所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための

日本国政府とフランス共和国政府との間の条約

〔平成八年二月二十八日号外条約第一号・

改正平成十九年十一月二十六日号外条約第六百四十号〕

 

 日本国政府及びフランス共和国政府は、所得に対する租税に関し、二重課税を回避し及び脱税を防止するための条約を締結することを希望して、次のとおり協定した。

 

第一条

この条約は、一方又は双方の締約国の居住者である者に適用する。

第二条

1 この条約は、次の租税について適用する。

(a)  フランスについては、

(@)   所得税

(A)   法人税

(B)   法人概算税

(C)   給与税

(D)   一般社会保障税及び社会保障債務返済税

(これらの租税に係る源泉徴収される租税又は前払税を含む。)

(以下「フランスの租税」という。)

(b)  日本国については、

(@)   所得税

(A)   法人税

(B)   住民税

(以下「日本国の租税」という。)

2 この条約は、1に掲げる租税に加えて又はこれに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって1に掲げる租税と同一であるもの又は実質的に類似するもの(国税であるか地方税であるかを問わない。)についても、適用する。両締約国の権限のある当局は、それぞれの国の税法について行われた実質的な改正を、その改正後の妥当な期間内に、相互に通知する。

第三条

1 この条約の適用上、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

(a)  「フランス」とは、フランス共和国のうちのヨーロッパ県及び海外県(これらの県に係る領海を含む。)並びにこれらの県の外側に位置する区域であって、フランス共和国が国際法に基づき主権的権利を有し、かつ、管轄権を行使する区域を含む。

(b)  「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域(領海を含む。)及びその領域の外側に位置する区域であって、日本国が国際法に基づき主権的権利を有し、かつ、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての区域(海底及びその下を含む。)をいう。

(c)  「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又はフランスをいう。

(d)  「租税」とは、文脈により、日本国の租税又はフランスの租税をいう。

(e)  「者」には、個人、法人及び法人以外の団体を含む。

(f)  「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

(g)  「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。

(h)  「国民」とは、

(@) フランスについては、フランスの国籍を有するすべての個人及びフランスで施行されている法令によりその地位を与えられたすべての法人、組合その他の団体をいう。

(A) 日本国については、日本国の国籍を有するすべての個人並びに日本国の法令に基づいて設立され又は組織されたすべての法人及び法人格を有しないが日本国の租税に関し日本国の法令に基づいて設立され又は組織された法人として取り扱われるすべての団体をいう。

(@) 「国際運輸」とは、一方の締約国の企業が運用する船舶又は航空機による運送(他方の締約国内の地点の間においてのみ運用される船舶又は航空機による運送を除く。)をいう。

(j)  「権限のある当局」とは、次の者をいう。

(@) フランスについては、予算大臣又は権限を与えられたその代理者

(A) 日本国については、財務大臣又は権限を与えられたその代理者

(k)  「企業」は、あらゆる事業の遂行について用いる。

(l)  「事業」には、自由職業その他の独立の性格を有する活動を含む。

2 一方の締約国によるこの条約の適用に際しては、この条約において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令において当該用語がその適用の時点で有する意義を有するものとする。当該一方の締約国において適用される租税に関する法令における当該用語の意義は、当該一方の締約国の他の法令における当該用語の意義に優先するものとする。

第四条

1 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう。ただし、この用語には、当該一方の締約国内に源泉のある所得のみについて当該一方の締約国において課税される者を含まない。

2 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人については、次の原則によるものとする。

(a)  当該個人は、その使用する恒久的住居が存在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居を双方の締約国内に有する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある国)の居住者とみなす。

(b)  その重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又はその使用する恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、その有する常用の住居が所在する締約国の居住者とみなす。

(c)  その常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はこれをいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、自己が国民である締約国の居住者とみなす。

(d)  当該個人が双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意により当該事案を解決する。

3 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する者で個人以外の者については、両締約国の権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その者が居住者であるとみなされる締約国を決定する。

4 この条約の規定に従い一方の締約国が他方の締約国の居住者の所得に対する租税の率を軽減し、又はその租税を免除する場合において、当該他方の締約国において施行されている法令により、当該居住者が、その所得のうち当該他方の締約国に送金され、又は当該他方の締約国内で受領された部分についてのみ当該他方の締約国において租税を課されることとされているときは、その軽減又は免除は、その所得のうち当該他方の締約国に送金され、又は当該他方の締約国内で受領された部分についてのみ適用する。

5 「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国がフランスである場合には、フランスに実質的な事業の管理の場所を有する組合、社団その他これらに類する団体であって、租税を課されるものであり、かつ、当該組合、社団その他これらに類する団体の株主、社員その他の構成員がフランスの租税に関する法令に従い当該組合、社団その他これらに類する団体の利得のうち当該株主、社員その他の構成員の持分に係るものに対しフランスにおいて課税されるものを含む。

6 この条約の適用上、

(a)  一方の締約国において取得される所得であって、

(@) 他方の締約国において組織された団体を通じて取得され、かつ、

(A) 当該他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の受益者、構成員又は参加者の所得として取り扱われるもの

に対しては、当該一方の締約国の租税に関する法令に基づき当該受益者、構成員又は参加者の所得として取り扱われるか否かにかかわらず、当該他方の締約国の居住者である当該受益者、構成員又は参加者(この条約に別に定める要件を満たすものに限る。)の所得として取り扱われる部分についてのみ、この条約の特典(当該受益者、構成員又は参加者が直接に取得したものとした場合に認められる特典に限る。)が与えられる。

(b)  一方の締約国において取得される所得であって、

(@) 他方の締約国において組織された団体を通じて取得され、かつ、

(A) 当該他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の所得として取り扱われるもの

に対しては、当該一方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の所得として取り扱われるか否かにかかわらず、当該団体が当該他方の締約国の居住者であり、かつ、この条約に別に定める要件を満たす場合にのみ、この条約の特典(当該他方の締約国の居住者が取得したものとした場合に認められる特典に限る。)が与えられる。

(c)  一方の締約国において取得される所得であって、

(@) 当該一方の締約国において組織された団体を通じて取得され、

(A) 当該一方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の受益者、構成員又は参加者の所得として取り扱われ、かつ、

(B) 他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の所得として取り扱われるもの

に対しては、この条約の特典は与えられない。

第五条

1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。

2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

(a)  事業の管理の場所

(b)  支店

(c)  事務所

(d)  工場

(e)  作業場

(f)  鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所

3 建築工事現場又は建設若しくは据付けの工事は、十二箇月を超える期間存続する場合に限り、「恒久的施設」とする。

4 1から3までの規定にかかわらず、「恒久的施設」には、次のことは、含まれないものとする。

(a)  企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。

(b)  企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。

(c)  企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。

(d)  企業のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(e)  企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。

(f)  (a)から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。ただし、当該一定の場所におけるこのような組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。

