(b)に規定する公認の有価証券市場において取引され、かつ、当該一方の締約国の居住者及びその特殊関係者の所有する当該種類の株式の数が当該種類の株式の総数の五パーセント以下である場合は、この限りでない。

(b) 一方の締約国の居住者が組合、信託財産及び遺産の持分の譲渡によって取得する収益に対しては、これらの資産が他方の締約国内に存在する不動産から成る部分に限り、当該他方の締約国において租税を課することができる。

  (a) 次の(@)及び(A)に該当する場合において、一方の締約国の居住者が(A)に規定する株式を譲渡((@)の資金援助が最初に行われた日から五年以内に行われる譲渡に限る。)することによって取得する収益に対しては、他方の締約国において租税を課することができる。

(@) 当該他方の締約国(日本国については、預金保険機構を含む。以下この3において同じ。)が、当該他方の締約国の金融機関の差し迫った支払不能に係る破(たん)処理に関する法令に従って、当該他方の締約国の居住者である金融機関に対して実質的な資金援助を行うこと。

(A) 当該一方の締約国の居住者が当該他方の締約国から当該金融機関の株式を取得すること。

(b) (a)の規定は、当該一方の締約国の居住者が、当該金融機関の株式を当該他方の締約国から、この条約の発効前に取得した場合又はこの条約の発効前に締結された拘束力のある契約に基づいて取得した場合には、適用しない。

4 2及び3の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産を構成する財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(当該恒久的施設の譲渡又は企業全体の譲渡の一部としての当該恒久的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

5 一方の締約国の居住者が国際運輸に運用する船舶又は航空機及びこれらの船舶又は航空機の運用に係る財産(不動産を除く。)の譲渡によって当該居住者が取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

6 一方の締約国の居住者がコンテナー(コンテナー運送のためのトレーラー、はしけ及び関連設備を含む。)の譲渡によって取得する収益に対しては、当該コンテナーが他方の締約国内においてのみ使用された場合を除くほか、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

7 1から6までに規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者とされる締約国においてのみ租税を課することができる。

第十四条

1 次条、第十七条及び第十八条の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務から生ずる報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに掲げる要件を満たす場合には、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a) 当該課税年度において開始又は終了するいずれの十二箇月の期間においても、報酬の受領者が当該他方の締約国内に滞在する期間が合計百八十三日を超えないこと。

(b) 報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。

(c) 報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設によって負担されるものでないこと。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機内において行われる勤務に係る報酬に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。

第十五条

 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

第十六条

1 一方の締約国の居住者である個人が演劇、映画、ラジオ若しくはテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人又は運動家として他方の締約国内で行う個人的活動によって取得する所得(第七条及び第十四条の規定に基づき当該他方の締約国において租税を免除される所得に限る。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。ただし、当該芸能人又は運動家がそのような個人的活動によって取得した総収入の額(当該芸能人若しくは運動家に対して弁償される経費又は当該芸能人若しくは運動家に代わって負担される経費を含む。)が当該課税年度において一万合衆国ドル又は日本円によるその相当額を超えない場合は、この限りでない。

2 一方の締約国内で行う芸能人又は運動家としての個人的活動に関する所得が当該芸能人又は運動家以外の者(他方の締約国の居住者に限る。)に帰属する場合には、当該所得に対しては、第七条及び第十四条の規定にかかわらず、当該個人的活動が行われる当該一方の締約国において租税を課することができる。ただし、そのような個人的活動に関する契約において、当該所得が帰属する者が当該個人的活動を行う芸能人又は運動家を指名することができる場合は、この限りでない。

第十七条

1 次条2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が受益者である退職年金その他これに類する報酬(社会保障制度に基づく給付を含む。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 一方の締約国の居住者が受益者である保険年金に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。この2において「保険年金」とは、適正かつ十分な対価(役務の提供を除く。)に応ずる給付を行う義務に従い、終身にわたり又は特定の若しくは確定することができる期間中、所定の時期において定期的に所定の金額が支払われるものをいう。

3 書面による別居若しくは離婚に関する合意又は別居、離婚等に伴う扶養料等に関する司法上の決定に基づいて行われる配偶者若しくは配偶者であった者又は子に対する定期的な金銭の支払であって、一方の締約国の居住者から他方の締約国の居住者に支払われるものに対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。ただし、当該支払が、当該一方の締約国において当該支払を行う個人の課税所得の計算上控除することができない場合には、いずれの締約国においても租税を課することができない。

第十八条

  (a) 政府の職務の遂行として一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し当該一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われる給料、賃金その他これらに類する報酬(退職年金その他これに類する報酬を除く。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(b) もっとも、当該役務が他方の締約国内において提供され、かつ、当該個人が次の(@)又は(A)に該当する当該他方の締約国の居住者である場合には、その給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(@) 当該他方の締約国の国民

