所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための

日本国政府とインド共和国政府との間の条約

〔平成元年十二月四日号外条約第八号・

改正平成一八年六月二日条約第六号

 

日本国政府及びインド共和国政府は、所得に対する租税に関し、二重課税を回避し及び脱税を防止するための新たな条約を締結することを希望して、次のとおり協定した。

 

第一条

この条約は、一方又は双方の締約国の居住者である者に適用する。

第二条

1 この条約の対象である租税は、次のものとする。

(a) 日本国においては、

(@)   所得税

(A)   法人税

(以下「日本国の租税」という。)

(b) インドにおいては、

所得税(加重税を含む。)

(以下「インドの租税」という。)

2 この条約は、1に掲げる租税に加えて又はこれに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって1に掲げる租税と同一であるもの又は実質的に類似するものについても、適用する。両締約国の権限のある当局は、それぞれの国の税法について行われた実質的な改正を、その改正後の妥当な期間内に、相互に通知する。

第三条

1 この条約の適用上、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

(a) 「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域(領海を含む。)及びその領域の外側に位置する水域で日本国が国際法に基づき管轄権を有し日本国の租税に関する法令が施行されているすべての水域(海底及びその下を含む。)をいう。

(b) 「インド」とは、インドの領域(領海を含む。)その他インドが国際法及びインドの国内法に基づき主権的権利を有する水域をいう。

(c) 「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又はインドをいう。

(d) 「租税」とは、文脈により、日本国の租税又はインドの租税をいう。

(e) 「者」には、個人、法人及び法人以外の団体を含む。

(f) 「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

(g) 「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。

(h) 「国民」とは、次の者をいう。

(@)   日本国については、日本国の国籍を有するすべての個人並びに日本国の法令に基づいて設立され又は組織されたすべての法人及び法人格を有しないが日本国の租税に関し日本国の法令に基づいて設立され又は組織された法人として取り扱われるすべての団体

(A)   インドについては、

(aa) インドの国籍を有するすべての個人

(bb)   インドにおいて施行されている法令によってその地位を与えられたすべての法人、組合及び団体

(i) 「国際運輸」とは、一方の締約国の企業が運用する船舶又は航空機による運送(他方の締約国内の地点の間においてのみ運用される船舶又は航空機による運送を除く。)をいう。

(j) 「権限のある当局」とは、

(@)   日本国については、大蔵大臣又は権限を与えられたその代理者をいう。

(A)   インドについては、中央政府大蔵省歳入局又は権限を与えられたその代理者をいう。

2 一方の締約国によるこの条約の適用上、この条約において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令における当該用語の意義を有するものとする。

第四条

1 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう。

2 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する者については、両締約国の権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その者が居住者であるとみなされる締約国を決定する。

第五条

1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。

2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

(a) 事業の管理の場所

(b) 支店

(c) 事務所

(d) 工場

(e) 作業場

(f) 鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所

(g) 保管のための施設を他の者に提供する者に係る倉庫

(h) 農業、林業、栽培又はこれらに関連した活動を行う農場、栽培場その他の場所

(i) 店舗その他の販売所

(j) 天然資源の探査のために使用する設備又は構築物(六箇月を超える期間使用する場合に限る。)

3 建築工事現場又は建設、据付若しくは組立工事は、六箇月を超える期間存続する場合に限り、「恒久的施設」とする。

4 企業が一方の締約国内における建築工事現場又は建設、据付若しくは組立工事に関連して、六箇月を超える期間、当該一方の締約国内において監督活動を行う場合には、当該企業は、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有し、当該「恒久的施設」を通じて事業を行うものとされる。

5 3及び4の規定にかかわらず、企業が一方の締約国内における石油の探査、開発又は採取に関連して、六箇月を超える期間、当該一方の締約国内において役務又は施設を提供する場合には、当該企業は、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有し、当該「恒久的施設」を通じて事業を行うものとされる。