5 1及び2の規定にかかわらず、企業に代わって行動する者(6の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)が、一方の締約国内で、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使する場合には、当該企業は、その者が当該企業のために行うすべての活動について、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされる。ただし、その者の活動が4に掲げる活動(事業を行う一定の場所で行われたとしても、4の規定により当該一定の場所が「恒久的施設」とされない活動)のみである場合は、この限りでない。

6 企業は、通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人を通じて一方の締約国内で事業活動を行っているという理由のみでは、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされない。

7 一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人若しくは他方の締約国内において事業(「恒久的施設」を通じて行われるものであるかないかを問わない。)を行う法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによっては、いずれの一方の法人も、他方の法人の「恒久的施設」とはされない。

第六条

1 不動産から生ずる所得(農業又は林業から生ずる所得を含む。)に対しては、当該不動産が存在する締約国において租税を課することができる。

2 「不動産」の用語は、当該財産が存在する締約国の法令における不動産の意義を有するものとする。不動産には、いかなる場合にも、これに附属する財産、農業又は林業に用いられている家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(金額が確定しているかいないかを問わない。)を受領する権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。

3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他のすべての形式による使用から生ずる所得について適用する。

4 1及び3の規定は、企業の不動産から生ずる所得についても、適用する。

5 一方の締約国に存在する不動産を利用する権利を株主その他の構成員に付与することを目的とする法人の株式その他の持分をある者が所有する場合には、当該者が自己の権利の賃貸その他のすべての形式による使用(当該者自身による占有を除く。)により取得する所得については、次条の規定にかかわらず、当該一方の締約国において租税を課することができる。

第七条

1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 3の規定に従うことを条件として、一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、当該恒久的施設が、同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行い、かつ、当該恒久的施設を有する企業と全く独立の立場で取引を行う別個のかつ分離した企業であるとしたならば当該恒久的施設が取得したとみられる利得が、各締約国において当該恒久的施設に帰せられるものとする。

3 恒久的施設の利得を決定するに当たっては、経営費及び一般管理費を含む費用で当該恒久的施設のために生じたものは、当該恒久的施設が存在する締約国内において生じたものであるか他の場所において生じたものであるかを問わず、損金に算入することを認められる。

4 2の規定は、恒久的施設に帰せられるべき利得を企業の利得の総額の当該企業の各構成部分への配分によって決定する慣行が一方の締約国にある場合には、租税を課されるべき利得をその慣行とされている配分の方法によって当該一方の締約国が決定することを妨げるものではない。ただし、用いられる配分の方法は、当該配分の方法によって得た結果がこの条に定める原則に適合するようなものでなければならない。

5 恒久的施設が企業のために物品又は商品の単なる購入を行ったことを理由としては、いかなる利得も、当該恒久的施設に帰せられることはない。

6 1から5までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によって決定する。ただし、別の方法を用いることにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。

7 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が企業の利得に含まれる場合には、当該他の条の規定は、この条の規定によって影響されることはない。

第八条

1 一方の締約国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 第二条1の規定にかかわらず、一方の締約国の企業は、船舶又は航空機を国際運輸に運用することにつき、フランスの企業である場合には日本国における事業税及び事業所税を免除され、日本国の企業である場合にはフランスにおける職業税及び職業税付加税を免除される。前段に掲げる租税に加えて又はこれに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって前段に掲げる租税と同一であるもの又は実質的に類似するもの(国税であるか地方税であるかを問わない。)についても、同様とする。

3 1及び2の規定は、共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加していることによって取得する利得についても、適用する。

第九条

1 (a)  一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合又は

(b) 同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合であって、そのいずれの場合においても、商業上又は資金上の関係において、双方の企業の間に、独立の企業の間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されているときは、その条件がないとしたならば一方の企業の利得となったとみられる利得であってその条件のために当該一方の企業の利得とならなかったものに対しては、これを当該一方の企業の利得に算入して租税を課することができる。

2 一方の締約国において租税を課された当該一方の締約国の企業の利得を他方の締約国が当該他方の締約国の企業の利得に算入して租税を課する場合において、両締約国の権限のある当局が、協議の上、その算入された利得の全部又は一部が、双方の企業の間に設けられた条件が独立の企業の間に設けられたであろう条件であったとしたならば当該他方の締約国の企業の利得となったとみられる利得であることに合意するときは、当該一方の締約国は、その合意された利得に対して当該一方の締約国において課された租税の額につき適当な調整を行う。この調整に当たっては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払う。

第十条

1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、次の額を超えないものとする。

(a)  当該配当の受益者が、当該配当の支払を受ける者が特定される日をその末日とする六箇月の期間を通じ、次の(@)又は(A)に掲げる株式を直接又は間接に所有する法人である場合には、当該配当の額の五パーセント

(@) 当該配当を支払う法人がフランスの居住者である場合には、当該配当を支払う法人の発行済株式の十パーセント以上に相当する株式

(A) 当該配当を支払う法人が日本国の居住者である場合には、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の十パーセント以上に相当する株式

(b)  その他のすべての場合には、当該配当の額の十パーセント

この2の規定は、当該配当を支払う法人のその配当に充てられる利得に対する課税に影響を及ぼすものではない。

3 2の規定にかかわらず、1の配当に対しては、当該配当の受益者が1の他方の締約国の居住者であり、かつ、次の(a)又は(b)に掲げる法人である場合には、当該配当を支払う法人が居住者とされる一方の締約国においては、租税を課することができない。

(a)  当該配当を支払う法人がフランスの居住者である場合には、当該配当の支払を受ける者が特定される日をその末日とする六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の発行済株式の十五パーセント以上に相当する株式を直接又は間接に所有する法人

(b)  当該配当を支払う法人が日本国の居住者である場合には、当該配当の支払を受ける者が特定される日をその末日とする六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の十五パーセント以上に相当する株式を所有する法人又は当該配当を支払う法人の議決権のある株式の二十五パーセント以上に相当する株式を直接又は間接に所有する法人

4 2(a)及び3(b)の規定は、日本国における課税所得の計算上受益者に対して支払う配当を控除することができる法人によって支払われる配当については、適用しない。

5 この条において、「配当」とは、株式、受益株式、鉱業株式、発起人株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及び当該分配を行う者が居住者とされる締約国の租税に関する法令上株式から生ずる所得と同様に取り扱われるその他の権利から生ずる所得をいう。

6 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である配当の受益者が、当該配当を支払う法人が居住者とされる他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

7 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国から利得又は所得を取得する場合には、当該他方の締約国は、当該法人の支払う配当及び当該法人の留保所得については、これらの配当及び留保所得の全部又は一部が当該他方の締約国内において生じた利得又は所得から成るときにおいても、当該配当(当該他方の締約国の居住者に支払われる配当及び配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該他方の締約国内にある恒久的施設と実質的な関連を有するものである場合の配当を除く。)に対していかなる租税も課することができず、また、当該留保所得に対して租税を課することができない。

