○所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約

 

 

○所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約

昭和四十五年十月二十三日号外条約第二十一号

〔外務・大蔵大臣署名〕

改正

平成 四年一一月二〇日号外 条約第九号〔平成四年一二月一六日発効=平成四年外務告六一二号〕

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約をここに公布する。

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約

日本国政府及びオランダ王国政府は、

所得に対する租税に関し、二重課税を回避するための条約を締結することを希望して、

次のとおり協定した。

第一条

この条約は、一方又は双方の国の居住者である者に適用する。

第二条

1 この条約の対象である租税は、次のものとする。

(a) 日本国においては、

(i) 所得税

(ii) 法人税

(iii) 住民税

(以下「日本国の租税」という。)

(b) オランダにおいては、

(i) 所得税

(ii) 賃金税

(iii) 法人税

(iv) 配当税

(以下「オランダの租税」という。)

2 この条約は、1に掲げる租税と実質的に類似の性質を有する租税で、この条約の署名の日の後にいずれか一方の国又はその地方政府若しくは地方公共団体によつて設けられるものについても、また、適用する。

第三条

1 この条約において、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

(a) 「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域をいう。

(b) 「オランダ」とは、オランダ王国のうちヨーロッパに位置する部分をいう。

(c) 「一方の国」及び「他方の国」とは、文脈により、日本国又はオランダをいう。

(d) 「租税」とは、文脈により、日本国の租税又はオランダの租税をいう。

(e) 「者」とは、個人又は法人をいう。

(f) 「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

(g) 「一方の国の企業」及び「他方の国の企業」とは、それぞれ一方の国の居住者が営む企業及び他方の国の居住者が営む企業をいう。

(h) 一方の国について「権限のある当局」とは、その国の大蔵大臣又は権限を与えられたその代理者をいう。

2 一方の国においてこの条約を適用する場合には、この条約において特に定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約が適用される租税に関するその国の法令上有する意義を有するものとする。

第四条

1 この条約の適用上、「一方の国の居住者」とは、当該一方の国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の国において課税を受けるべきものとされる者をいう。ただし、この用語には、当該一方の国における源泉から所得を取得する場合に限り当該一方の国において課税される者を含まない。

2 1の規定によつて双方の国の居住者となる者については、権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その者が居住者であるとみなされる国を決定する。

第五条

1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行なう一定の場所で、企業がその事業の全部又は一部を行なつているものをいう。

2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

(a) 管理所

(b) 支店

(c) 事務所

(d) 工場

(e) 作業場

(f) 鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所

(g) 建築工事現場又は建設若しくは組立ての工事で、十二箇月をこえる期間存続するもの

3 「恒久的施設」については、次のことは、含まれないものとする。

(a) 企業に属する物品又は商品をもつぱら保管し、展示し、又は引き渡すため、施設を使用すること。

(b) 企業に属する物品又は商品の在庫を、もつぱら保管し、展示し、又は引き渡すため、保有すること。

(c) 企業に属する物品又は商品の在庫を、もつぱら他の企業による加工のため、保有すること。

(d) 企業のためにもつぱら物品若しくは商品を購入し、又は情報を収集するため、事業を行なう一定の場所を保有すること。

(e) 企業のためにもつぱら広告、情報の提供、科学的調査又はこれらに類する準備的若しくは補助的な性質の活動を行なうため、事業を行なう一定の場所を保有すること。

4 一方の国の企業は、他方の国における建築工事現場又は他方の国で行なわれている建設若しくは組立ての工事に関連して、十二箇月をこえる期間、当該他方の国において監督活動を行なう場合には、当該他方の国に恒久的施設を有するものとされる。

5 一方の国において他方の国の企業に代わつて行動する者(6の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)は、次のいずれかの場合には、当該一方の国における恒久的施設とされる。

(a) その者が、当該一方の国において当該企業の名で契約を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する場合。ただし、その者の行動が当該企業のために物品又は商品を購入することに限られるときは、この限りでない。

(b) その者が、当該企業によりあらかじめ締結された契約であつて引き渡すべき数量又は引渡しの日及び場所を確定していないものに従つて行なわれる注文に当該企業に代わつて通常応ずるため、当該企業に属する物品又は商品の在庫を当該一方の国に保有する場合

6 一方の国の企業は、仲立人、問屋その他独立の地位を有する代理人でこれらの者としての業務を通常の方法で行なうものを通じて他方の国において事業活動を行なつているという理由のみでは、当該他方の国に恒久的施設を有するものとされることはない。