6 1から5までの規定にかかわらず、「恒久的施設」には、次のことは、含まれないものとする。

(a) 企業に属する物品又は商品の保管又は展示のためにのみ施設を使用すること。

(b) 企業に属する物品又は商品の在庫を保管又は展示のためにのみ保有すること。

(c) 企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。

(d) 企業のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(e) 企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

7 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国内において他方の締約国の企業に代わって行動する者(8の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)が次のいずれかの活動を行う場合には、当該企業は、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされる。

(a) 当該一方の締約国内で、当該企業に代わって契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使すること。ただし、その活動が6に掲げる活動(事業を行う一定の場所で行われたとしても、6の規定により当該一定の場所が「恒久的施設」とされない活動)のみである場合は、この限りでない。

(b) (a)の権限は有しないが、当該一方の締約国内で、物品又は商品の在庫を反復して保有し、かつ、当該在庫により当該企業に代わって物品又は商品を規則的に引き渡すこと。

(c) 当該一方の締約国内で、専ら又は主として当該企業自体のため又は当該企業及び当該企業を支配し、当該企業により支配され若しくは同一の共通の支配下に当該企業と共に置かれている他の企業のため、反復して注文を取得すること。

8 企業は、通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人を通じて一方の締約国内で事業活動を行っているという理由のみでは、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされない。

9 一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人若しくは他方の締約国内において事業(「恒久的施設」を通じて行われるものであるかないかを問わない。)を行う法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによっては、いずれの一方の法人も、他方の法人の「恒久的施設」とはされない。

第六条

1 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 「不動産」の用語は、当該財産が存在する締約国の法令における不動産の意義を有するものとする。不動産には、いかなる場合にも、これに附属する財産、農業又は林業に用いられている家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(金額が確定しているかいないかを問わない。)を受領する権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。

3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他のすべての形式による使用から生ずる所得について適用する。

4 1及び3の規定は、企業の不動産から生ずる所得及び独立の人的役務を提供するために使用される不動産から生ずる所得についても、適用する。

第七条

1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に直接又は間接に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 3の規定に従うことを条件として、一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、当該恒久的施設が、同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行い、かつ、当該恒久的施設を有する企業と全く独立の立場で取引を行う別個のかつ分離した企業であるとしたならば当該恒久的施設が取得したとみられる利得が、各締約国において当該恒久的施設に帰せられるものとする。

3 恒久的施設の利得を決定するに当たっては、経営費及び一般管理費を含む費用で当該恒久的施設のために生じたものは、当該恒久的施設が存在する締約国内において生じたものであるか他の場所において生じたものであるかを問わず、損金に算入することを認められる。

4 2の規定は、恒久的施設に帰せられるべき利得を企業の利得の総額の当該企業の各構成部分への配分によって決定する慣行が一方の締約国にある場合には、租税を課されるべき利得をその慣行とされている配分の方法によって当該一方の締約国が決定することを妨げるものではない。ただし、用いられる配分の方法は、当該配分の方法によって得た結果がこの条に定める原則に適合するようなものでなければならない。

5 恒久的施設が企業のために物品又は商品の単なる購入を行ったことを理由としては、いかなる利得も、当該恒久的施設に帰せられることはない。

6 1から5までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によって決定する。ただし、別の方法を用いることにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。

7 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が企業の利得に含まれる場合には、当該他の条の規定は、この条の規定によって影響されることはない。

第八条

1 一方の締約国の企業が航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 一方の締約国の企業が船舶を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

3 2の規定にかかわらず、この条約が適用される最初の十課税年度又は十「前年度」の期間他方の締約国内において生じた2の利得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。ただし、その租税の額は、当該他方の締約国の税法によれば課されることとなる租税の額の

(a) 最初の五課税年度又は五「前年度」に関しては、五十パーセント

(b) 残りの五課税年度又は五「前年度」に関しては、二十五パーセントを超えないものとする。

4 1から3までの規定は、共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加していることによって取得する利得についても、適用する。