8 一方の締約国の居住者が優先株式その他これに類する持分(以下この8において「優先株式等」という。)に関して他方の締約国の居住者から配当の支払を受ける場合において、次の(a)及び(b)に規定する事項に該当する者が当該配当の支払の基因となる優先株式等と同等の当該一方の締約国の居住者の優先株式等を有していないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該配当の支払の基因となる優先株式等の発行を受け、又はこれを所有することはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該配当の受益者とはされない。

(a)  当該他方の締約国の居住者が支払う配当に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

(b)  いずれの締約国の居住者でもないこと。

9 配当の支払の基因となる株式その他の権利の設定又は移転に関与した者がこの条の特典を受けることを当該権利の設定又は移転の主たる目的の全部又は一部とする場合には、当該配当については、この条の規定(8の規定を除く。)を適用しない。

第十一条

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の利子に対しては、当該利子が生じた一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該利子の額の十パーセントを超えないものとする。

3 2の規定にかかわらず、一方の締約国内において生ずる利子であって、次のいずれかの場合に該当するものについては、他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a)  当該利子の受益者が、当該他方の締約国の政府、地方公共団体、中央銀行又は政府が全面的に所有する機関である場合

(b)  当該利子の受益者が当該他方の締約国の居住者であって、当該利子が当該他方の締約国の政府、地方公共団体、中央銀行又は政府が全面的に所有する機関によって保証された債権、これらによって保険の引受けが行われた債権又はこれらによる間接融資に係る債権に関して支払われる場合

(c)  当該利子の受益者が、次のいずれかに該当する当該他方の締約国の居住者である場合

(@) 銀行

(A) 保険会社

(B) 証券会社

(C) (@)から(B)までに掲げる者以外の企業であって、当該利子の支払が行われる課税年度の直前の三課税年度において、その負債の五十パーセントを超える部分が金融市場において発行された債券又は有利子預金から成り、かつ、その資産の五十パーセントを超える部分が当該企業と第九条1(a)又は(b)の規定にいう関係を有しない者に対する信用に係る債権から成るもの

(d)  当該利子の受益者が当該他方の締約国の居住者であって、当該利子が当該他方の締約国の居住者により行われる信用供与による設備又は物品の販売の一環として生ずる債権に関して支払われる場合

4 3の規定の適用上、「中央銀行」及び「政府が全面的に所有する機関」とは、次のものをいう。

(a)  フランスについては、

(@) フランス銀行

(A) フランス政府が資本の全部を所有するその他の機関であって両締約国の政府が外交上の公文の交換により随時合意するもの

(b)  日本国については、

(@) 日本銀行

(A) 国際協力銀行

(B) 独立行政法人日本貿易保険

(C) 日本国政府が資本の全部を所有するその他の機関であって両締約国の政府が外交上の公文の交換により随時合意するもの

5 この条において、「利子」とは、すべての種類の信用に係る債権(担保の有無及び債務者の利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)から生じた所得、特に、公債、債券又は社債から生じた所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)をいう。

6 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である利子の受益者が当該利子の生じた他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該利子の支払の基因となった債権が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

7 利子は、その支払者が一方の締約国、一方の締約国の地方公共団体又は一方の締約国の居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、利子の支払者(いずれかの締約国の居住者であるか否かを問わない。)が、一方の締約国内に恒久的施設を有する場合において、当該利子の支払の基因となった債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、当該利子が当該恒久的施設によって負担されるものであるときは、当該利子は、当該恒久的施設が存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。

8 利子の支払の基因となった債権について考慮した場合において、利子の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該利子の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

9 一方の締約国の居住者がある債権に関して他方の締約国の居住者から利子の支払を受ける場合において、次の(a)及び(b)に規定する事項に該当する者が当該債権と同等の債権を当該一方の締約国の居住者に対して有していないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該利子の支払の基因となる債権を取得することはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該利子の受益者とはされない。

(a)  当該他方の締約国内において生ずる利子に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

(b)  いずれの締約国の居住者でもないこと。

10 利子の支払の基因となる債権の設定又は移転に関与した者がこの条の特典を受けることを当該債権の設定又は移転の主たる目的の全部又は一部とする場合には、当該利子については、この条の規定(9の規定を除く。)を適用しない。

第十二条

1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 この条において、「使用料」とは、文学上、芸術上若しくは学術上の著作物(ソフトウェア、映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領されるすべての種類の支払金をいう。

3 1の規定は、一方の締約国の居住者である使用料の受益者が当該使用料の生じた他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該使用料の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

4 使用料の支払の基因となった使用、権利又は情報について考慮した場合において、使用料の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該使用料の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

5 一方の締約国の居住者がある無体財産権の使用に関して他方の締約国の居住者から使用料の支払を受ける場合において、次の(a)及び(b)に規定する事項に該当する者が当該無体財産権と同一の無体財産権の使用に関して当該一方の締約国の居住者から使用料の支払を受けないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該無体財産権の使用に関して当該他方の締約国の居住者から使用料の支払を受けることはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該使用料の受益者とはされない。

(a)  当該他方の締約国内において生ずる使用料に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

(b)  いずれの締約国の居住者でもないこと。

6 使用料の支払の基因となる権利又は財産の設定又は移転に関与した者がこの条の特典を受けることを当該権利又は財産の設定又は移転の主たる目的の全部又は一部とする場合には、当該使用料については、この条の規定(5の規定を除く。)を適用しない。

第十三条

1 一方の締約国の居住者が第六条に規定する不動産であって他方の締約国内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 (a) 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の株式の譲渡によって取得する収益に対しては、次のことを条件として、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(@) 当該譲渡者が保有し又は所有する株式(当該譲渡者の特殊関係者が保有し又は所有する株式で当該譲渡者が保有し又は所有するものと合算されるものを含む。)の数が、当該課税年度中のいかなる時点においても当該法人の発行済株式の少なくとも二十五パーセントであること。

(A)  当該譲渡者及びその特殊関係者が当該課税年度中に譲渡した株式の総数が、当該法人の発行済株式の少なくとも五パーセントであること。

(b) (a)の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者である法人が企業の組織再編に関連して(a)に規定する株式の譲渡から生ずる収益を取得する場合であって、当該締約国の権限のある当局が、当該組織再編に係る譲渡に関し、当該締約国の税法上課税の繰延べが当該居住者に認められることを証明する証明書を発行するときは、当該収益は当該一方の締約国においてのみ課税される。ただし、この(b)の規定の特典を得ることを主たる目的として行われた取引については、この限りでない。

3 2の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が法人、信託財産その他の機関又は団体の株式その他の権利の譲渡によって取得する収益に対しては、当該法人、信託財産その他の機関又は団体の資産又は財産の価値の五十パーセント以上が、第六条に規定する不動産であって他方の締約国内に存在するもの又は当該不動産に関連する権利により、直接又は一若しくは二以上の他の法人、信託財産、機関若しくは団体を介して間接に構成される場合に限り、当該他方の締約国において租税を課することができる。

4 2及び3の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産を構成する財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(当該恒久的施設の譲渡又は企業全体の譲渡の一部としての当該恒久的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