(A) 専ら当該役務を提供するため当該他方の締約国の居住者となった者でないもの

  (a) 一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し、当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われ、又は当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体が拠出した基金から支払われる退職年金その他これに類する報酬(社会保障に関する法令又はこれに類する法令の規定に基づき合衆国によって支払われる給付を除く。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(b) もっとも、当該個人が他方の締約国の居住者であり、かつ、当該他方の締約国の国民である場合には、当該退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

3 一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体の行う事業に関連して提供される役務につき支払われる給料、賃金その他これらに類する報酬及び退職年金その他これに類する報酬については、第十四条から前条までの規定を適用する。

第十九条

 教育又は訓練を受けることを主たる目的として一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付(当該一方の締約国外から支払われる給付に限る。)については、当該一方の締約国において租税を免除する。この条に規定する租税の免除は、事業修習者については、当該一方の締約国において最初に訓練を開始した日から一年を超えない期間についてのみ適用する。

第二十条

1 一方の締約国内にある大学、学校その他の教育機関において教育又は研究を行うため当該一方の締約国内に一時的に滞在する個人であって、他方の締約国において第四条1にいう居住者に引き続き該当するものが、その教育又は研究につき取得する報酬については、当該一方の締約国に到着した日から二年を超えない期間当該一方の締約国において租税を免除する。

2 1の規定は、主として一又は二以上の特定の者の私的利益のために行われる研究から生ずる所得については、適用しない。

第二十一条

1 一方の締約国の居住者が受益者である所得(源泉地を問わない。)で前各条に規定がないもの(以下「その他の所得」という。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 1の規定は、一方の締約国の居住者である所得(不動産から生ずる所得を除く。)の受益者が、他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該所得の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、当該所得については、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

3 その他の所得の支払の基因となった権利又は財産について考慮した場合において、1に規定する一方の締約国の居住者と支払者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該その他の所得の額が、その関係がないとしたならば当該居住者及び当該支払者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対しては、当該その他の所得が生じた締約国において当該超過分の額の五パーセントを超えない額の租税を課することができる。

4 一方の締約国の居住者がある権利又は財産に関して他方の締約国の居住者からその他の所得の支払を受ける場合において、次の(a)及び(b)に該当する者が当該権利又は財産と同一の権利又は財産に関して当該一方の締約国の居住者からその他の所得の支払を受けないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該権利又は財産に関して当該他方の締約国の居住者からその他の所得の支払を受けることはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該その他の所得の受益者とはされない。

(a) 当該他方の締約国内において生ずるその他の所得に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

(b) いずれの締約国の居住者でもないこと。

第二十二条

1 一方の締約国の居住者で他方の締約国において所得を取得するものは、この条約の特典を受けるために別に定める要件を満たし、かつ、次の(a)から(f)までに掲げる者のいずれかに該当する場合に限り、各課税年度において、この条約の特典(この条約の他の条の規定により締約国の居住者に対して認められる特典に限る。以下この条において同じ。)を受ける権利を有する。ただし、この条約の特典を受けることに関し、この条に別段の定めがある場合は、この限りでない。

(a) 個人

(b) 当該一方の締約国、当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体、日本銀行又は連邦準備銀行

(c) 法人のうち、次の(@)又は(A)に該当するもの

(@) その主たる種類の株式及び不均一分配株式が、5(b)(@)又は(A)に規定する公認の有価証券市場に上場又は登録され、かつ、一又は二以上の公認の有価証券市場において通常取引される法人

(A) その各種類の株式の五十パーセント以上が、五以下の当該一方の締約国の居住者である(@)に規定する法人により直接又は間接に所有されている法人(その株式が間接に所有されている場合には、各中間所有者がこの1に規定する者のみである法人に限る。)

(d) 第四条1(c)に規定する者

(e) 年金基金(当該課税年度の直前の課税年度の終了の日においてその受益者、構成員又は参加者の五十パーセントを超えるものがいずれかの締約国の居住者である個人である年金基金に限る。)

(f) 個人以外の者で次の(@)及び(A)の要件を満たすもの

(@) その者の各種類の株式その他の受益に関する持分の五十パーセント以上が、(a)、(b)、(c)(@)、(d)又は(e)に掲げる当該一方の締約国の居住者により直接又は間接に所有されていること。