5 この条の規定は、第二条の規定にかかわらず、日本国においては事業税にも、インドにおいては日本国における事業税と類似する税が課される場合にはそのような税にも、適用する。

第九条

  (a) 一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合又は

(b) 同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合

 であって、そのいずれの場合においても、商業上又は資金上の関係において、双方の企業の間に、独立の企業の間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されているときは、その条件がないとしたならば一方の企業の利得となったとみられる利得であってその条件のために当該一方の企業の利得とならなかったものに対しては、これを当該一方の企業の利得に算入して租税を課することができる。

2 一方の締約国において租税を課された当該一方の締約国の企業の利得を他方の締約国が当該他方の締約国の企業の利得に算入して租税を課する場合において、両締約国の権限のある当局が、協議の上、その算入された利得の全部又は一部が、双方の企業の間に設けられた条件が独立の企業の間に設けられたであろう条件であったとしたならば当該他方の締約国の企業の利得となったとみられる利得であることに合意するときは、当該一方の締約国は、その合意された利得に対して当該一方の締約国において課された租税の額につき適当な調整を行う。この調整に当たっては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払う。

第十条

1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受領者が当該配当の受益者である場合には、当該配当の額の十パーセントを超えないものとする。

この2の規定は、配当に充てられる利得についての当該法人に対する課税に影響を及ぼすものではない。

3 この条において、「配当」とは、株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及びその他の持分から生ずる所得であって分配を行う法人が居住者とされる締約国の税法上株式から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいう。

4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である配当の受益者が、当該配当を支払う法人が居住者とされる他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

5 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国から利得又は所得を取得する場合には、当該他方の締約国は、当該法人の支払う配当及び当該法人の留保所得については、これらの配当及び留保所得の全部又は一部が当該他方の締約国内において生じた利得又は所得から成るときにおいても、当該配当(当該他方の締約国の居住者に支払われる配当及び配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該他方の締約国内にある恒久的施設又は固定的施設と実質的な関連を有するものである場合の配当を除く。)に対していかなる租税も課することができず、また、当該留保所得に対して租税を課することができない。

第十一条

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の利子に対しては、当該利子が生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の受領者が当該利子の受益者である場合には、当該利子の額の十パーセントを超えないものとする。

3 2の規定にかかわらず、一方の締約国内において生ずる利子であって、他方の締約国の政府、当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行又は当該他方の締約国の政府の所有する金融機関が取得するもの及び当該他方の締約国の政府、当該他方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体、当該他方の締約国の中央銀行若しくは当該他方の締約国の政府の所有する金融機関によって保証された債権又はこれらによる間接融資に係る債権に関し当該他方の締約国の居住者が取得するものについては、当該一方の締約国において租税を免除する。

4 3の規定の適用上、「中央銀行」及び「政府の所有する金融機関」とは、次のものをいう。

(a) 日本国については、

(@)   日本銀行

(A)   日本輸出入銀行

(B)   海外経済協力基金

(C)   国際協力事業団

(D)   日本国政府が資本の全部を所有するその他の金融機関で両締約国の政府が随時合意するもの

(b) インドについては、

(@)   インド準備銀行

(A)   インド輸出入銀行

(B)   インド政府が資本の全部を所有するその他の金融機関で両締約国の政府が随時合意するもの

5 この条において「利子」とは、すべての種類の信用に係る債権(担保の有無及び債務者の利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)から生じた所得、特に、公債、債券又は社債から生じた所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)をいう。

6 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である利子の受益者が、当該利子の生じた他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該利子の支払の基因となった債権が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

7 利子は、その支払者が一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府、地方公共団体若しくは居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、利子の支払者(締約国の居住者であるかないかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該利子の支払の基因となった債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該利子が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該利子は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。