5 一方の締約国の居住者が国際運輸に運用する船舶又は航空機及びこれらの船舶又は航空機の運用に係る財産(不動産を除く。)の譲渡によって取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

6 1から5までに規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者である締約国においてのみ租税を課することができる。

第十四条 削除〔平成一九年一一月条約一八号〕

第十五条

1 次条及び第十八条から第二十一条までの規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務から生ずる報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに掲げることを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a)  当該課税年度において開始し、又は終了するいずれの十二箇月の期間においても、報酬の受領者が当該他方の締約国内に滞在する期間が合計百八十三日を超えないこと。

(b)  報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。

(c)  報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設によって負担されるものでないこと。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機内において行われる勤務に係る報酬に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。

 

 

第十六条

 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

第十七条

1 (a) 第七条及び第十五条の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者である個人が演劇、映画、ラジオ若しくはテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人又は運動家として他方の締約国内で行う個人的活動によって取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(b) もっとも、そのような活動がいずれかの締約国若しくはいずれかの締約国の地方公共団体の公的資金又はいずれかの締約国の特別の法人若しくは非営利団体の資金により実質的に賄われる場合には、当該所得については、当該他方の締約国において租税を免除する。

2 (a) 一方の締約国内で行う芸能人又は運動家としての個人的活動に関する所得が当該芸能人又は運動家以外の者に帰属する場合には、当該所得に対しては、第七条及び第十五条の規定にかかわらず、当該芸能人又は運動家の活動が行われる当該一方の締約国において租税を課することができる。

(b) もっとも、そのような活動がいずれかの締約国若しくはいずれかの締約国の地方公共団体の公的資金又はいずれかの締約国の特別の法人若しくは非営利団体の資金により実質的に賄われる場合には、当該所得については、当該一方の締約国において租税を免除する。

第十八条

1 次条2の規定が適用される場合を除くほか、過去の勤務につき一方の締約国の居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 (a) 一方の締約国において設けられ、かつ、課税上認められた社会保障制度に対し、他方の締約国内において役務を提供する当該他方の締約国の居住者である個人又は当該個人に代わる者が支払う強制保険料(当該個人が役務の提供を開始する日から継続して六十箇月を超えない期間に支払われるものに限る。)については、次の(@)から(B)までに掲げる要件を満たす場合に限り、当該他方の締約国における当該個人の租税の額の決定に際して、当該一方の締約国において課税上の救済の対象とされない範囲内で、当該他方の締約国において課税上認められた社会保障制度に対して支払われる強制保険料と同様の方法並びに類似の条件及び制限に従って取り扱う。

(@) 当該個人が、当該他方の締約国において役務の提供を開始する直前において、当該他方の締約国の居住者でなく、かつ、当該一方の締約国において設けられた社会保障制度に参加していたこと。

(A) 当該一方の締約国において設けられた社会保障制度が、当該他方の締約国において課税上認められた社会保障制度に一般的に相当するものとして当該他方の締約国の権限のある当局によって承認されていること。

(B) 給料、賃金その他これらに類する報酬(当該一方の締約国において設けられた社会保障制度に対する強制保険料が賦課されるものに限る。)が、当該他方の締約国において租税を課されること。

(b) (a)の規定の適用上、

(@) 「社会保障制度」とは、個人が(a)の規定にいう役務について社会保障給付を受けるために参加する制度をいう。

(A) 社会保障制度に対して支払う強制保険料が一方の締約国において課税上の救済の対象とされるときは、当該社会保障制度は、当該一方の締約国において「課税上認められた」こととなる。

第十九条

1 (a) 公務の遂行として一方の締約国又は当該一方の締約国の地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し当該一方の締約国又は当該一方の締約国の地方公共団体によって支払われる報酬(退職年金を除く。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(b) もっとも、当該役務が他方の締約国内において提供され、かつ、(a)の個人が次の(@)又は(A)に該当する当該他方の締約国の居住者である場合には、その報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(@) 当該他方の締約国の国民

(A) 専ら当該役務を提供するため当該他方の締約国の居住者となった者でないもの

2 (a)  一方の締約国又は当該一方の締約国の地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し、当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方公共団体によって支払われ、又は当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方公共団体が拠出した基金から支払われる退職年金に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(b) もっとも、(a)の個人が他方の締約国の居住者であり、かつ、当該他方の締約国の国民である場合には、その退職年金に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

3 一方の締約国又は当該一方の締約国の地方公共団体の行う事業に関連して提供される役務につき支払われる報酬及び退職年金については、第十五条から前条までの規定を適用する。

第二十条

1 専ら教育又は訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付については、当該一方の締約国において租税を課さない。ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものである場合に限る。

2 政府又は宗教、慈善、学術、文芸若しくは教育の団体から支払われる主として勉学又は研究のための交付金、手当又は奨励金の受領者として、二年を超えない期間一方の締約国内に一時的に滞在する個人であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものは、当該交付金、手当又は奨励金について、当該一方の締約国において租税を免除される。

3 他方の締約国の企業若しくは2に掲げる団体の使用人として又はこれらの企業若しくは団体との契約に基づき、専らこれらの企業若しくは団体以外の者から技術上、職業上又は事業上の経験を習得するため、一年を超えない期間一方の締約国内に一時的に滞在する個人であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものは、自己の生計のための当該他方の締約国からの送金について、当該一方の締約国において租税を免除される。

第二十条のA

 この条約の他の規定にかかわらず、匿名組合契約その他これに類する契約に関連して匿名組合員が取得する所得又は収益に対しては、当該所得又は収益が生ずる締約国において当該締約国の法令に従って租税を課することができる。

第二十一条

1 一方の締約国内にある大学、学校その他の公認された教育機関において教育又は研究を行うため当該一方の締約国を訪れ、二年を超えない期間滞在する個人であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものは、その教育又は研究に係る報酬でその者が当該他方の締約国において租税を課されるものにつき、当該他方の締約国においてのみ租税を課される。

2 1の規定は、主として特定の者の私的利益のために行われる研究から生ずる所得については、適用しない

第二十二条

1 一方の締約国の居住者が受益者である所得(源泉地を問わない。)であって前各条に規定がないもの(以下この条において「その他の所得」という。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 1の規定は、一方の締約国の居住者である所得(第六条2に規定する不動産から生ずる所得を除く。)の受益者が他方の締約国内において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行う場合において、当該所得の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設と実質的な関連を有するものであるときは、当該所得については、適用しない。この場合には、第七条の規定を適用する。

3 1に規定する一方の締約国の居住者とその他の者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、その他の所得の額が、その関係がないとしたならば当該一方の締約国の居住者及び当該その他の者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、当該その他の所得の額のうちその超過する部分に対しては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上で、各締約国の法令に従って租税を課することができる。