(A) 当該課税年度におけるその者の総所得のうちに、その者が居住者とされる締約国におけるその者の課税所得の計算上控除することができる支出により、いずれの締約国の居住者にも該当しない者に対し、直接又は間接に支払われた、又は支払われるべきものの額の占める割合が、五十パーセント未満であること。ただし、当該支出には、事業の通常の方法において行われる役務又は有体財産に係る支払(独立の企業の間に設けられる価格による支払に限る。)及び商業銀行に対する金融上の債務に係る支払(当該銀行がいずれの締約国の居住者でもない場合には、当該支払に係る債権がいずれかの締約国内にある当該銀行の恒久的施設に帰せられるときに限る。)は含まれない。

  (a) 一方の締約国の居住者は、他方の締約国において取得するそれぞれの所得に関し、当該居住者が当該一方の締約国内において営業又は事業の活動に従事しており、当該所得が当該営業又は事業の活動に関連又は付随して取得されるものであり、及び当該居住者がこの条約の特典を受けるために別に定める要件を満たすことを条件として、この条約の特典を受ける権利を有する。ただし、当該営業又は事業の活動が、当該居住者が自己の勘定のために投資を行い又は管理する活動(商業銀行、保険会社又は登録を受けた証券会社が行う銀行業、保険業又は証券業の活動を除く。)である場合は、この限りでない。

(b) 一方の締約国の居住者が、他方の締約国内における営業若しくは事業の活動から所得を取得する場合又は当該居住者と第九条1(a)若しくは(b)にいう関係を有する者から他方の締約国内において生ずる所得を取得する場合には、当該居住者が当該一方の締約国内において行う営業又は事業の活動が、当該居住者又は当該関係を有する者が当該他方の締約国内において行う営業又は事業の活動との関係において実質的なものでなければ、当該所得について(a)に規定する条件を満たすこととはならない。この(b)の規定の適用上、営業又は事業の活動が実質的なものであるか否かは、すべての事実及び状況に基づいて判断される。

    (a) 源泉徴収による課税について1(c)(A)の規定を適用する場合には、一方の締約国の居住者が、その所得の支払が行われる日(配当については、当該配当の支払を受ける者が特定される日)が課税年度終了の日である場合には当該課税年度を通じて、当該支払が行われる日が課税年度終了の日以外の日である場合には当該課税年度中の当該支払が行われる日に先立つ期間及び当該課税年度の直前の課税年度を通じて、1(c)(A)に規定する要件を満たしているときに、当該居住者は当該支払が行われる課税年度について当該要件を満たすものとする。

(b) 1(f)(@)の規定を適用する場合には、次に定めるところによる。

(@) 源泉徴収による課税については、一方の締約国の居住者が、その所得の支払が行われる日(配当については、当該配当の支払を受ける者が特定される日)が課税年度終了の日である場合には当該課税年度を通じて、当該支払が行われる日が課税年度終了の日以外の日である場合には当該課税年度中の当該支払が行われる日に先立つ期間及び当該課税年度の直前の課税年度を通じて、1(f)(@)に規定する要件を満たしているときに、当該居住者は当該支払が行われる課税年度について当該要件を満たすものとする。

(A) その他のすべての場合については、一方の締約国の居住者は、その所得の支払が行われる課税年度の総日数の半数以上の日において1(f)(@)に規定する要件を満たしているときに、当該支払が行われる課税年度について当該要件を満たすものとする。

(c) 日本国における源泉徴収による課税について1(f)(A)の規定を適用する場合には、合衆国の居住者は、その所得の支払が行われる課税年度の直前の三課税年度について1(f)(A)に規定する要件を満たしているときに、当該支払が行われる課税年度について当該要件を満たすものとする。

4 一方の締約国の居住者は、1(a)から(f)までに掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、2の規定に基づきある所得についてこの条約の特典を受ける権利を有する場合に該当しないときにおいても、この条約により認められる特典についての要求を受ける締約国の権限のある当局が、当該締約国の法令又は行政上の慣行に従って、当該居住者の設立、取得又は維持及びその業務の遂行がこの条約の特典を受けることをその主たる目的の一つとするものでないと認定するときは、この条約の特典を受けることができる。

5 この条の適用上、

(a) 「不均一分配株式」とは、一方の締約国の居住者である法人の株式で、その条件その他の取決め内容により、当該株式を所有する者が、当該条件その他の取決め内容が定められていないとした場合に比し、当該法人が他方の締約国において取得する所得の分配をより多く受ける権利を有するものをいう。

(b) 「公認の有価証券市場」とは、次のものをいう。

(@) 日本国の証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)に基づき設立された有価証券市場

(A) ナスダック市場及び合衆国の千九百三十四年証券取引法に基づき証券取引所として証券取引委員会に登録された有価証券市場

(B) その他の有価証券市場で両締約国の権限のある当局が合意するもの

(c) 「総所得」とは、一方の締約国の居住者がその事業から取得する総収入の額から当該収入を得るために直接に要した費用の額を差し引いた残額をいう。

第二十三条

1 日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令の規定に従い、

(a) 日本国の居住者がこの条約の規定に従って合衆国において租税を課される所得を合衆国において取得する場合には、当該所得について納付される合衆国の租税の額は、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除する。ただし、控除の額は、日本国の租税の額のうち当該所得に対応する部分を超えないものとする。