8 利子の支払の基因となった債権について考慮した場合において、利子の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、利子の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

第十二条

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる使用料及び技術上の役務に対する料金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の使用料及び技術上の役務に対する料金に対しては、これらが生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該使用料又は技術上の役務に対する料金の受領者が当該使用料又は技術上の役務に対する料金の受益者である場合には、当該使用料又は技術上の役務に対する料金の額の十パーセントを超えないものとする。

3 この条において、「使用料」とは、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領するすべての種類の支払金をいう。

4 この条において、「技術上の役務に対する料金」とは、技術者その他の人員によって提供される役務を含む経営的若しくは技術的性質の役務又はコンサルタントの役務の対価としてのすべての支払金(支払者のその雇用する者に対する支払金及び第十四条に定める独立の人的役務の対価としての個人に対する支払金を除く。)をいう。

5 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である使用料又は技術上の役務に対する料金の受益者が、当該使用料若しくは技術上の役務に対する料金の生じた他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該使用料又は技術上の役務に対する料金の支払の基因となった権利、財産又は契約が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

6 使用料及び技術上の役務に対する料金は、その支払者が一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府、地方公共団体若しくは居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、使用料又は技術上の役務に対する料金の支払者(締約国の居住者であるかないかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該使用料又は技術上の役務に対する料金を支払う債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該使用料又は技術上の役務に対する料金が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該使用料又は技術上の役務に対する料金は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。

7 使用料又は技術上の役務に対する料金の支払の基因となった使用、権利又は情報について考慮した場合において、使用料若しくは技術上の役務に対する料金の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、使用料又は技術上の役務に対する料金の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

第十三条

1 一方の締約国の居住者が第六条に規定する不動産で他方の締約国内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産の一部を成す財産(不動産を除く。)の譲渡又は一方の締約国の居住者が独立の人的役務を提供するため他方の締約国内において使用することのできる固定的施設に係る財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(単独に若しくは企業全体として行われる当該恒久的施設の譲渡又は当該固定的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

3 2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の株式の譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

4 一方の締約国の居住者が国際運輸に運用する船舶又は航空機及びこれらの船舶又は航空機の運用に係る財産(不動産を除く。)の譲渡によって取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

5 一方の締約国の居住者が1から4までに規定する財産以外の財産の譲渡によって取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

第十四条

1 一方の締約国の居住者が自由職業その他の独立の性格を有する活動について取得する所得に対しては、その者が自己の活動を行うため通常使用することのできる固定的施設を他方の締約国内に有せず、かつ、その者が当該課税年度又は「前年度」を通じ合計百八十三日を超える期間当該他方の締約国内に滞在しない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。その者がそのような固定的施設を有する場合又は前記の期間当該他方の締約国内に滞在する場合には、当該所得に対しては、当該固定的施設に帰せられる部分又は前記の期間を通じ当該他方の締約国内において取得した部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 「自由職業」には、特に、学術上、文学上、美術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含む。

第十五条

1 次条及び第十八条から第二十一条までの規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務から生ずる報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに掲げることを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a) 報酬の受領者が当該課税年度又は「前年度」を通じて合計百八十三日を超えない期間当該他方の締約国内に滞在すること。

(b) 報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。

(c) 報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機内において行われる勤務に係る報酬に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。

第十六条

一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

第十七条

1 第十四条及び第十五条の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者である個人が演劇、映画、ラジオ若しくはテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人又は運動家として他方の締約国内で行う個人的活動によって取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

もっとも、そのような活動が両締約国の政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づき当該一方の締約国の居住者である個人により行われる場合には、当該所得については、当該他方の締約国において租税を免除する。

2 一方の締約国内で行う芸能人又は運動家としての個人的活動に関する所得が当該芸能人又は運動家以外の他方の締約国の居住者である者に帰属する場合には、当該所得に対しては、第七条、第十四条及び第十五条の規定にかかわらず、当該一方の締約国において租税を課することができる。

