○所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定

 

 

○所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定

昭和四十二年五月二十日号外条約第四号

〔外務・大蔵・自治大臣署名〕

[]

改正

昭和五五年一〇月二〇日号外 条約第三四号〔昭和五五年一一月一〇日発効=昭和五五年外務告三七四号〕

昭和五九年 四月一六日 条約第二号〔昭和五九年五月四日発効=昭和五九年外務告二〇〇号〕

所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定をここに公布する。

所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定

日本国及びドイツ連邦共和国は、

所得に対する租税及びある種の他の租税に関し、二重課税を回避するための協定を締結することを希望して、

次のとおり協定した。 

第一条

この協定は、一方又は双方の締結国の居住者である者に適用する。

第二条

(1) この協定の対象である租税は、次のものとする。

ドイツ連邦共和国においては、

(a) 所得税

(b) 法人税

(c) 営業税

(d) 財産税

(以下「ドイツの租税」という。)

日本国においては、

(a) 所得税

(b) 法人税

(c) 住民税

(d) 事業税

(以下「日本国の租税」という。)

(2) この協定は、(1)に掲げる租税と実質的に類似の性質を有し、かつ、この協定の署名の日の後にいずれか一方の締約国において設けられる他の租税についても、また、適用する。

(3) この協定の規定のうち所得又は利得に対する租税に関する規定は、所得及び利得以外のものを基礎として算定されるドイツの営業税並びに日本国と住民税及び日本国の事業税についても、同様に、適用する。

[改正注記]

第三条

(1) この協定において、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

(a) 「連邦共和国」とは、ドイツ連邦共和国をいい、地理的意味で用いる場合には、ドイツ連邦共和国基本法が施行されている領域をいう。

(b) 「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域をいう。

(c) 「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又は連邦共和国をいう。

(d) 「租税」とは、文脈により、日本国の租税又はドイツの租税をいう。

(e) 「者」には、法人及び法人以外の社団を含む。

(f) 「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

(g) 「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。

(h) 「国民」とは、

1 連邦共和国については、ドイツ連邦共和国基本法第百十六条第一項にいうすべてのドイツ人並びに連邦共和国において施行されている法令によりその地位を与えられたすべての法人、組合その他の団体をいう。

2 日本国については、日本国の国籍を有するすべての個人並びに日本国の法令に基づき設立され又は組織されたすべての法人及び法人格を有しないすべての団体で日本国の租税に関し日本国の法令に基づき設立され又は組織された法人として取り扱われるものをいう。

(i) 「権限のある当局」とは、日本国については、大蔵大臣又は権限を与えられたその代理者をいい、連邦共和国については、連邦大蔵大臣をいう。

(2) 一方の締約国においてこの協定が適用される場合には、この協定において特に定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この協定が適用される租税に関するその締約国の法令上有する意義を有するものとする。

第四条

(1) この協定の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、その締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、管理の場所その他これらに類する基準によりその締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう。

(2) (1)の規定により双方の締約国の居住者となる者については、権限のある当局は、合意により、この協定の適用上その者が居住者であるとみなされる締約国を決定する。

第五条

(1) この協定の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行なう一定の場所で、企業がその事業の全部又は一部を行なつているものをいう。

(2) 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

(a) 管理所

(b) 支店

(c) 事務所

(d) 工場

(e) 作業場

(f) 鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所

(g) 建物工事現場又は建設若しくは組立ての工事で、十二箇月をこえる期間存続するもの

(3) 「恒久的施設」については、次のことは、含まれないものとする。

(a) 企業に属する物品又は商品をもつぱら保管し、展示し、又は引き渡すため、施設を使用すること。

(b) 企業に属する物品又は商品の在庫を、もつぱら保管し、展示し、又は引き渡すため、保有すること。

(c) 企業に属する物品又は商品の在庫を、もつぱら他の企業による加工のため、保有すること。

(d) 企業のためにもつぱら物品若しくは商品を購入し、又は情報を収集するため、事業を行なう一定の場所を保有すること。

(e) 企業のためにもつぱら広告、情報の提供、科学的調査又はこれらに類する準備的若しくは補助的な性質の活動を行なうため、事業を行なう一定の場所を保有すること。

(4) 一方の締約国内で他方の締約国の企業に代わつて行動する者((5)の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)が、当該一方の締約国内で、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する場合には、その者は、当該一方の締約国内における恒久的施設とされる。ただし、その者の行動が当該企業のために物品又は商品を購入することに限られる場合は、この限りでない。