(b) 合衆国において取得される所得が、合衆国の居住者である法人により、その議決権のある株式の十パーセント以上を配当の支払義務が確定する日に先立つ六箇月の期間を通じて所有する日本国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には、日本国の租税からの控除を行うに当たり、当該配当を支払う法人によりその所得について納付される合衆国の租税を考慮に入れるものとする。

この1の規定の適用上、日本国の居住者が受益者である所得でこの条約の規定に従って合衆国において租税を課されるものは、合衆国内の源泉から生じたものとみなす。

2 合衆国は、合衆国の法令(その一般原則を変更することなく随時行われる改正の後のものを含む。)の規定及び当該法令上の制限に従い、合衆国の居住者又は市民に対し、次のものを合衆国の租税から控除することを認める。

(a) 当該市民若しくは居住者又はこれらに代わる者により支払われた、又は支払われるべき日本国の租税

(b) 合衆国の居住者である法人で、日本国の居住者である法人の議決権のある株式の十パーセント以上を所有し、当該日本国の居住者である法人から配当の支払を受けるものについては、当該配当に充てられる利得に関して当該日本国の居住者である法人又はこれに代わる者により支払われた、又は支払われるべき日本国の租税

この2の規定の適用上、第二条1(a)及び2に規定する租税は、当該所得の受益者に課された日本国の租税とみなす。この2の規定の適用上、合衆国の居住者が取得する合衆国の法令に基づき総所得の項目とされる所得で、この条約の規定に従って日本国において租税を課されるものは、日本国内に源泉があるものとみなす。

3 1及び2の規定の適用上、第一条4の規定に従い、合衆国が日本国の居住者である合衆国の市民又は市民であった者若しくは長期居住者とされる者に対して租税を課する場合には、次に定めるところによる。

(a) 日本国は、1の規定に従って行われる控除の額の計算上、合衆国が合衆国の市民又は市民であった者若しくは長期居住者とされる者でない日本国の居住者が取得した所得に対しこの条約の規定に従って課することができる租税の額のみを考慮に入れるものとする。

(b) (a)に規定する所得に対する合衆国の租税の計算上、合衆国は、(a)の規定に従って控除を行った後の日本国の租税を合衆国の租税から控除することを認める。そのようにして認められた控除は、(a)の規定に従って日本国の租税から控除される合衆国の租税の額を減額させないものとする。

(c) (a)に規定する所得は、(b)の規定に従って合衆国が控除を認める場合においてのみ、当該控除を認めるために必要な範囲に限り、日本国内において生じたものとみなす。

第二十四条

1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、特にすべての所得(当該一方の締約国内に源泉のある所得であるか否かを問わない。)について租税を課される者であるか否かに関し、同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。この1の規定は、いずれの締約国の居住者でもない者にも、適用する。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行う当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。この2の規定は、一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として当該一方の締約国の居住者に認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に認めることを義務付けるものと解してはならない。

3 第九条1、第十一条8、第十二条4又は第二十一条3の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者に支払った利子、使用料その他の支払金については、当該一方の締約国の居住者の課税対象利得の決定に当たって、当該一方の締約国の居住者に支払われたとした場合における条件と同様の条件で控除するものとする。また、一方の締約国の居住者の他方の締約国の居住者に対する債務については、当該一方の締約国の居住者の課税対象財産の決定に当たって、当該一方の締約国の居住者に対する債務であるとした場合における条件と同様の条件で控除するものとする。

4 一方の締約国の企業であってその資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者により直接又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の類似の他の企業に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。

5 この条のいかなる規定も、いずれかの締約国が第十条9又は第十一条10に規定する租税を課することを妨げるものと解してはならない。

6 この条の規定は、第二条及び第三条1(d)の規定にかかわらず、一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって課されるすべての種類の租税に適用する。

第二十五条

1 一方の又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合しない課税を受けたと認める者又は受けることになると認める者は、当該事案について、当該一方の又は双方の締約国の法令に定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対して又は当該事案が前条1の規定の適用に関するものである場合には自己が国民である締約国の権限のある当局に対して、申立てをすることができる。当該申立ては、この条約の規定に適合しない課税に係る措置の最初の通知の日から三年以内に、しなければならない。

2 権限のある当局は、1の申立てを正当と認めるが、満足すべき解決を与えることができない場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によって当該事案を解決するよう努める。成立したすべての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限その他の手続上の制限(当該合意を実施するための手続上の制限を除く。)にもかかわらず、実施されなければならない。