7 一方の国の居住者である法人が、他方の国の居住者である法人若しくは他方の国において恒久的施設を通じ若しくは通じないで事業を行なう法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによつては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設であることとはならない。

第六条

この条約に基づき所得について一方の国において租税が減免される場合において、他方の国において施行されている法令により、個人が、その所得の全額についてではなくその所得のうち当該他方の国に送金され又は当該他方の国において受領した部分につき租税を課されることとされているときは、この条約に基づき当該一方の国において認められる租税の減免は、その所得のうち当該他方の国に送金され又は当該他方の国において受領した部分についてのみ適用する。

第七条

1 不動産から生ずる所得に対しては、当該不動産が存在する国において租税を課することができる。

2 「不動産」の定義は、当該財産が存在する国の法令によるものとする。不動産には、いかなる場合にも、不動産に附属する財産、農業又は林業に用いられている家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(金額が確定しているかどうかを問わない。)を受け取る権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。

3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他すべての形式による使用から生ずる所得について適用する。

4 1及び3の規定は、企業の不動産から生ずる所得及び自由職業を行なうために使用される不動産から生ずる所得についても、また、適用する。

第八条

1 一方の国の企業の利得に対しては、その企業が他方の国にある恒久的施設を通じて当該他方の国において事業を行なわない限り、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。一方の国の企業が他方の国にある恒久的施設を通じて当該他方の国において事業を行なう場合には、その企業の利得に対し、当該恒久的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の国において租税を課することができる。

2 一方の国の企業が他方の国にある恒久的施設を通じて当該他方の国において事業を行なう場合には、それぞれの国において、当該恒久的施設が同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行ない、かつ、当該恒久的施設を有する企業と、全く独立の立場で、取引を行なう別個のかつ分離した企業であるとすれば、当該恒久的施設が取得するとみられる利得が、当該恒久的施設に帰せられるものとする。

3 恒久的施設の利得を決定するに際しては、経営費及び一般管理費を含む費用で、その恒久的施設のために生じたものは、その恒久的施設が存在する国において生じたか又は他の場所で生じたかを問わず、経費に算入することを認められるものとする。

4 2の規定は、恒久的施設に帰せられるべき利得を企業の利得の総額の当該企業の各構成部分への配分によつて決定する慣行が一方の国において行なわれている場合には、その国が租税を課されるべき利得をその慣行とされている配分の方法によつて決定することを妨げるものではない。ただし、用いられる配分の方法は、その方法によつて得た結果がこの条に規定する原則に適合するようなものでなければならない。

5 恒久的施設が企業のために行なつた物品又は商品の単なる購入を理由としては、いかなる利得もその恒久的施設に帰せられることはない。

6 1から5までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によつて決定するものとする。ただし、別の方法を用いることについて正当な理由があるときは、この限りでない。

7 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が企業の利得に含まれる場合には、これらの条の規定は、この条の規定によつて影響されることはない。

第九条

1 一方の国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによつて取得する利得に対しては、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。

2 一方の国の企業は、船舶又は航空機を国際運輸に運用することにつき、オランダの企業である場合には日本国における事業税、日本国の企業である場合には日本国における事業税に類似する租税でオランダにおいて今後課されることがあるものをも免除される。

3 この条約は、千九百三十三年一月二十六日付けの公文の交換によつて効力を生じた海運業からの利得に対する二重課税の回避に関する日本国とオランダとの間の取極に影響を及ぼすものと解してはならない。

第十条

(a) 一方の国の企業が他方の国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合又は

(b) 同一の者が一方の国の企業及び他方の国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合

であつて、そのいずれの場合においても、双方の企業の間に、その商業上又は資金上の関係において独立の企業間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されるときは、その条件がなかつたならば一方の企業の利得となつたはずである利得で、その条件のために当該一方の企業の利得とならなかつたものは、その企業の利得に算入して課税することができる。

第十一条

1 一方の国の居住者である法人が他方の国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の国において租税を課することができる。

2 1の配当に対しては、当該配当を支払つた法人が居住者である国において、その国の法令に従つて租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の金額の十五パーセントをこえないものとする。