4 一方の締約国の居住者がある権利又は財産に関して他方の締約国の居住者からその他の所得の支払を受ける場合において、次の(a)及び(b)に規定する事項に該当する者が当該権利又は財産と同一の権利又は財産に関して当該一方の締約国の居住者からその他の所得の支払を受けないとしたならば、当該一方の締約国の居住者が当該権利又は財産に関して当該他方の締約国の居住者からその他の所得の支払を受けることはなかったであろうと認められるときは、当該一方の締約国の居住者は、当該その他の所得の受益者とはされない。

(a)  当該他方の締約国内において生ずるその他の所得に関し、当該一方の締約国の居住者に対してこの条約により認められる特典と同等の又はそのような特典よりも有利な特典を受ける権利を有しないこと。

(b)  いずれの締約国の居住者でもないこと。

5 その他の所得の支払の基因となる権利又は財産の設定又は移転に関与した者がこの条の特典を受けることを当該権利又は財産の設定又は移転の主たる目的の全部又は一部とする場合には、当該その他の所得については、この条の規定(4の規定を除く。)を適用しない。

第二十二条のA

1 一方の締約国の居住者であって他方の締約国において第七条、第十条3、第十一条3、第十二条、第十三条又は前条に定める所得を取得するものは、2に規定する適格者に該当し、かつ、これらの規定により認められる特典を受けるためにこれらの規定に規定する要件を満たす場合に限り、各課税年度において、これらの規定により認められる特典を受ける権利を有する。ただし、これらの規定により認められる特典を受けることに関し、この条に別段の定めがある場合は、この限りでない。

2 一方の締約国の居住者が次の(a)から(d)までに掲げる者のいずれかに該当する場合には、当該一方の締約国の居住者は、各課税年度において適格者とする。

(a)  個人

(b)  適格政府機関

(c)  法人(その主たる種類の株式が、7(c)(@)又は(A)に規定する公認の有価証券市場に上場され又は登録され、かつ、一又は二以上の公認の有価証券市場において通常取引されるものに限る。)

(d)  個人以外の者((a)から(c)までに掲げる適格者であるいずれかの締約国の居住者が、発行済株式その他の受益に関する持分の五十パーセント以上に相当する株式その他の受益に関する持分又は議決権の五十パーセント以上に相当する株式その他の受益に関する持分を直接又は間接に所有する場合に限る。)

3 一方の締約国の居住者である法人は、適格者に該当しない場合においても、他方の締約国において取得する第七条、第十条3、第十一条3、第十二条、第十三条又は前条に定める所得に関し、七以下の同等受益者が当該法人の発行済株式又は議決権の七十五パーセント以上に相当する株式を直接又は間接に所有し、かつ、当該法人がこれらの規定により認められる特典を受けるためにこれらの規定に規定する要件を満たすときは、これらの規定により認められる特典を受ける権利を有する。

4 2(d)又は3の規定の適用については、次に定めるところによる。

(a)  源泉徴収による課税については、一方の締約国の居住者は、その所得の支払が行われる日(配当については、当該配当の支払を受ける者が特定される日)に先立つ十二箇月の期間を通じて2(d)又は3に規定する要件を満たしているときに、当該支払が行われる課税年度について当該要件を満たすものとする。

(b)  その他のすべての場合については、一方の締約国の居住者は、その所得の支払が行われる課税年度の総日数の半数以上の日において2(d)又は3に規定する要件を満たしているときに、当該支払が行われる課税年度について当該要件を満たすものとする。

5 (a) 一方の締約国の居住者は、適格者に該当しない場合においても、他方の締約国において取得する第七条、第十条3、第十一条3、第十二条、第十三条又は前条に定める所得に関し、当該居住者が当該一方の締約国内において事業を行っており、当該所得が当該事業に関連し又は付随して取得されるものであり、かつ、当該居住者がこれらの規定により認められる特典を受けるためにこれらの規定に規定する要件を満たすときは、これらの規定により認められる特典を受ける権利を有する。ただし、当該事業が、当該居住者が自己の勘定のために投資を行い、又は管理するもの(銀行、保険会社又は証券会社が行う銀行業、保険業又は証券業を除く。)である場合は、この限りでない。

(b) 一方の締約国の居住者が、他方の締約国内において行う事業から所得を取得する場合又は当該居住者と第九条1(a)若しくは(b)の規定にいう関係を有する者から他方の締約国内において生ずる所得を取得する場合には、当該居住者が当該一方の締約国内において行う事業が、当該居住者又は当該関係を有する者が当該他方の締約国内において行う事業との関係において実質的なものでなければ、当該所得について(a)に規定する条件を満たすこととはならない。この(b)の規定の適用上、事業が実質的なものであるか否かは、すべての事実及び状況に基づいて判断される。

(c) (a)の規定に基づきある者が一方の締約国内において事業を行っているか否かを決定するに当たって、その者が組合員である組合が行う事業及びその者に関連する者が行う事業は、その者が行うものとみなす。一方の者が他方の者の受益に関する持分の五十パーセント以上(法人の場合には、当該法人の発行済株式又は議決権の五十パーセント以上に相当する株式)を所有する場合又は第三者がそれぞれの者の受益に関する持分の五十パーセント以上(法人の場合には、当該法人の発行済株式又は議決権の五十パーセント以上に相当する株式)を直接又は間接に所有する場合には、当該一方の者及び当該他方の者は、関連するものとする。また、すべての事実及び状況に基づいて、一方の者が他方の者を支配している場合又は両者が一若しくは二以上の同一の者によって支配されている場合には、当該一方の者及び当該他方の者は、関連するものとする。

6 一方の締約国の居住者は、適格者に該当せず、かつ、3及び5の規定に基づき第七条、第十条3、第十一条3、第十二条、第十三条又は前条に定める所得についてこれらの規定により認められる特典を受ける権利を有する場合に該当しないときにおいても、他方の締約国の権限のある当局が、当該他方の締約国の法令又は行政上の慣行により、当該居住者の設立、取得又は維持及びその業務の遂行がこれらの規定により認められる特典を受けることをその主たる目的の一つとするものでないと認定するときは、これらの規定により認められる特典を受けることができる。

7 この条の規定の適用上、

(a)  「適格政府機関」とは、一方の締約国の政府若しくは地方公共団体、日本銀行、フランス銀行又は一方の締約国の政府若しくは地方公共団体が直接若しくは間接に全面的に所有する者をいう。

(b)  「主たる種類の株式」とは、法人の発行済株式又は議決権の過半数を占める普通株式をいう。ただし、普通株式が単独で法人の発行済株式又は議決権の過半数を占めていない場合には、合計して当該法人の発行済株式又は議決権の過半数を占める二以上の種類の株式をいう。

(c)  「公認の有価証券市場」とは、次のものをいう。

(@) フランスにおける金融市場庁により規制される有価証券市場

(A) 日本国の金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)に基づき設立された金融商品取引所又は認可金融商品取引業協会により設立された有価証券市場