もっとも、そのような活動が両締約国の政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づいて行われる場合には、当該所得については、そのような活動が行われた締約国において租税を免除する。

第十八条

次条2の規定が適用される場合を除くほか、過去の勤務につき一方の締約国の居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

第十九条

  (a) 政府の職務の遂行として一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し当該一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われる報酬(退職年金を除く。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(b) もっとも、当該役務が他方の締約国内において提供され、かつ、(a)の個人が次の(@)又は(A)に該当する当該他方の締約国の居住者である場合には、その報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(@) 当該他方の締約国の国民

(A)   専ら当該役務を提供するため当該他方の締約国の居住者となった者でないもの

  (a) 一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し、当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体によって支払われ、又は当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体が拠出した基金から支払われる退職年金に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(b) もっとも、(a)の個人が他方の締約国の居住者であり、かつ、当該他方の締約国の国民である場合には、その退職年金に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

3 一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体の行う事業に関連して提供される役務につき支払われる報酬及び退職年金については、第十五条から前条までの規定を適用する。

第二十条

専ら教育又は訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものである場合に限る。

第二十一条

1 大学、学校その他の公認された教育機関において教育又は研究を行うため一方の締約国を訪れ、二年を超えない期間一時的に滞在する教授又は教員であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又は訪れる直前に他方の締約国の居住者であったものに対しては、その教育又は研究に係る報酬につき、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 この条の規定は、公的な利益のためではなく、主として特定の者の私的な利益のために行われる研究から生ずる所得については、適用しない。

第二十二条

1 一方の締約国の居住者の所得(源泉地を問わない。)で前各条に規定がないものに対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 1の規定は、一方の締約国の居住者である所得(第六条2に規定する不動産から生ずる所得を除く。)の受領者が、他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該所得の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、当該所得については、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者の所得のうち、他方の締約国内において生ずるものであって前各条に規定のないものに対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

第二十三条

1 いずれかの締約国において施行されている法令は、この条約において反対の規定が特に設けられている場合を除き、当該締約国において、引き続き所得の課税を規律するものとする。

2 インドにおいては、二重課税は、次の方法により回避される。

(a) インドの居住者がこの条約の規定に従って日本国において租税を課される所得を取得する場合には、インドは、日本国において直接に又は源泉徴収により納付される租税の額を当該居住者の所得に対する租税の額から控除する。ただし、控除の額は、(当該控除が行われる前に算定された)所得に対する租税の額のうち日本国において租税を課される当該所得に対応する部分を超えないものとする。また、当該居住者がインドにおいて超過利潤税を課される法人である場合には、日本国において納付される所得に対する租税の額は、まず、インドにおいて当該法人に課される所得税の額から控除し、なお残額があるときは、インドにおいて当該法人に課される超過利潤税の額から控除する。

(b) インドの居住者がこの条約の規定に従って日本国においてのみ租税を課される所得を取得する場合には、インドは、当該所得をインドの租税の課税標準に含めることができる。ただし、所得に対する租税の額から日本国において取得する当該所得に対応する部分を控除する。

3 日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令に従い、

(a) 日本国の居住者がこの条約の規定に従ってインドにおいて租税を課される所得をインドにおいて取得する場合には、当該所得について納付されるインドの租税の額は、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除する。ただし、控除の額は、日本国の租税の額のうち当該所得に対応する部分を超えないものとする。

(b) インドにおいて取得される所得が、インドの居住者である法人によりその議決権のある株式又はその発行済株式の少なくとも二十五パーセントを所有する日本国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には、日本国の租税からの控除を行うに当たり、当該配当を支払う法人によりその所得について納付されるインドの租税を考慮に入れるものとする。

第二十四条

1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の租税若しくはこれに関連する要件又はより重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。この1の規定は、第一条の規定にかかわらず、締約国の居住者でない者にも、適用する。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行う当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。