3 2の規定にかかわらず、一方の国の居住者である法人が他方の国の居住者に支払う配当に対して当該一方の国において課される租税の額は、当該配当の受領者が、利得の分配に係る事業年度の終了の日に先立つ六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の少なくとも二十五パーセントを所有する法人である場合には、当該配当の金額の五パーセントを超えないものとする。

4 2及び3の規定は、配当に充てられる利得についての当該法人に対する課税に影響を及ぼすものではない。

5 この条において「配当」とは、株式、受益株式、発起人株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及びその他の持分から生ずる所得であつて分配を行なう法人が居住者である国の税法上株式から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいう。

6 1から3までの規定は、一方の国の居住者である配当の受領者が、その配当を支払う法人が居住者である他方の国にその配当の支払の基因となつた株式又は持分と実質的に関連する恒久的施設を有する場合には、適用しない。この場合には、第八条の規定が適用される。

7 一方の国の居住者である法人が他方の国から利得又は所得を取得する場合には、当該他方の国は、その法人が当該他方の国の居住者でない者に支払う配当及びその法人の保留所得については、これらの全部又は一部が当該他方の国において生じた利得又は所得から成るときも、当該配当に対していかなる租税をも課することができず、また、当該留保所得に対して留保所得税を課することができない。

[改正注記]

第十二条

1 一方の国において生じ、他方の国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の国において租税を課することができる。

2 1の利子に対しては、当該利子が生じた国において、その国の法令に従つて租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の金額の十パーセントをこえないものとする。

3 2の規定にかかわらず、一方の国において生ずる利子で他方の国の政府若しくは中央銀行又は当該他方の国が所有する金融機関に支払われるものに対しては、当該一方の国は、租税を課してはならない。

4 この条において「利子」とは、公債、債券又は社債(担保の有無及び利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)その他のすべての種類の信用に係る債権から生じた所得及びその他の所得でその生じた国の税法上貸付金から生じた所得と同様に取り扱われるものをいう。

5 1及び2の規定は、一方の国の居住者である利子の受領者が、その利子が生じた他方の国に、その利子を生じた債権と実質的に関連する恒久的施設を有する場合には、適用しない。この場合には、第八条の規定が適用される。

6 利子は、その支払者が一方の国又はその地方政府、地方公共団体若しくは居住者である場合には、その国において生じたものとされる。ただし、利子の支払者(一方の国の居住者であるかどうかを問わない。)が一方の国に恒久的施設を有する場合において、その利子を支払う基因となつた債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、その利子を当該恒久的施設が負担するときは、その利子は、当該恒久的施設が存在する国において生じたものとされる。

7 支払者と受領者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、支払われた利子の金額が、その支払の基因となつた債権を考慮する場合において、その関係がなかつたならば支払者及び受領者が合意するとみられる金額をこえるときは、この条の規定は、その合意するとみられる金額についてのみ適用する。この場合には、支払われた金額のうち超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払つたうえ、それぞれの国の法令に従つて租税を課することができる。

第十三条

1 一方の国において生じ、他方の国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の国において租税を課することができる。

2 1の使用料に対しては、当該使用料が生じた国において、その国の法令に従つて租税を課することができる。その租税の額は、当該使用料の金額の十パーセントをこえないものとする。

3 この条において「使用料」とは、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(映画フィルムを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠若しくは模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受け取るすべての種類の支払金をいう。

4 1及び2の規定は、一方の国の居住者である使用料の受領者が、その使用料が生じた他方の国に、その使用料が生じた権利又は財産と実質的に関連する恒久的施設を有する場合には、適用しない。この場合には、第八条の規定が適用される。

5 使用料は、その支払者が一方の国又はその地方政府、地方公共団体若しくは居住者である場合には、その国において生じたものとされる。ただし、使用料の支払者(一方の国の居住者であるかどうかを問わない。)が一方の国に恒久的施設を有する場合において、その使用料を支払うべき債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、その使用料が当該恒久的施設が負担するときは、その使用料は、当該恒久的施設が存在する国において生じたものとされる。

6 支払者と受領者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、支払われた使用料の金額が、その支払の基因となつた使用、権利又は情報を考慮する場合において、その関係がなかつたならば支払者及び受領者が合意するとみられる金額をこえるときは、この条の規定は、その合意するとみられる金額についてのみ適用する。この場合には、支払われた金額のうち超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払つたうえ、それぞれの国の法令に従つて租税を課することができる。