(B) 欧州連合における有価証券市場、ニューヨーク証券取引所及びナスダック市場

(C) この条の規定の適用上、両締約国の権限のある当局が公認の有価証券市場として合意するもの

(d)  「同等受益者」とは、次の(@)又は(A)のいずれかの者をいう。

(@) この条約の特典を請求される締約国との間に租税に関する二重課税の回避のための条約(以下「租税条約」という。)を有している国の居住者であって、次の(aa)から(cc)までに掲げる要件を満たすもの

(aa)  租税条約が実効的な情報交換に関する規定を有すること。

(bb)  当該居住者が、租税条約のいわゆる特典条項に基づき適格者に該当すること又は租税条約にそのような規定がない場合には、租税条約に2の規定に相当する規定が含まれているとしたならば、当該居住者がその規定により適格者に該当するであろうとみられること。

(cc)  第七条、第十条3、第十一条3、第十二条、第十三条又は前条に定める所得に関し、当該居住者が、この条約に基づき特典を請求しているこれらの規定に定める種類の所得について租税条約の適用を受けたとしたならば、この条約に規定する税率以下の税率の適用を受けるであろうとみられること(租税条約に規定する要件がこの条約に規定する要件よりも制限的でない場合に限る。)。

(A) 2(a)から(c)までに掲げる適格者

第二十三条

1 (a)フランスについては、二重課税は、次の方法によって回避する。

日本国において生ずる所得であってこの条約の規定に従って日本国において租税を課することができるもの又は日本国においてのみ租税を課することができるものについては、当該所得の受益者がフランスの居住者であり、かつ、当該所得がフランスの法令上法人税の免除の対象とされない場合には、フランスの租税の計算上考慮に入れるものとする。この場合において、日本国の租税は、当該所得から控除することはできないものとするが、当該受益者は、これをフランスの租税から控除する権利を有する。当該控除の額は、次の額に等しいものとする。

(@) (A)に規定する所得以外のものについては、当該所得に帰せられるフランスの租税の額

(A) 第十条、第十一条、第十三条1から3まで、第十五条3、第十六条及び第十七条に規定する所得については、この条約の規定に従って日本国において納付された租税の額(当該控除の額は、当該所得に帰せられるフランスの租税の額を超えないものとする。)

(b)  (a)に規定する「フランスの租税」には、第二条1(a)の規定にかかわらず、フランスのために課されるすべての租税を含む(総所得に対して課されるものであるか所得の要素について課されるものであるかを問わず、動産又は不動産の譲渡から生ずる収益に対する租税を含む。)

(c)  (a)の規定にかかわらず、第二十条のAに規定する所得又は収益については、租税からの控除は認められない。

2 日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令に従い、

(a)  日本国の居住者がこの条約の規定に従ってフランスにおいて租税を課される所得をフランスにおいて取得する場合には、当該所得について納付されるフランスの租税の額は、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除する。ただし、控除の額は、日本国の租税の額のうち当該所得に対応する部分を超えないものとする。

(b)  フランスにおいて取得される所得が、フランスの居住者である法人により、その議決権のある株式又はその発行済株式の少なくとも十五パーセントを所有する日本国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には、日本国の租税からの控除を行うに当たり、当該配当を支払う法人によりその所得について納付されるフランスの租税を考慮に入れるものとする。

第二十四条

1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、特に居住者であるかないかに関して同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。この1の規定は、第一条の規定にかかわらず、締約国の居住者でない者にも、適用する。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行う当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。この2の規定は、一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として自国の居住者に認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に認めることを義務付けるものと解してはならない。

3 第九条1、第十条8若しくは9、第十一条8から10まで、第十二条4から6まで又は第二十二条3から5までの規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者に支払った利子、使用料その他の支払金については、当該一方の締約国の居住者の課税対象利得の決定に当たって、当該一方の締約国の居住者に支払われたとした場合における条件と同様の条件で控除するものとする。

4 一方の締約国の企業であってその資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者により直接又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の類似の他の企業に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。

5 この条の規定は、第二条の規定にかかわらず、すべての種類の税に適用する。

第二十五条

1 いずれか一方の又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合しない課税を受けたと又は受けることになると認める者は、当該事案について、当該いずれか一方の又は双方の締約国の法令に定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対して又は当該事案が前条1の規定の適用に関するものである場合には自己が国民である締約国の権限のある当局に対して、申立てをすることができる。当該申立ては、この条約の規定に適合しない課税に係る当該措置の最初の通知の日から三年以内に、しなければならない。

2 権限のある当局は、1の申立てを正当と認めるが、満足すべき解決を与えることができない場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によって当該事案を解決するよう努める。成立したすべての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない。

3 両締約国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によって解決するよう努める。両締約国の権限のある当局は、また、この条約に定めのない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。

4 両締約国の権限のある当局は、2及び3の合意に達するため、直接相互に通信することができる。

第二十六条

1 両締約国の権限のある当局は、この条約の規定の実施又は両締約国若しくは地方公共団体が課するすべての種類の租税に関する両締約国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)の規定の運用若しくは執行に関連する情報を交換する。これらの情報の交換は、第一条及び第二条の規定による制限を受けない。

2 1の規定に基づき一方の締約国が受領した情報は、当該一方の締約国がその法令に基づいて入手した情報と同様に秘密として取り扱うものとし、1に規定する租税の賦課若しくは徴収、これらの租税に関する執行若しくは訴追、これらの租税に関する不服申立てについての決定又はこれらの監督に関与する者又は当局(裁判所及び行政機関を含む。)に対してのみ、開示される。これらの者又は当局は、当該情報をそのような目的のためにのみ使用する。これらの者又は当局は、当該情報を公開の法廷における審理又は司法上の決定において開示することができる。

3 1及び2の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。

(a)  当該一方の締約国又は他方の締約国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。

(b)  当該一方の締約国又は他方の締約国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。

(c)  営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反することになる情報を提供すること。

4 一方の締約国は、他方の締約国がこの条の規定に従って当該一方の締約国に対し情報の提供を要請する場合には、自己の課税目的のために必要でないときであっても、当該情報を入手するために必要な手段を講ずる。一方の締約国がこのような手段を講ずるに当たっては、3の規定に定める制限に従うが、その制限は、いかなる場合にも、当該情報が自己の課税目的のために必要でないことのみを理由としてその提供を拒否することを認めるものと解してはならない。

5 3の規定は、提供を要請された情報が銀行その他の金融機関、名義人若しくは代理人若しくは受託者が有する情報又はある者の所有に関する情報であることのみを理由として、一方の締約国が情報の提供を拒否することを認めるものと解してはならない。

第二十七条

1 各締約国は、この条約に基づいて他方の締約国の認める租税の免除又は税率の軽減が、このような特典を受ける権利を有しない者によって享受されることのないようにするため、当該他方の締約国が課する租税を徴収するよう努める。その徴収を行う締約国は、このようにして徴収された金額につき当該他方の締約国に対して責任を負う。

2 1の規定は、いかなる場合にも、租税を徴収するよう努めるいずれの締約国に対しても、当該締約国の法令及び行政上の慣行に抵触し、又は当該締約国の公の秩序に反することになる行政上の措置をとる義務を課するものと解してはならない。