この2の規定は、一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として自国の居住者に認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に認めることを義務付けるものと解してはならない。

3 第九条、第十一条8又は第十二条7の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の企業が他方の締約国の居住者に支払った利子、使用料その他の支払金については、当該企業の課税対象利得の決定に当たって、当該一方の締約国の居住者に支払われたとした場合における条件と同様の条件で控除するものとする。

4 一方の締約国の企業であってその資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者により直接又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の類似の他の企業に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の租税若しくはこれに関連する要件又はより重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。

5 この条において、「租税」とは、この条約の対象である租税をいう。

第二十五条

1 いずれか一方の又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合しない課税を受けたと又は受けることになると認める者は、当該事案について、当該いずれか一方の又は双方の締約国の法令に定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対して又は当該事案が前条1の規定の適用に関するものである場合には自己が国民である締約国の権限のある当局に対して、申立てをすることができる。当該申立ては、この条約の規定に適合しない課税に係る当該措置の最初の通知の日から三年以内に、しなければならない。

2 権限のある当局は、1の申立てを正当と認めるが、満足すべき解決を与えることができない場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によって当該事案を解決するよう努める。成立したすべての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない。

3 両締約国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によって解決するよう努める。両締約国の権限のある当局は、また、この条約に定めのない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。

4 両締約国の権限のある当局は、2及び3の合意に達するため、直接相互に通信することができる。

第二十六条

1 両締約国の権限のある当局は、この条約若しくはこの条約が適用される租税に関する両締約国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)を実施するため、又はこれらの租税に関する脱税を防止するために必要な情報を交換する。交換された情報は、秘密として取り扱うものとし、この条約が適用される租税の賦課若しくは徴収、これらの租税に関する執行若しくは訴追又はこれらの租税に関する不服申立てについての決定に関与する者又は当局(裁判所を含む。)に対してのみ開示することができる。

2 1の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

(a) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

(b) 当該一方の締約国又は他方の締約国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。

(c) 営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反することになる情報を提供すること。

第二十七条

この条約のいかなる規定も、国際法の一般原則又は特別の協定に基づく外交官又は領事官の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

第二十八条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限り速やかに東京で交換されるものとする。

2 この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずるものとし、次のものについて適用する。

(a) 日本国においては、

この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(b) インドにおいては、

この条約が効力を生ずる年の翌年の四月一日以後に開始する各「前年度」の所得

3 千九百六十年一月五日にニュー・デリーで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とインドとの間の協定は、2の規定に従ってこの条約が適用される所得につき、終了し、かつ、適用されなくなる。

第二十九条

この条約は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後に開始する各年の六月三十日以前に、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面による終了の通告を行うことができる。この場合には、この条約は、次のものについて効力を失う。

(a) 日本国においては、

終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(b) インドにおいては、

終了の通告が行われた年の翌年の四月一日以後に開始する各「前年度」の所得

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

千九百八十九年三月七日にニュー・デリーで、ひとしく正文である日本語、ヒンディ語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

 

日本国政府のために

野田英二郎

 

インド共和国政府のために

G・N・グプタ

 

(右条約の英文)〔省略〕

 


 

所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書(抄)

平成一八年六月二日条約第六号

 

日本国政府及びインド共和国政府は、千九百八十九年三月七日にニューデリーで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約(以下「条約」という。)を改正することを希望して、次のとおり協定した。

 

第一条第四条 〔略〕

第五条

1 この議定書は、両締約国のそれぞれの国内法上の手続に従って承認されなければならない。この議定書は、その承認を通知する外交上の公文の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。

2 この議定書は、次のものについて適用する。

(a) 日本国においては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、

(aa)   この議定書がある年の六月三十日以前に効力を生ずる場合には、その年の七月一日以後に租税を課される額

(bb)   この議定書がある年の七月一日以後に効力を生ずる場合には、その年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A)   源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(b) インドにおいては、