第十四条

1 第七条2に定義する不動産の譲渡から生ずる収益に対しては、当該不動産が存在する国において租税を課することができる。

2 一方の国の企業が他方の国に有する恒久的施設の事業用資産の一部をなす財産(不動産を除く。)又は一方の国の居住者が自由職業を行なうため他方の国において使用することができる固定的施設に係る財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(単独に若しくは企業全体とともに行なわれる当該恒久的施設の譲渡又は当該固定的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の国において租税を課することができる。

3 2の規定にかかわらず、一方の国の居住者が国際運輸に運用する船舶及び航空機並びにこれらの船舶及び航空機の運用に係る財産(不動産を除く。)の譲渡によつて取得する収益に対しては、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。

4 一方の国の居住者が1及び2の規定の適用される財産以外の財産の譲渡によつて取得する収益に対しては、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。

5 4の規定は、資本の全部又は一部が株式の形式をとつている一方の国の居住者である法人の株式又は受益株式の譲渡から生ずる収益で、現に他方の国の居住者であり、かつ、当該株式又は受益株式の譲渡に先だつ五年の間のいずれかの時点において当該一方の国の居住者であつた個人が取得するものに対し当該一方の国が自国の法令に従つて租税を課する権利に影響を及ぼすものではない。

第十五条

1 一方の国の居住者が自由職業その他これに類する独立の活動に関して取得する所得に対しては、その者が自己の活動を遂行するために通常使用することができる固定的施設を他方の国に有しない限り、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。その者がそのような固定的施設を有する場合には、当該所得に対しては、当該固定的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の国において租税を課することができる。

2 「自由職業」には、特に、学術上、文学上、美術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含む。

第十六条

1 第十七条、第十九条、第二十条及び第二十一条の規定が適用される場合を除くほか、一方の国の居住者が勤務に関して取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、その勤務が他方の国において行なわれない限り、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の国において行なわれる場合には、その勤務から生ずる報酬に対しては、当該他方の国において租税を課することができる。

2 1の規定にかかわらず、一方の国の居住者が他方の国において行なう勤務に関して取得する報酬に対しては、次のことを条件として、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。

(a) その報酬の受領者がその年を通じて合計百八十三日をこえない期間当該他方の国に滞在し、

(b) その報酬が当該他方の国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われ、かつ、

(c) その報酬が当該他方の国に雇用者の有する恒久的施設又は固定的施設によつて負担されないこと。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機において行なわれる勤務に関する報酬に対しては、その国において租税を課することができる。

第十七条

一方の国の居住者が他方の国の居住者である法人の役員の資格で取得する報酬に対しては、当該他方の国において租税を課することができる。

第十八条

1 第十五条及び第十六条の規定にかかわらず、演劇、映画、ラジオ又はテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人及び運動家がこれらの者としての個人的活動によつて取得する所得に対しては、その活動が行なわれる国において租税を課することができる。

2 この条約のいかなる規定にもかかわらず、1の芸能人又は運動家の役務が一方の国において他方の国の企業により提供される場合において、その役務を行なう芸能人又は運動家が直接又は間接に当該企業を支配しているときは、その役務の提供により当該企業が取得する利得に対しては、当該一方の国において租税を課することができる。

第十九条

第二十条1及び2の規定が適用される場合を除くほか、一方の国の居住者に過去の勤務について支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。

第二十条

1 政府の職務の遂行として日本国又はその地方公共団体に提供された役務につき、日本国若しくはその地方公共団体によつて個人に支払われ、又は日本国若しくはその地方公共団体が雇用者の資格で拠出した基金から個人に支払われる報酬(退職年金を含む。)に対しては、日本国において租税を課することができる。そのような報酬については、第二十四条2の規定に従うことを条件として、オランダの租税を免除する。

2 政府の職務の遂行としてオランダ又はその地方政府若しくは地方公共団体に提供された役務につき、オランダ若しくはその地方政府若しくは地方公共団体によつて個人に支払われ、又はオランダ若しくはその地方政府若しくは地方公共団体が設立した基金から個人に支払われる報酬(退職年金を含む。)に対しては、オランダにおいて租税を課することができる。そのような報酬については、その受領者がオランダの国民である場合には、日本国の租税を免除する。

3 この条の規定は、いずれかの国又はその地方政府若しくは地方公共団体が行なう営業又は事業に関連して提供された役務について支払われる報酬(退職年金を含む。)については、適用しない。