第二十八条

 この条約のいかなる規定も、国際法の一般原則又は特別の協定に基づく外交官又は領事官の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

第二十九条

 一方の締約国の公認投資基金に参加する者が、当該基金の取得する配当又は利子の受益者として、第十条又は第十一条の規定により認められる特典を受ける権利を有する場合には、フランスについては当該基金の運用者が、日本国については当該基金の受託者が、当該基金のうち当該特典を受ける権利を有する者によって保有される部分に対応する額を限度として、当該特典の請求を行うことができる。他方の締約国は、当該請求の全部又は一部を承認するに当たって、当該一方の締約国と協議した後、当該基金に参加する者のうち当該特典を受ける権利を有しない者に対して当該特典を認めることを排除するため適当と認める条件を課することができる。当該請求の承認は、当該基金に参加する者が第十条又は第十一条の規定により受ける権利を有しない特典に係る租税又は支払若しくは還付について、当該他方の締約国が追徴し又は返還を請求する権利を害するものではない。

第三十条

1 この条約は、両締約国のそれぞれの憲法に従って承認されなければならない。この条約は、それぞれの締約国において憲法上の要件が満たされたことを確認する通告の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。

2 この条約は、次のものについて適用する。

(a)  フランスにおいては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A) 源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各暦年又は各事業年度に関する所得

(B) その他の租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に生ずる課税事象に係る課税

(b)  日本国においては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A) 源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(B) その他の租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の租税

3 千九百六十四年十一月二十七日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約(千九百八十一年三月十日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書による改正を含む。)は、2の規定に従ってこの条約が適用される租税につき、終了し、かつ、適用されなくなる。

第三十一条

 この条約は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後に開始する各暦年の六月三十日以前に、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面による終了の通告を行うことができる。この場合には、この条約は、次のものについて効力を失う。

(a)  フランスにおいては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A) 源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各暦年又は各事業年度に関する所得

(B) その他の租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に生ずる課税事象に係る課税

(b)  日本国においては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A) 源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(B) その他の租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の租税

 

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

 

 千九百九十五年三月三日にパリで、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。

 

日本国政府のために

松浦晃一郎

 

フランス共和国政府のために

マリアニ


議定書

 

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約(以下「条約」という。)の署名に当たり、下名は、条約の不可分の一部を成す次の規定を協定した。

 

1から3まで 削除

4 条約第九条に関し、両締約国の権限のある当局は、同条2に規定する調整が行われる場合において、当該調整の結果還付される額に対し利子が支払われないときは、同条1の規定に基づく課税の結果生ずる不足額に対し自国の法令に基づいて課される利子を免除することにつき合意することができることが了解される。

5 削除

5A 条約第十条5に関し、「配当」には、分配を行う法人が居住者である締約国の租税に関する法令上、利益の分配として取り扱われる所得を含むことが了解される。

6 削除

6A 条約第十条及び第十一条に関し、次に規定する事項が了解される。

(a)  条約のその他の規定にかかわらず、年金基金(その直前の課税年度の終了の日において、その受益者、構成員又は参加者のうち五十パーセントを超える者がいずれかの締約国の居住者である個人であるものに限る。)は、第十条及び第十一条の特典を受ける権利を有する。もっとも、第十一条3の特典については、当該年金基金が直接又は間接に事業を遂行することにより取得されたものでない場合に限り、認められる。

(b)  「年金基金」とは、次の(@)から(B)までに掲げる要件を満たす者をいう。

(@) 一方の締約国の法令に基づいて設立されること。

(A) 主として退職年金、退職手当その他これらに類する報酬を管理し、若しくは給付すること又は他の年金基金の利益のために所得を取得することを目的として運営されること。

(B) (A)の規定にいう活動に関して取得する所得又は収益につき当該一方の締約国において租税を免除されること。

7 条約第十一条3に関し、同条3の規定にかかわらず、「保険の引受けが行われた債権」には、千九百九十四年五月十四日のフランス共和国政令第九十四―三百七十六号の規定に基づきフランス共和国政府に代わってフランス貿易保険会社によって保険の引受けが行われた債権を含むことが了解される。

8 削除

9 条約第十七条に関し、「特別の法人」には、日本国については、国際交流基金を含むことが了解される。

9A 条約第十五条及び第十八条2に関し、フランスの居住者(日本国内において勤務を開始する直前にフランスの社会保障制度に参加していたものに限る。)が日本国内における勤務につき取得する給料、賃金その他これらに類する報酬(当該居住者が日本国内において勤務を開始する日から継続して六十箇月を超えない期間に取得するものに限る。)に対しては、各課税年度において次の(a)又は(b)に規定する額のいずれか低い額を限度として、日本国においては、租税を課さない。

(a)  当該居住者又は当該居住者に代わる者がいずれかの締約国において設けられ、かつ、課税上認められた社会保障制度に対して支払う強制保険料(当該給料、賃金その他これらに類する報酬に対して賦課されるもので、かつ、フランスにおいて課税上の救済の対象とされないものに限る。)の総額

(b)  日本国において設けられ、かつ、課税上認められた社会保障制度に対して支払われ得る総保険料の上限額

9B 条約第十八条2及び9Aに関し、「継続して六十箇月」との期間の限定は、二千五年二月二十五日にパリで署名された社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定第九条が適用される場合には、適用しないことが了解される。

9C 条約第十八条2(a)(A)及び9Aに関し、これらの規定に定める「社会保障制度」とは、二千五年二月二十五日にパリで署名された社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の適用対象となる制度をいうことが了解される。

10 条約第十九条に関し、次のことが了解される。

(a)  同条の規定は、一方の締約国の政府が自己の所有する機関(専ら公務を遂行するものに限る。)を通じて支払う報酬についても適用する。ただし、当該報酬が、当該一方の締約国において租税を課される場合に限る。

(b)  同条1(b)(A)の規定は、他方の締約国に滞在する直前に一方の締約国の公務員又は当該一方の締約国の地方公共団体の公務員であった個人には適用しない。

10A 条約第二十条のAに関し、「その他これに類する契約」に関連していずれかの締約国の居住者である組合員が取得する所得又は収益は、日本国の所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第百六十一条第十二号又は法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第百三十八条第十一号に規定する匿名組合契約に関連して匿名組合員が取得する所得又は収益と課税上同様に取り扱われるものであることが了解される。

10B 条約第二十二条のA7(d)に関し、条約第十条3の規定の適用上、同条3の特典を請求する法人の株式を直接又は間接に所有する者が同等受益者であるか否かを決定するに当たっては、その者は、当該特典を請求する法人が所有する同条に規定する配当を支払う法人の発行済株式又は当該法人の発行する議決権のある株式と同数の株式を所有するものとみなされることが了解される。