(5) 一方の締約国の企業は、仲立人、問屋その他独立の地位を有する代理人でこれらの者としての業務を通常の方法で行なうものを通じて他方の締約国内で事業活動を行なつたという理由のみでは、当該他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされることはない。

(6) 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者である法人又は他方の締約国内において恒久的施設を通じ若しくは通じないで事業を行なう法人を支配し又はこれに支配されているという事実のみによつては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設であることとはならない。

第六条

(1) 不動産から生ずる所得に対しては、当該不動産が存在する締約国において租税を課することができる。

(2) 「不動産」の定義は、当該財産が存在する締約国の法令によるものとする。不動産には、いかなる場合には、不動産に附属する財産、農業又は林業に用いられている家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(金額が確定しているかどうかを問わない。)を受け取る権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。

(3) (1)の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他のすべての形式による使用から生ずる所得について適用する。

(4) (1)及び(3)の規定は、企業の不動産に係る所得及び自由職業の活動に使用される不動産に係る所得についても、また、適用する。

第七条

(1) 一方の締約国の企業の利得については、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内で事業を行なわない限り、当該他方の締約国の租税を免除する。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内で事業を行なう場合には、その企業の利得に対し、当該恒久的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2) 一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内で事業を行なう場合には、各締約国において、当該恒久的施設が同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行ない、かつ、当該恒久的施設を有する企業と、全く独立の立場で、取引を行なう別個のかつ分離した企業であるとすれば、当該恒久的施設が取得するとみられる利得が、当該恒久的施設に帰せられるものとする。

(3) 恒久的施設の利得を決定するに際しては、経営費及び一般管理費を含む費用で、その恒久的施設のために生じたものは、その恒久的施設が存在する締約国内で生じたか又は他の場所で生じたかを問わず、経費に算入することを認められるものとする。

(4) (2)の規定は、恒久的施設に帰せられるべき利得を企業の利得の総額の当該企業の各構成部分への配分によつて決定する慣行が一方の締約国において行なわれている場合には、その締約国が租税を課されるべき利得をその慣行とされている配分の方法によつて決定することを妨げるものではない。ただし、用いられる配分の方法は、その方法によつて得た結果がこの条に規定する原則に適合するようなものでなければならない。

(5) 恒久的施設が企業のために行なつた物品又は商品の単なる購入を理由としては、いかなる利得もその恒久的施設に帰せられることはない。

(6) (1)から(5)までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によつて決定するものとする。ただし、別の方法を用いることについて正当な理由があるときは、この限りでない。

(7) この条の規定の適用上、連邦共和国において施行されている法令によりその地位を与えられた合名組合又は合資組合で連邦共和国に本店又は主たる事務所を有するものは、連邦共和国の居住者である法人格を有する団体として取り扱うものとする。

(8) 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が企業の利得に含まれる場合には、これらの条の規定は、この条の規定によつて影響されることはない。

第八条

(1) 一方の締約国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによつて取得する利得については、他方の締約国の租税を免除する。

(2) (1)の規定は、航空機を国際運輸に運用する企業がいかなる種類の共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加している場合についても、同様に、適用する。

(3) 一方の締約国の企業が国際運輸に使用されるコンテナー及びその運送のための関連設備を賃貸することによつて取得する利得については、他方の締約国の租税を免除する。

(4) 連邦共和国の居住者が営む企業が所有し、かつ、国際運輸に運用する船舶及び航空機については、日本国において固定資産税を免除する。

(5) 連邦共和国の居住者が営む企業が所有する国際運輸に使用されるコンテナー及びその運送のための関連設備については、日本国において固定資産税を免除する。

[改正注記]

第九条

(a) 一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合又は

(b) 同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合

であつて、そのいずれの場合においても、両企業間に、その商業上又は資金上の関係において独立の企業間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されるときは、その条件がなかつたならば一方の企業の利得となつたはずである利得で、その条件のために当該一方の企業の利得とならなかつたものは、その企業の利得に算入して課税することができる。

第十条

(1) 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2) (1)の配当に対しては、当該配当を支払つた法人が居住者である締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。この場合において、この租税の額は、当該配当の金額の十五パーセントをこえないものとする。