3 両締約国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によって解決するよう努める。特に、両締約国の権限のある当局は、次の事項について合意することができる。

(a) 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設への所得、所得控除、税額控除その他の租税の減免の帰属

(b) 二以上の者の間における所得、所得控除、税額控除その他の租税の減免の配分

(c) この条約の適用に関する相違(次に掲げる事項に関する相違を含む。)の解消

(@) 特定の所得の分類

(A) 者の分類

(B) 特定の所得に対する源泉に関する規則の適用

(C) この条約において用いられる用語の意義

(d) 事前価格取決め

両締約国の権限のある当局は、また、この条約に定めのない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。

4 両締約国の権限のある当局は、2及び3の合意に達するため、直接相互に通信することができる。

第二十六条

1 両締約国の権限のある当局は、この条約の規定又は両締約国が課するすべての種類の租税に関する両締約国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)の規定の実施に関連する情報を交換する。情報の交換は、第一条1の規定による制限を受けない。一方の締約国の権限のある当局から特に要請があった場合には、他方の締約国の権限のある当局は、文書(帳簿書類、計算書、記録その他の書類を含む。)の原本の写しに認証を付した形式で、この条に基づく情報の提供を行う。

2 1の規定に基づき一方の締約国が受領した情報は、当該一方の締約国がその法令に基づいて入手した情報と同様に秘密として取り扱うものとし、1に規定する租税の賦課、徴収若しくは管理、これらの租税に関する執行若しくは訴追若しくはこれらの租税に関する不服申立てについての決定に関与する者若しくは当局(裁判所及び行政機関を含む。)又は監督機関に対してのみ、かつ、これらの者若しくは当局又は監督機関がそれぞれの職務を遂行するために必要な範囲でのみ、開示される。これらの者若しくは当局又は監督機関は、当該情報をそれぞれの職務の遂行のためにのみ使用する。これらの者若しくは当局又は監督機関は、当該情報を公開の法廷における審理又は司法上の決定において開示することができる。

3 1及び2の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

(a) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

(b) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。

(c) 営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反することになる情報を提供すること。

4 各締約国は、1に規定する情報の交換を実効あるものとするため、当該締約国が自らの課税のために必要とするか否かを問わず、当該締約国の権限のある当局に対し、当該情報の交換のために情報を入手する十分な権限を当該締約国の法令上付与することを確保するために必要な措置(立法、規則の制定及び行政上の措置を含む。)を講ずる。

5 この条の規定は、第二条及び第三条1(d)の規定にかかわらず、一方の締約国が課するすべての種類の租税(その課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)に適用する。

第二十七条

1 各締約国は、この条約に基づいて他方の締約国の認める租税の免除又は税率の軽減が、このような特典を受ける権利を有しない者によって享受されることのないようにするため、当該他方の締約国が課する租税を徴収するよう努める。その徴収を行う締約国は、このようにして徴収された金額につき当該他方の締約国に対して責任を負う。

2 1の規定は、いかなる場合にも、1の租税を徴収するよう努めるいずれの締約国に対しても、当該締約国の法令及び行政上の慣行に抵触し又は公の秩序に反することになる行政上の措置をとる義務を課するものと解してはならない。

第二十八条

 この条約のいかなる規定も、国際法の一般原則又は特別の協定に基づく外交使節団又は領事機関の構成員の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

第二十九条

 一方の締約国が他方の締約国においてこの条約に関連する法令に実質的な改正が行われたと認める場合又は行われることとなると認める場合には、当該一方の締約国は、当該改正がこの条約上の特典の均衡に及ぼし得る効果を決定するため、及び適当な場合にはこの条約上の特典について適当な均衡に到達するためにこの条約の規定を改正するため、当該他方の締約国に対し書面により協議の要請をすることができる。当該要請を受けた締約国は、当該要請を受けた日から三箇月以内に、当該要請をした締約国と協議を行う。

第三十条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限り速やかに交換されるものとする。この条約は、批准書の交換の日に効力を生ずる。

2 この条約は、次のものについて適用する。

(a) 日本国においては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、

(aa) この条約がある年の三月三十一日以前に効力を生ずる場合には、その年の七月一日以後に租税を課される額

(bb) この条約がある年の四月一日以後に効力を生ずる場合には、その年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A) 源泉徴収されない所得に対する租税及び事業税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(b) 合衆国においては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、