(@)   源泉徴収される租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の四月一日以後に支払われ、又は貸記される額

(A)   この議定書が効力を生ずる年の翌年の四月一日以後に開始する各課税年度の所得に対する租税

3 この議定書は、条約が有効である限り効力を有する。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

二千六年二月二十四日に東京で、ひとしく正文である日本語、ヒンディー語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

 

日本国政府のために

麻生太郎

 

インド共和国政府のために

マニ・トリパティ

 

(右条約の英文)〔省略〕

 

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約の効力の発生

〔平成元年十二月四日号外外務省告示第六百一号〕

 

 平成元年三月七日にニュー・デリーで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約の批准書の交換は、平成元年十一月二十九日に東京で行われた。よって、同条約は、その第二十八条2の規定に従い、平成元年十二月二十九日に効力を生ずる。

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約に関する交換公文

〔平成元年十二月四日号外外務省告示第六百二号〕

 

平成元年三月七日にニュー・デリーで所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約が署名された際、次の同条約に関する書簡及びインドの経済開発を促進するための特別の奨励措置に関する書簡の交換がインド共和国政府との間に行われた。

 

 

(所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約に関する交換公文)

 

(日本側書簡)

 

(訳文)

 

書簡をもって啓上いたします。本使は、本日署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約に言及するとともに、両政府間で到達した次の了解を日本国政府に代わって確認する光栄を有します。

1 条約第二条1(b)に関し、千九百六十四年の法人超過利潤税法に基づき課され、その後に廃止された超過利潤税と同一である租税又は実質的に類似する租税であって条約の署名の日の後にインドにおいて課されるものは、同条2に規定する同一である租税又は実質的に類似する租税とみなされる。

2 条約第三条1(d)に関し、「租税」には、条約が適用される租税に係る債務不履行又は不作為に関して支払われるいかなる額も、また、これらの租税に関して科される罰金に相当するいかなる額も含まれない。

3 条約第三条1(e)に関し、インドについては、「者」には、組合及びヒンドゥー未分割家族を含む。

4 条約第五条5に関し、同条5に規定する「役務又は施設」には、石油の探査、開発又は採取において使用される設備及び機械であって賃貸により提供するものを含む。

5 企業に属する物品若しくは商品の引渡しのためにのみ施設を使用し、又は企業に属する物品若しくは商品の在庫を引渡しのためにのみ保有すること(当該物品又は商品の販売を当該締約国において行う場合を除く。)については、条約第五条6の規定が適用されることが了解される。

6 条約第七条1に関し、「当該恒久的施設に直接又は間接に帰せられる」との用語の使用に当たっては、恒久的施設が関与した取引から生じた利得のうち、当該取引において当該恒久的施設が果たした役割に対応する部分が当該恒久的施設に帰せられることが了解される。また、当該物品又は役務の販売又は提供に関する契約又は注文が、恒久的施設との間よりもむしろ海外にある当該企業の本店との間で直接的に行われる場合においても、当該利得のうち前記の部分が当該恒久的施設に帰せられることが了解される。

7 条約第七条3に関し、インドにおいては、同条3に規定する経営費及び一般管理費は、インドの国内法に従って控除されるが、当該控除は、いかなる場合においても、条約の署名の日に施行されているインドの所得税法に基づき認められるものを下回るものであってはならないことが了解される。

8 条約第七条3に関し、企業の恒久的施設が当該企業の本店又は当該企業の他の事務所に支払った又は振り替えた支払金(実費弁償に係るものを除く。)で次に掲げるものについては、損金に算入することが認められない。

(a) 特許権その他の権利の使用又はノウハウの使用の対価として支払われる使用料、報酬その他これらに類する支払金

(b) 特定の役務の提供又は事業の管理の対価として支払われる手数料その他の料金

(c) 当該恒久的施設に対する貸付けに係る利子(当該企業が銀行業を営む企業である場合を除く。)