(3) (2)の規定にかかわらず、日本国の居住者である法人が連邦共和国の居住者である法人に支払う配当に対する日本国の租税の額は、当該配当を受け取る法人が、当該配当の支払の日に先立つ十二箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の二十五パーセント以上を直接又は間接に所有する場合には、当該配当の金額の十パーセントを超えないものとする。

(4) (2)及び(3)の規定は、配当に充てられる利得についての当該法人に対する課税に影響を及ぼすものではない。

(5) この条において「配当」とは、株式、鉱業株式その他利得の分配を受ける権利(債権を除く。)から生ずる所得及びその他の持分から生ずる所得であつて分配を行なう法人が居住者である締約国の税法上株式から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいい、匿名組合員が匿名組合員として取得する所得を含む。

(6) (1)、(2)及び(3)の規定は、一方の締約国の居住者である配当の受領者が、その配当を支払う法人が居住者である他方の締約国内に、その配当の支払の基因となつた株式又は持分を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。この場合には、第七条の規定が適用される。

(7) 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国から利得又は所得を取得する場合には、当該他方の締約国は、その法人が当該他方の締約国の居住者でない者に支払う配当及びその法人の留保所得については、当該支払配当又は当該留保所得の全部又は一部が当該他方の締約国内で生じた利得又は所得から成るときも、当該配当に対していかなる租税をも課することができず、また、当該留保所得に対して留保所得税を課することができない。

(8) この協定の規定にかかわらず、匿名組合員が匿名組合員として取得する所得に対しては、当該所得が生じた締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。ただし、当該所得の基因となつた支払金が支払者の課税所得の決定に当たつて控除されるものである場合に限る。

[改正注記]

第十一条

(1) 一方の締約国内で生じ他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2) (1)の利子に対しては、当該利子が生じた締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。この場合において、その租税の額は、当該利子の金額の十パーセントをこえないものとする。

(3) (2)の規定にかかわらず、一方の締約国内で生ずる利子で他方の締約国の市場において発行された債券につき当該他方の締約国の居住者に支払われるものについては、当該一方の締約国(連邦共和国については州を含む。)の政府により当該債券が発行され又は当該債券の元本若しくは利子の支払が保証されるときは、当該一方の締約国の租税を免除する。

(4) (2)の規定にかかわらず、

(a) 連邦共和国内で生じ日本銀行又は日本輸出入銀行に支払われる利子については、ドイツの租税を免除する。

(b) 日本国内で生じドイツ連邦銀行又は復興金融公庫に支払われる利子については、日本国の租税を免除する。

(5) この条において「利子」とは、公債、債券又は社債(担保の有無及び利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)その他のすべての種類の債権から生じた所得及びその他の所得で当該所得が生じた締約国の税法上貸付金から生じた所得と同様に取り扱われるものをいう。

(6) (1)から(4)までの規定は、一方の締約国の居住者である利子の受領者が、その利子が生じた他方の締約国内に、その利子を生じた債権を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。この場合には、第七条の規定が適用される。

(7) 利子は、その支払者が一方の締約国(連邦共和国については州を含む。)又はその地方公共団体若しくは居住者であるときは、その締約国内で生じたものとされる。ただし、利子の支払者(一方の締約国の居住者であるかどうかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設を有する場合において、その利子を支払う基因となつた債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、その利子を当該恒久的施設が負担するときは、その利子は、当該恒久的施設が存在する締約国内で生じたものとされる。

(8) 支払者と受領者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、支払われた利子の金額が、その支払の基因となつた債権を考慮する場合において、その関係がなかつたならば支払者及び受領者が合意するとみられる金額をこえるときは、この条の規定は、その合意するとみられる金額についてのみ適用する。その場合には、支払われた金額のうち超過分に対し、この協定の他の規定に妥当な考慮を払つた上、各締約国の法令に従つて租税を課することができる。

第十二条

(1) 一方の締約国内で生じ他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2) (1)の使用料に対しては、当該使用料が生じた締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。この場合において、その租税の額は、当該使用料の金額の十パーセントをこえないものとする。

(3) この条において「使用料」とは、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(映画フィルムを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備(国際運輸に使用されるコンテナー及びその運送のための関連設備を除く。)の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受け取るすべての種類の支払金をいう。