(aa) この条約がある年の三月三十一日以前に効力を生ずる場合には、その年の七月一日以後に支払われ又は貸記される額

(bb) この条約がある年の四月一日以後に効力を生ずる場合には、その年の翌年の一月一日以後に支払われ又は貸記される額

(A) その他の租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税期間

3 この条約の効力発生の時において千九百七十一年三月八日に東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約(以下この条において「旧条約」という。)第十九条又は第二十条の規定による特典を受ける権利を有する個人は、この条約が効力を生じた後においても、旧条約がなお効力を有するとした場合に当該特典を受ける権利を失う時まで当該特典を受ける権利を引き続き有する。

4 旧条約は、1及び2の規定に従ってこの条約が適用される租税につき、この条約の適用の日以後、適用しない。ただし、旧条約により特典を受ける権利がこの条約により特典を受ける権利より一層有利な者については、その者の選択により、旧条約の適用を選択しなかったとしたならば2の規定によりこの条約が適用されたであろう日から十二箇月の間、旧条約を全体として引き続き適用する。旧条約は、租税に関しこの4の規定に従って適用される最後の日に終了する。

第三十一条

この条約は、一方の締約国によって終了させられる時まで効力を有する。いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後に、外交上の経路を通じて、他方の締約国に対し六箇月前に書面による終了の通告を行うことにより、この条約を終了させることができる。この場合には、この条約は、次のものにつき効力を失う。

(a) 日本国においては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、当該六箇月の期間が満了した年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A) 源泉徴収されない所得に対する租税及び事業税に関しては、当該六箇月の期間が満了した年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(b) 合衆国においては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、当該六箇月の期間が満了した年の翌年の一月一日以後に支払われ又は貸記される額

(A) その他の租税に関しては、当該六箇月の期間が満了した年の翌年の一月一日以後に開始する各課税期間

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

 二千三年十一月六日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

 

日本国政府のために

加藤良三

 

アメリカ合衆国政府のために

ジョン・W・スノー


議定書

 

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(以下「条約」という。)の署名に当たり、日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、条約の不可分の一部を成す次の規定を協定した。

1 条約第二条の規定にかかわらず、

(a) 外国保険業者の発行した保険証券に対する合衆国の消費税は、日本国の企業が行う保険事業の収入となる保険料(当該企業が負担する当該保険料に係る危険のうち、条約又は当該消費税の免除を規定する合衆国が締結する他の租税条約の特典を受ける権利を有しない者により再保険される部分に係る保険料を除く。)に係る保険証券又は再保険証券に対しては、課することができない。

(b) 民間財団に関する合衆国の消費税は、

(i) 日本国において設立された団体であって合衆国の民間財団に該当するものが取得する配当又は利子に対しては、それぞれ条約第十条及び第十一条に規定する率を超える率では、課することができない。

(A) 日本国において設立された団体であって合衆国の民間財団に該当するものが取得する使用料又はその他の所得に対しては、課することができない。

2 条約第三条1(e)に関し、「法人以外の団体」には、遺産、信託財産及び組合を含む。

3 条約第三条1(m)に関し、年金基金は、日本国の法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第八条若しくは第十条の二又は同法附則第二十条第一項に規定する租税が課される場合においても、条約第三条1(m)(A)にいう活動に関して租税を免除される者として取り扱われることが了解される。

4 一般に、一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行っていた場合において、当該企業が当該恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行うことをやめた後、当該恒久的施設に帰せられる利得を得たときは、当該利得に対しては、条約第七条に定める原則に従って、当該他方の締約国において租税を課することができる。

5 条約第九条に関し、企業の利得の決定に当たって、同条にいう独立企業原則は、一般に、当該企業とその関連企業との間の取引の条件と独立の企業の間の取引の条件との比較に基づいて適用されることが了解される。また、比較可能性に影響を与える要因には次のものが含まれることが了解される。

(a) 移転された財産又は役務の特性

(b) 当該企業及びその関連企業が使用する資産及び引き受ける危険を考慮した上での当該企業及びその関連企業の機能

(c) 当該企業とその関連企業との間の契約条件

(d) 当該企業及びその関連企業の経済状況

(e) 当該企業及びその関連企業が遂行する事業戦略

6 条約第十条4及び5に関し、合衆国の不動産投資信託(9において「不動産投資信託」という。)又は日本国における課税所得の計算上受益者に対して支払う配当を控除することができる法人は、その有するいずれの不動産の持分の価値も、その有する不動産の持分の全体の十パーセントを超えない場合に、分散投資しているものとされる。この6の適用上、譲渡担保財産として取得した不動産であって受戻権が消滅したものは、不動産の持分とはされない。これらの者が組合の持分を保有している場合には、これらの者は、当該組合が有する不動産の持分を、これらの者が有する当該組合の持分の割合に応じて直接に所有するものとして取り扱う。