第二十一条

大学、学校その他の教育機関において教育を行なうため一方の国を訪れ、二年をこえない期間一時的に滞在する教授又は教員で、現に他方の国の居住者であり、又は訪れる直前に他方の国の居住者であつたものは、その教育に関して取得する報酬につき、当該一方の国の租税を免除される。

第二十二条

もつぱら教育又は訓練を受けるため一方の国に滞在する学生又は事業修習者で現に他方の国の居住者であり、又はその滞在の直前に他方の国の居住者であつたものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付については、当該一方の国の租税を免除する。ただし、その給付が当該一方の国の外から支払われるものであることを条件とする。

第二十三条

一方の国の居住者の所得で前諸条に明文の規定がないものに対しては、当該一方の国においてのみ租税を課することができる。

第二十四条

1 日本国の居住者がこの条約に従つて両国において租税を課される所得をオランダにおいて取得するときは、その所得について納付されるオランダの租税の額は、その居住者に対して課される日本国の租税から控除される。ただし、その控除の額は、日本国の租税の額のうちその所得に対応する部分をこえないものとする。その控除の適用方法は、日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令の規定に従つて定められる。

2(a) オランダは、その居住者に対して租税を課する場合には、その租税の課税標準にこの条約に従い日本国において租税を課される所得の項目を含ませることができる。

(b) オランダは、二重課税を回避するための片務的な規則の中の欠損金に係る損益通算に関する規定の適用を妨げることなく、(a)の課税標準に含まれる所得であつて第七条、第八条、第十四条1及び2、第十五条、第十六条1及び3、第十七条、第十八条並びに第二十条1の規定に従い日本国において課税されるものが(a)の課税標準となる全所得のうちに占める割合を(a)の規定に従つて算定される租税の額に乗じて得た額を、当該租税の額から控除することを認める。

(c) オランダは、さらに、(a)の課税標準に含まれる所得の項目であつて第十一条2、第十二条2、第十三条2及び第十四条5の規定に従い日本国において租税を課されるものにつき(a)の規定に従つて算定されるオランダの租税の額からの控除を認める。この控除の額は、日本国の租税の額と同額とする。ただし、この控除は、それが行なわれる前に算定されたオランダの租税の額のうち当該所得の項目に対応する部分をこえないものとする。

第二十五条

1 一方の国の国民は、他方の国において、同様の状況にある当該他方の国の国民が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。

2 「国民」とは、

(a) 日本国については、日本国の国籍を有するすべての個人並びに日本国の法令に基づいて設立され又は組織されたすべての法人及び法人格を有しないすべての団体で日本国の租税に関し日本国の法令に基づいて設立され又は組織された法人として取り扱われるものをいう。

(b) オランダについては、オランダの国籍を有するすべての個人及びオランダにおいて施行されている法令によつてその地位を与えられたすべての法人、組合及び団体をいう。

3 一方の国の企業が他方の国に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の国において、同様の活動を行なう当該他方の国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。

この規定は、一方の国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として自国の居住者に対して認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の国の居住者に対して認めることを義務づけるものと解してはならない。

4 一方の国の企業で資本の全部又は一部が他方の国の一又は二以上の居住者によつて直接又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の国において、当該一方の国の類似の他の企業が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。

5 この条において「租税」とは、すべての種類の税をいう。

6 この条の規定の適用は、第一条の規定によつて制限されることはない。

第二十六条

1 一方の国の居住者は、一方又は双方の国においてとられる措置によつてこの条約に適合しない課税を受け又は受けるに至ると認める場合には、両国の法令で定める救済手段とは別に、自己が居住者である国の権限のある当局に対し、その事案について申立てをすることができる。

2 その申立てが正当であると認められ、かつ、その権限のある当局が適当な解決を与えることができない場合には、その権限のある当局は、この条約に適合しない課税を回避するため、他方の国の権限のある当局との合意によつてその事案を解決するように努めるものとする。

3 両国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によつて解決するように努めるものとする。両国の権限のある当局は、また、この条約に規定されていない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。

第二十六条のA

1 両国の権限のある当局は、この条約又はこの条約が適用される租税に関する両国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)を実施するために必要な情報を交換する。情報の交換は、第一条の規定による制限を受けない。一方の国が受領した情報は、当該一方の国がその法令に基づいて得た情報と同様に秘密として取り扱うものとし、この条約が適用される租税の賦課若しくは徴収、これらの租税に関する執行若しくは訴追又はこれらの租税に関する不服申立てについての決定に関与する者又は当局(裁判所及び行政機関を含む。)に対してのみ開示することができる。これらの者又は当局は、当該情報をこれらの目的のためにのみ使用することができる。これらの者又は当局は、当該情報を公開の法廷における審理又は司法上の決定において開示することができる。