(4) (1)及び(2)の規定は、一方の締約国の居住者である使用料の受領者が、その使用料が生じた他方の締約国内に、その使用料を生じた権利又は財産を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。この場合には、第七条の規定が適用される。

(5) 使用料は、その支払者が一方の締約国(連邦共和国については州を含む。)又はその地方公共団体若しくは居住者であるときは、その締約国内で生じたものとされる。ただし、使用料の支払者(一方の締約国の居住者であるかどうかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設を有する場合において、その使用料を支払うべき債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、その使用料を当該恒久的施設が負担するときは、その使用料は、当該恒久的施設が存在する締約国内で生じたものとされる。

(6) 支払者と受領者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、支払われた使用料の金額が、その支払の基因となつた使用、権利又は情報を考慮する場合において、その関係がなかつたならば支払者及び受領者が合意するとみられる金額をこえるときは、この条の規定は、その合意するとみられる金額についてのみ適用する。その場合には、支払われた金額のうち超過分に対し、この協定の他の規定に妥当な考慮を払つた上、各締約国の法令に従つて租税を課することができる。

[改正注記]

第十三条

(1) 第六条(2)に定義する不動産の譲渡から生ずる収益に対しては、当該不動産が存在する締約国において租税を課することができる。

(2) 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産の一部をなす動産(この条においては、(1)の不動産以外の財産をいう。)又は一方の締約国の居住者が自由職業を行なうため他方の締約国において使用することができる固定的施設に係る動産の譲渡から生ずる収益(単独に若しくは企業全体とともに行なわれる当該恒久的施設又は当該固定的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。ただし、一方の締約国の居住者が国際運輸に運用する船舶若しくは航空機又はこれらの船舶若しくは航空機の運用に係る動産の譲渡によつて取得する収益については、他方の締約国の租税を免除する。

(3) 一方の締約国の居住者が(1)及び(2)の財産以外の財産の譲渡によつて取得する収益については、他方の締約国の租税を免除する。

第十四条

(1) 一方の締約国の居住者が自由職業その他類似の性質の独立の活動に関して取得する所得については、その者が自己の活動を遂行するために通常使用することができる固定的施設を他方の締約国内に有しない限り、他方の締約国の租税を免除する。その者がそのような固定的施設を有する場合には、当該所得に対しては、当該固定的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2) 「自由職業」には、特に、学術上、文学上、美術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含む。

第十五条

(1) 第十六条、第十八条及び第十九条の規定を留保して、一方の締約国の居住者が勤務に関して取得する給料、賃金その他これらに類する報酬については、その勤務が他方の締約国内で行なわれない限り、当該他方の締約国の租税を免除する。勤務が他方の締約国内で行なわれる場合には、その勤務から生ずる報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2) (1)の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内で行なう勤務に関して取得する報酬については、次のことを条件として、当該他方の締約国の租税を免除する。

(a) その報酬の受領者がその年を通じて合計百八十三日をこえない期間当該他方の締約国内に滞在し、

(b) その報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われ、かつ、

(c) その報酬が当該他方の締約国内に雇用者が有する恒久的施設又は固定的施設により負担されないこと。

(3) (1)及び(2)の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機において行なわれる勤務に関する報酬に対しては、その締約国において租税を課することができる。

第十六条

一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

第十七条

(1) 第十四条及び第十五条の規定にかかわらず、演劇、映画、ラジオ又はテレビジョンの俳優、音楽家等の芸能人及び運動家がこれらの者としての個人的活動により取得する所得に対しては、その活動が行なわれる締約国において租税を課することができる。

(2) この協定のいかなる規定にもかかわらず、(1)の芸能人又は運動家の役務が一方の締約国内において他方の締約国の企業により提供される場合において、その役務を行なう芸能人又は運動家が直接又は間接に当該企業を支配しているときは、その役務の提供により当該企業が取得する利得に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。

第十八条

第十九条の規定を留保して、一方の締約国の居住者に対し過去の勤務につき支払われる退職年金その他これに類する報酬については、他方の締約国の租税を免除する。

第十九条

(1) 過去又は現在の勤務に関し、個人に対して、連邦共和国若しくはその州若しくは地方公共団体が支払い、又は連邦共和国若しくはその州若しくは地方公共団体が設立した基金から支払われる報酬(退職年金を含む。)に対しては、連邦共和国において租税を課することができる。そのような報酬については、その受領者がドイツの国民であるときは、日本国の租税を免除する。