7 条約第十条9に関し、同条9に規定する活動が法律上独立した団体により行われたとしたならば支払われたとみられる配当の額に相当する所得の額は、各課税年度において、当該活動から生ずる税引き後の所得の額に、同条9に規定する租税を課する締約国における当該法人の投資の額の変動を考慮に入れて調整を加えた額とすることが了解される。

8 一方の締約国の居住者が支払う有価証券の貸付けに関連する料金、保証料及び融資枠契約に係る手数料で他方の締約国の居住者が受益者であるものに対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。ただし、当該受益者が当該一方の締約国内において当該一方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該有価証券の貸付けに関連する料金、保証料及び融資枠契約に係る手数料が当該恒久的施設に帰せられ、又は当該有価証券の貸付けに関連する料金、保証料及び融資枠契約に係る手数料の支払の基因となった権利が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、この限りでない。

9 条約第十三条に関し、不動産投資信託が合衆国内に存在する不動産の譲渡によって取得する収益に基づいて行う分配に対しては、同条1の規定に従って租税を課することができることが了解される。

10   (a)   条約第十四条に関し、ストックオプション制度に基づき被用者が享受する利益でストックオプションの付与から行使までの期間に関連するものは、同条の適用上「その他これらに類する報酬」とされることが了解される。

(b) さらに、被用者が次の(@)から(C)までに掲げる要件を満たす場合には、二重課税を回避するため、ストックオプションの行使の時に当該被用者が居住者とならない締約国は、当該利益のうち当該被用者が勤務を当該締約国内において行った期間中当該ストックオプションの付与から行使までの期間に関連する部分についてのみ租税を課することができることが了解される。

(@) 当該被用者が、その勤務に関して当該ストックオプションを付与されたこと。

(A) 当該被用者が、当該ストックオプションの付与から行使までの期間中両締約国内において勤務を行ったこと。

(B) 当該被用者が、当該行使の日において勤務を行っていること。

(C) 当該被用者が、両締約国の法令に基づき両締約国において当該利益について租税を課されることになること。

 除去されない二重課税を生じさせないため、両締約国の権限のある当局は、このようなストックオプション制度に関連する条約第十四条及び第二十三条の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を、条約第二十五条の規定に基づく合意によって解決するよう努める。

11 条約第二十二条1(c)に関し、ある課税年度の直前の課税年度中に一又は二以上の公認の有価証券市場において取引されたある種類の株式の総数が当該直前の課税年度中の当該株式の発行済株式の総数の平均の六パーセント以上である場合には、当該株式は、当該課税年度において一又は二以上の公認の有価証券市場において通常取引されるものとされる。

12 条約第二十二条2に関し、同条2の規定に基づきある者が一方の締約国内において営業又は事業の活動に従事しているか否かを決定するに当たって、その者が組合員である組合が行う活動及びその者に関連する者が行う活動は、その者が行うものとみなす。一方の者が他方の者の受益に関する持分の五十パーセント以上(法人の場合には、当該法人の株式の議決権及び価値の五十パーセント以上)を所有する場合又は第三者がそれぞれの者の受益に関する持分の五十パーセント以上(法人の場合には、当該法人の株式の議決権及び価値の五十パーセント以上)を直接又は間接に所有する場合には、一方の者は他方の者に関連するものとする。

13   (a)   条約の適用上、合衆国は、匿名組合契約又はこれに類する契約によって設立された仕組みを日本国の居住者でないものと取り扱い、かつ、当該仕組みに従って取得される所得を当該仕組みの参加者によって取得されないものと取り扱うことができる。この場合には、当該仕組み又は当該仕組みの参加者のいずれも、当該仕組みに従って取得される所得について条約の特典を受ける権利を有しない。

(b) 条約のいかなる規定も、日本国が、匿名組合契約又はこれに類する契約に基づいてある者が支払う利益の分配でその者の日本国における課税所得の計算上控除されるものに対して、日本国の法令に従って、源泉課税することを妨げるものではない。

 

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

 

 二千三年十一月六日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

 

日本国政府のために

加藤良三

 

アメリカ合衆国政府のために

ジョン・W・スノー

(右条約の英文)〔省略〕

 

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の効力の発生

〔平成十六年三月三十日号外外務省告示第百十三号〕

 

 平成十五年十一月六日にワシントンで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の批准書の交換は、平成十六年三月三十日に東京で行われた。よって、同条約は、その第三十条1の規定に従い、同日に効力を生じた。

 

 

 

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約に関する交換公文

〔平成十六年三月三十日号外外務省告示第百十四号〕

 

 平成十五年十一月六日にワシントンで所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約が署名された際、同条約に関する次の書簡の交換がアメリカ合衆国政府との間に行われた。

 

(日本側書簡)

 