2 1の規定は、いかなる場合にも、一方の国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

(a) 当該一方の国又は他方の国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

(b) 当該一方の国又は他方の国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。

(c) 営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反することになる情報を提供すること。

[改正注記]

第二十六条のB

1 各国は、この条約に基づいて他方の国の認める租税の免除又は税率の軽減が、このような特典を受ける権利を有しない者によつて享受されることのないようにするため、当該他方の国が課する租税を徴収するよう努める。ただし、その者が当該特典を受ける権利を有しないことについて両国の権限のある当局の間に合意があることを条件とする。当該他方の国が課する租税の徴収を行う国は、このようにして徴収された金額につき当該他方の国に対して責任を負う。

2 1の規定は、いかなる場合にも、いずれの国に対しても、一方若しくは双方の国の規則及び慣行に抵触し又は一方若しくは双方の国の公の秩序に反することになる行政上の措置をとる義務を課するものと解してはならない。

[改正注記]

第二十七条

1 一方の国の権限のある当局は、自国の慣行に従つて、この条約を実施するために必要な規則を定めることができる。

2 両国の権限のある当局は、この条約を実施するため、直接相互に通信することができる。

第二十八条

この条約の規定は、国際法の一般原則又は特別の協定の規定に基づく外交官又は領事官の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

第二十九条

この条約は、スリナム及びオランダ領アンティールにつき、そのまま又は必要な修正を加えて適用することができる。その適用は、外交上の経路を通ずる公文の交換その他それぞれの憲法上の手続に適合した方法によつて日本国政府とオランダ王国政府との間の約定される日から、約定される修正及び条件(終了に関する条件を含む。)に従つて効力を生ずる。

この条の規定に基づいてこの条約が適用されたスリナム又はオランダ領アンティールについてのこの条約の適用は、両国政府が別段の合意をしない限り、この条約が第三十一条の規定に基づいて終了する時に自動的に終了することとはならない。

第三十条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかに東京で交換されるものとする。

2 この条約は、批准書の交換の日に効力を生じ、かつ、この条約が効力を生ずる年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得について適用する。

第三十一条

いずれの一方の国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後に、外交上の経路を通じ他方の国に対して書面による終了の通告を行なうことにより、この条約を終了させることができる。ただし、その通告は、各年の六月三十日以前に行なうものとし、この場合には、この条約は、その終了の通告が行なわれた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得について効力を失う。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、この条約に署名した。

千九百七十年三月三日にヘーグで、日本国、オランダ語及び英語により、それぞれ二通ずつ、本書六通を作成した。日本語及びオランダ語の本文は、ひとしく正文であり、両国語の本文の解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国政府のために

藤崎萬里

オランダ王国政府のために

J・ルンス

議定書

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約に署名するにあたつて、下名は、同条約の不可分の一部をなす次の規定を協定した。

1 国際法における大陸棚の地位に関する日本国政府の立場を害することなく、オランダに隣接する北海の大陸棚の海底区域における地下鉱物資源の探査及び採取から又はこれらに関連して日本国の居住者が取得する所得に対するオランダの課税は、この条約に違反するものではないこと並びにこれらの所得に対する課税は、この条約に定める原則に従うことが了解される。

2 条約第十三条及び第十四条の規定に関し、ある支払金につき第十三条又は第十四条のいずれの規定を適用すべきかの問題については、特許権その他これに類する財産の真正な、かつ、いかなる権利をも譲渡人に残さない譲渡から生ずる収益についてのみ第十四条の規定を適用することが了解される。

3 条約第二十四条2の規定に関し、同条2の課税標準は、オランダの所得税又は法人税についてはそれぞれオランダの所得税法又は法人税法に規定する総所得又は総利得であることが了解される。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、この議定書に署名した。

千九百七十年三月三日にヘーグで、日本語、オランダ語及び英語により、それぞれ二通ずつ、本書六通を作成した。日本語及びオランダ語の本文は、ひとしく正文であり、両国語の本文の解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国政府のために

藤崎萬里

オランダ王国政府のために

J・ルンス