(2) 過去又は現在の勤務に関し、個人に対して、日本国若しくはその地方公共団体が支払い、又は日本国若しくはその地方公共団体の支出に係る基金から支払われる報酬(退職年金を含む。)に対しては、日本国において租税を課することができる。そのような報酬については、その受領者が日本国の国民であるときは、ドイツの租税を免除する。

(3) 一方の締約国又はその州若しくは地方公共団体が利得を得る目的で行なう事業に関連する勤務について支払われる報酬又は退職年金については、第十五条から第十八条までの規定を適用する。

(4) (1)の規定は、ドイツ連邦鉄道及びドイツ連邦郵便が支払う報酬又は退職年金についても、同様に、適用する。

(5) (2)の規定は、日本国有鉄道、日本電信電話公社及び日本専売公社が支払う報酬又は退職年金についても、同様に、適用する。

(6) 敵対行為又は政治的迫害の結果受けた傷害又は損害に対する補償として連邦共和国又はその州若しくは地方公共団体が個人に支払う退職年金その他の年金その他継続的又は一時的な給付については、日本国の租税を免除する。

(7) 引揚者給付金の支給、未帰還者留守家族の援護又は戦傷病者及び戦没者遺族の援護に関する法令に基づいて日本国が個人に支払う継続的又は一時的な給付については、ドイツの租税を免除する。

(8) この条の規定の適用は、第一条の規定によつて制限されることはない。

第二十条

(1) 大学、学校その他の教育機関において教育を行なうため一方の締約国を訪れ、二年をこえない期間一時的に滞在する教授又は教員で、現に他方の締約国の居住者であり、又は訪れる直前に他方の締約国の居住者であつたものは、その教育に関して取得する報酬につき、当該一方の締約国の租税を免除される。

(2) この条の規定の適用は、第一条の規定によつて制限されることはない。

第二十一条

(1) もつぱら教育又は訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者で現に他方の締約国の居住者であり、又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であつたものがその生計、教育又は訓練のため受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、その給付が当該一方の締約国外から支払われるものであることを条件とする。

(2) この条の規定の適用は、第一条の規定によつて制限されることはない。

第二十二条

一方の締約国の居住者の所得で前諸条に規定されていないものについては、他方の締約国の租税を免除する。

第二十二条のA

(1) 第六条(2)に定義する不動産である財産で、一方の締約国の居住者が所有し、かつ、他方の締約国に存在するものに対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2) 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産の一部をなす動産(この条においては、(1)の不動産以外の財産をいう。)又は一方の締約国の居住者が自由職業を行うため他方の締約国において使用することができる固定的施設に係る動産である財産に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(3) 一方の締約国の企業が所有し、かつ、国際運輸に運用する船舶若しくは航空機又はこれらの船舶若しくは航空機の運用に係る動産である財産については、他方の締約国の租税を免除する。

(4) 一方の締約国の居住者が所有するその他のすべての財産については、他方の締約国の租税を免除する。

[改正注記]

第二十三条

(1) 連邦共和国の居住者については、同国における租税は、次のように決定される。

(a) (b)の規定の適用がある場合を除くほか、日本国内の源泉から生ずるいずれかの種類の所得でこの協定に従つて日本国において課税することができるもの(第十六条の報酬にあつては、日本国において課税される場合に限る。)又は日本国に存在するいずれかの種類の財産で日本国において課税することができるものは、ドイツの租税の課税標準から除外する。もつとも、連邦共和国は、税率の決定に当たつて、このように除外された所得又は財産を考慮に入れる権利を保留する。第一文の規定は、配当から生ずる所得については、日本国の居住者である株式会社でその議決権のある株式の少なくとも二十五パーセントが連邦共和国の居住者である資本会社により所有されているものから当該資本会社に支払われる配当についてのみ適用する。また、この(a)の規定に従いドイツの租税の課税標準から配当が除外される場合(配当が支払われたとしたならば当該配当が除外されることとなる場合を含む。)においては、当該配当に係る株式は、ドイツの租税の課税標準から除外する。

(b) 次に掲げる種類の所得について日本国の法令に基づき、かつ、この協定に従つて納付される租税は、外国の租税の控除に関するドイツの租税に関する法令の規定に従い、当該所得につき納付される所得に対するドイツの租税から控除する。