 書簡をもって啓上いたします。本使は、本日署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(以下「条約」という。)及び同じく本日署名され、条約の不可分の一部を成す議定書に言及するとともに、日本国政府及びアメリカ合衆国政府との間で到達した次の了解を日本国政府に代わって確認する光栄を有します。

1 条約第八条3に規定する住民税又は事業税の賦課を回避するため、合衆国政府は、合衆国の地方政府又は地方公共団体が、日本国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得で、条約により連邦所得税が課されないものに対し、日本国における住民税又は事業税に類似する租税を課そうとする場合には、当該地方政府又は地方公共団体に対し当該租税を課することを差し控えるよう説得するために最善の努力を払う。

2 恒久的施設に帰せられる利得を決定するために条約第九条1に定める原則を適用することができることが了解される。条約第七条の規定は、恒久的施設が当該恒久的施設と同一又は類似の活動を行う別個のかつ分離した企業であるとしたならば、その活動を行うために必要な資本の額と同額の資本の額を有しているものとして締約国が当該恒久的施設を取り扱うことを妨げるものではないことが了解される。締約国は、金融機関(保険会社を除く。)に関して、その自己資本の額を当該金融機関の資産(危険の評価を考慮して算定した資産)のうちその各事務所に帰せられるものの割合に基づいて配分することにより、恒久的施設に帰せられる資本の額を決定することができる。

3 条約第九条に関し、二重課税は、両締約国の税務当局が移転価格課税事案の解決に適用されるべき原則について共通の理解を有している場合にのみ回避し得ることが了解される。このため、両締約国は、この問題についての国際的なコンセンサスを反映している経済協力開発機構の多国籍企業及び税務行政のための移転価格ガイドライン(以下この3において「OECD移転価格ガイドライン」という。)に従って、企業の移転価格の調査を行い、及び事前価格取決めの申請を審査するものとする。各締約国における移転価格課税に係る規則(移転価格の算定方法を含む。)は、OECD移転価格ガイドラインと整合的である限りにおいて、条約に基づく移転価格課税事案の解決に適用することができる。

4 条約第十条2及び3に関し、日本国については、配当の支払を受ける者が特定される日は、利得の分配に係る会計期間の終了の日であることが了解される。

5 条約第十一条3(c)に関し、

(a) 「債券」には、担保が付されているか否かにかかわらず、債券、コマーシャル・ペーパー及び中期債(ミディアムターム・ノート)を含むことが了解される。

(b) その募集が私募により行われた債券で転売制限の対象となるものは、金融市場において発行されたものとはされないことが了解される。ただし、合衆国の千九百三十三年証券法に基づいて制定された規則百四十四Aの規定又は日本国の法令における類似の規定に基づき証券登録の義務が免除される募集については、この限りでない。

6 条約第二十六条2にいう租税の「管理」に関与する「当局(裁判所及び行政機関を含む。)」には、同条2にいう租税の賦課若しくは徴収、これらの租税に関する執行若しくは訴追又はこれらの租税に関する不服申立てについての決定に直接に関与する政府機関に対して法律的な助言を行うが、それ自体は当該機関の一部ではない当局を含み、合衆国については、内国歳入庁首席法務官事務所を含むことが了解される。

7 条約第二十六条2にいう「監督機関」には、締約国の政府の行政全般を監督する当局を含むことが了解される。

8 各締約国の権限のある当局が情報を入手するための権限には、金融機関、名義人又は代理人若しくは受託者が有する情報(法律事務代理人がその職務に関してその依頼者との間で行う通信に関する情報であって当該締約国の法令に基づいて保護されるものを除く。)及び法人の所有に関する情報を入手するための権限を含むこと、並びに各締約国の権限のある当局はこれらの情報を条約第二十六条の規定に基づいて交換することができることが了解される。

 本使は、前記の了解がアメリカ合衆国政府により受諾される場合には、この書簡及びその旨の閣下の返簡が両政府間の合意を構成するものとみなし、その合意が条約の効力発生の時に効力を生ずるものとすることを提案する光栄を有します。

 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

 

 二千三年十一月六日にワシントンで

 

アメリカ合衆国駐在

日本国特命全権大使

加藤良三

 

アメリカ合衆国

国務長官

コリン・L・パウエル閣下

 

(米国側書簡)

 

(訳文)

書簡をもって啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 

 

 

 

(日本側書簡)

 

本長官は、更に、アメリカ合衆国政府に代わって前記の了解を受諾することを確認するとともに、閣下の書簡及びこの返簡が両政府間の合意を構成し、その合意が条約の効力発生の時に効力を生ずるものとすることに同意する光栄を有します。

本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

 

 二千三年十一月六日にワシントンで

 

アメリカ合衆国

国務長官に代わる

ジェームズ・A・ケリー

 

アメリカ合衆国駐在

日本国特命全権大使

加藤良三閣下