9 条約第八条に関し、

(@)     船舶又は航空機を国際運輸に運用することに関連して一時的に預金された資金に対する利子は、その船舶又は航空機の運用による所得とみなされ、当該利子については、第十一条の規定は、適用されない。

(A)     船舶又は航空機の運用による所得には、国際運輸における物品又は商品の運送に関連するコンテナー(コンテナーの運送のためのトレーラー及び関連設備を含む。)の使用、保管又は賃貸により取得する所得を含む。

10 条約第八条5に関し、インドの地方公共団体が条約の署名の日の後に日本国における事業税と実質的に類似の性格を有する税を導入する場合には、両政府は、適当とみなされる方法により相互主義の原則に基づいて同条5の規定を改正するために協議しなければならない。

本使は、更に、閣下が前記の了解を貴国政府に代わって確認されることを要請する光栄を有します。

本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

 千九百八十九年三月七日にニュー・デリーで

 

インド駐在日本国特命全権大使

野田英二郎

 

大蔵省直税庁長官

G・N・グプタ閣下

 

(インド側書簡)

 

(訳文)

 

書簡をもって啓上いたします。本官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 

(日本側書簡)

 

本官は、更に、閣下の書簡に述べられた了解をインド共和国政府に代わって確認する光栄を有します。

本官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かって敬意を表します。

 

 千九百八十九年三月七日にニュー・デリーで

 

大蔵省直税庁長官

G・N・グプタ

 

インド駐在日本国特命全権大使

野田英二郎閣下

 

 

 

(インドの経済開発を促進するための特別の奨励措置に関する交換公文)

 

(インド側書簡)

 

(訳文)

 

書簡をもって啓上いたします。本官は、本日署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のためのインド共和国政府と日本国政府との間の条約第二十三条3(c)に言及するとともに、インド共和国政府と日本国政府との間で到達した次の了解をインド共和国政府に代わって確認する光栄を有します。

千九百六十一年のインドの所得税法(千九百六十一年の第四十三号)の次の各条に定める措置は、前記の条約第二十三条3(c)に規定する「インドの経済開発を促進するための特別の奨励措置であってこの条約の署名の日に実施されているもの」である。

(@)     第十条(15)(C)(特定の利子に対する租税の免除に関するもの)

(A)     第十条のA(自由貿易地帯において新規に設立された産業的事業に係る特別規定に関するもの)

(B)     第三十二条のAB(設備及び機械等への投資に係る投資預金口座等に関するもの)

(C)     第八十条のHH(後発地域において新規に設立された産業的事業又はホテル業からの利得及び収益に係る控除に関するもの)

(D)     第八十条のI(特定の期日後の産業的事業からの利得及び収益に係る控除等に関するもの)

本官は、更に、閣下が前記の了解を日本国政府に代わって確認されることを要請する光栄を有します。

本官は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

 千九百八十九年三月七日にニュー・デリーで

 

大蔵省直税庁長官

G・N・グプタ

 

インド駐在日本国

特命全権大使 野田英二郎閣下

 

(日本側書簡)

 

(訳文)

書簡をもって啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 

(インド側書簡)

 

本使は、更に、閣下の書簡に述べられた了解を日本国政府に代わって確認する光栄を有します。

本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

 

 千九百八十九年三月七日にニュー・デリーで

 

インド駐在日本国

特命全権大使 野田英二郎

 

大蔵省直税庁長官

G・N・グプタ閣下

 

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の効力の発生

〔平成十八年六月二日外務省告示第二百九十九号〕

 

平成十八年二月二十四日に東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書についてそれぞれの国において国内法上の手続に従って承認されたことを通知する公文の交換は、平成十八年五月二十九日にニューデリーで行われた。よって、同議定書は、その第五条1の規定に従い、平成十八年六月二十八日に効力を生ずる。