1 第十条(5)にいう配当で、(a)の規定の適用を受けないもの

2 第十一条(5)にいう利子

3 第十二条(3)にいう使用料

4 第十七条(2)の規定の適用を受ける所得

5 第十九条(2)の規定の適用を受ける報酬(退職年金を含む。)で、日本国の国民でない個人が受領するもの

(c) (a)及び(b)の規定は、連邦共和国の居住者である法人が日本国内の源泉から生ずる所得を分配する場合に連邦共和国が法人税の補償的賦課を行うことを妨げるものではない。

(2) この協定の規定に従つて、直接に又は源泉徴収により納付されるドイツの租税は、日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令の規定に従い、日本国の租税から控除される。

[改正注記]

第二十四条

(1) 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、同様の状況にある当該他方の締約国の国民が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件と異なり又はそれよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。

(2) 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行なう当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。

この規定は、一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として自国の居住者に対して認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に対して認めることを義務づけるものと解してはならない。

(3) 一方の締約国の企業で資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者によつて直接又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の類似の他の企業が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件と異なり又はそれよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。

(4) この条において「租税」とは、すべての種類の租税をいう。

(5) この条の規定の適用は、第一条の規定によつて制限されることはない。

第二十五条

(1) 一方の締約国の居住者は、一方又は双方の締約国において執られる措置によりこの協定の規定に適合しない課税を受け又は受けるに至ると認めるときは、両締約国の法令で定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対し、その事件について申立てをすることができる。

(2) その申立てが正当であると認められ、かつ、その権限のある当局が適当な解決を与えることができないときは、その権限のある当局は、この協定の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によつてその事件を解決するように努めるものとする。

(3) 両締約国の権限のある当局は、この協定の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によつて解決するように努めるものとする。両締約国の権限のある当局は、また、この協定に規定されていない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。

(4) 両締約国の権限のある当局は、この協定の規定を実施するため、直接相互に通信することができる。

第二十六条

(1) 両締約国の権限のある当局は、この協定を実施するために必要な情報を交換するものとする。このようにして交換された情報は、秘密として取り扱わなければならず、この協定が適用される租税の賦課及び徴収に関与する者(当局を含む。)以外のいかなる者にも漏らしてはならない。

(2) (1)の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行なう義務を課するものと解してはならない。

(a) 当該一方の締約国若しくは他方の締約国の法令又はその行政上の慣行に抵触する行政上の措置を執ること。

(b) 当該一方の締約国若しくは他方の締約国の法令の下において又はその行政の通常の運営において入手することができない資料を提供すること。

(c) 営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反するような情報を提供すること。

第二十七条

この協定の規定は、国際法の一般原則又は特別の協定の規定に基づく外交官又は領事官の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

第二十八条

この協定は、ドイツ連邦共和国政府がこの協定の効力発生の日から三箇月以内に日本国政府に対して反対の宣言を行なわない限り、ベルリン地区についても、また、適用する。

第二十九条

(1) この協定は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかに東京で交換されるものとする。

(2) この協定は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生じ、かつ、次のものについて適用する。

連邦共和国においては、

 この協定が効力を生ずる日の属する賦課期間及びその後の各賦課期間について課されるドイツの租税

日本国においては、

 この協定が効力を生ずる年の一月一日以後に終了する各課税年度において生ずる所得並びにこの協定が効力を生ずる年度及びその後の各年度について課される固定資産税

第三十条

この協定は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの一方の締約国も、この協定の効力発生の日から五年の期間を経過した後に開始する各年の六月三十日以前に、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面による終了の通告を行なうことができ、その場合には、この協定は、次のものについて効力を失う。

連邦共和国においては、

 終了の通告が行なわれた日の属する賦課期間後の各賦課期間について課されるドイツの租税

日本国においては、

 終了の通告が行なわれた年の翌年の一月一日以後に終了する各課税年度において生ずる所得及び終了の通告が行なわれた年度後の各年度について課される固定資産税

以上の証拠として、下名は、それぞれの政府からこのために正当な委任を受け、この協定に署名した。

千九百六十六年四月二十二日にボンで、日本語、ドイツ語及び英語により、それぞれ二通ずつ、本書六通を作成した。日本語及びドイツ語の本文は、同等の効力を有し、両国語の本文の解釈に相違があるときは、英語の本文による。

日本国のために

内田藤雄

ドイツ連邦共和国のために

カルステンス

ファルク