11 条約第二十三条1に関し、次のことが了解される。

(a)  同条1(a)(@)及び(a)(A)に規定する「当該所得に帰せられるフランスの租税の額」とは、次のものをいう。

(@) 当該所得に対する租税が比例税率を適用して計算される場合には、純所得の額に当該純所得に対して実際に適用される税率を乗じて計算した租税の額

(A) 当該所得に対する租税が累進税率を適用して計算される場合には、フランスの法令上租税を課される純所得の総額について納付されるべき租税が当該総額に占める割合に等しい率を当該所得に係る純所得の額に乗じて計算した租税の額

(b)  同条1(a)(A)に規定する「日本国において納付された租税の額」とは、この条約の規定に従って、当該所得の受益者であるフランスの居住者が実質的かつ最終的に負担する日本国の租税の額をいう。

12 条約第二十三条2に関し、「日本国の法令に従い」とは、同条2に規定する控除の適用方法が日本国の法令に従って定められることをいう。

13 条約第二十四条1に関し、一方の締約国の居住者である個人、法人、組合その他の団体は、当該締約国の居住者ではない個人、法人、組合その他の団体とは同様の状況にないことが了解される。この13の規定は、フランスについては、法人、組合その他の団体が、第三条1(h)の規定の適用上、それらが居住者である締約国の国民とみなされる場合であっても、適用する。

13A 条約第二十五条3に関し、

(a)  第三国において組織された団体を通じていずれかの締約国から取得される所得であって、

(b) 一方の締約国の租税に関する法令に基づき当該第三国において組織された団体の所得として取り扱われ、かつ、

(c)  他方の締約国の租税に関する法令に基づき当該団体の受益者、構成員又は参加者の所得として取り扱われるもの

   について、両締約国における課税上の取扱いが異なる結果として二重課税が生ずる場合には、その事案は、相互協議手続の対象とされることが了解される。

13B 条約第二十六条5の規定は、弁護士その他の法律事務代理人がその職務に関してその依頼者との間で行う通信に関する情報であって一方の締約国の法令に基づいて保護されるものについて、当該一方の締約国がその提供を拒否することを認めるものであることが了解される。

14 条約第二十八条に関し、次のことが了解される。

(a)  第四条の規定にかかわらず、一方の締約国の外交官又は領事官であって他方の締約国又は第三国に滞在する者は、その者が当該一方の締約国においてその総所得に対して当該一方の締約国の居住者と同様の納税義務を負う場合には、条約の適用上当該一方の締約国の居住者とみなす。

(b)  条約は、国際機関、その下部機関又は職員及び第三国の外交使節団又は領事官の構成員であって、一方の締約国に所在し、かつ、いずれの締約国においてもその総所得に対して当該締約国の居住者と同様の納税義務を負わない者には、適用しない。

15 条約第二十九条に関し、次のことが了解される。

(a)  「一方の締約国の公認投資基金」とは、次のものをいう。

(@) 当該一方の締約国がフランスである場合には、千九百八十八年十二月二十三日の法律第八十八―千二百一号に定義する投資共同基金及び可変資本投資会社。ただし、これらの規定が、条約の署名の日に有効であり、かつ、当該署名の日以後改正されていないか又はその改正がその基本的性格に影響を及ぼさない程度の軽微な点についてのみのものである場合に限る。

(A) 当該一方の締約国が日本国である場合には、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第三項及び第二十八項に定義する投資信託及び外国投資信託、貸付信託法(昭和二十七年法律第百九十五号)第二条第一項に定義する貸付信託、所得税法第二条第一項第十一号に定義する合同運用信託並びに資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第十三項に定義する特定目的信託を含む。ただし、これらの規定が、署名の日に有効であり、かつ、当該署名の日以後改正されていないか又はその改正がその基本的性格に影響を及ぼさない程度の軽微な点についてのみのものである場合に限る。

(B) その他(@)及び(A)に規定する投資基金に類似する投資基金で両締約国の政府が外交上の公文の交換により合意するもの

(b)  同条の規定に従い、一方の締約国の公認投資基金の受託者又は運用者により、第十条又は第十一条の規定に基づいて認められる軽減された税率その他の特典の請求が行われた場合には、当該請求を受けた他方の締約国の権限のある当局は、当該基金に参加している者が当該一方の締約国の居住者であるかないかに関する情報を提出するよう当該受託者又は運用者に要求することができる。

16(a) フランスの国内法令がフランスの居住者である法人に対し、連結方式により日本国の居住者である子会社又は日本国にある恒久的施設の利得又は損失を含めてその課税所得を決定することを認めている場合には、条約の規定は、当該法令の適用を妨げるものではない。ただし、フランスの居住者の課税所得に含められる当該子会社又は恒久的施設の所得について納付された日本国の租税が、フランスの国内法令に従って、当該居住者に対して課されるフランスの租税から控除される場合に限る。

(b)  フランスの国内法令に従い、フランスがフランスの居住者の課税所得を決定するに当たって、日本国の居住者である子会社又は日本国にある恒久的施設の損失を控除し、かつ、控除される損失の額を限度として当該子会社又は恒久的施設の利得を含める場合には、条約の規定は、当該法令の適用を妨げるものではない。

17(a) 過少資本に関するフランス統一税法第二百十二条の規定又はこれを修正し若しくはこれに代わる類似の規定は、これらの規定の適用が条約第九条1に定める原則に合致する限りにおいて、適用することができることが了解される。

(b)  条約のいかなる規定も、フランスがフランス統一税法第二百九B条の規定又はこれを修正し若しくはこれに代わる実質的に類似する規定を適用することを妨げるものではない。

18 フランスの権限のある当局は、フランスによる条約の実施に関する手続及び書類を決定することができることが了解される。

19 条約の適用上、一方の締約国の権限のある当局は、他方の締約国の権限のある当局と協議した後、条約に規定する特典の適用を申請している者に対し、その者が当該他方の締約国の居住者であることを証明する当該他方の権限のある当局又は適当な当局の発行する証明書を要求することができることが了解される。

 

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

 

 千九百九十五年三月三日にパリで、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。

 

日本国政府のために

松浦晃一郎

 

フランス共和国政府のために

マリアニ

(右条約の仏文)〔省略〕

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書(抄)

平成十九年十一月二十六日条約第十八号

 

 日本国政府及びフランス共和国政府は、千九百九十五年三月三日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約(以下「条約」という。)及び条約の不可分の一部を成す千九百九十五年三月三日にパリで署名された議定書(以下「千九百九十五年議定書」という。)を改正することを希望して、次のとおり協定した。

 

第一条〜第二十条 〔略〕

第二十一条

1 各締約国は、この議定書の効力発生のために自国において必要とされる憲法上の手続が完了したことを、他方の締約国に対して通告するものとする。この議定書は、遅い方の通告が受領された月の後二箇月目の月の初日に効力を生ずる。

〔平成一九年一一月外務告六三九号により、平成一九・一二・一から発効〕

2 この議定書は、次のものについて適用する。

(a)  フランスにおいては、

(@) 源泉徴収される所得に対する租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A) 源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各暦年又は各事業年度に関する所得

(B) その他の租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に生ずる課税事象に係る課税

(b)  日本国においては、

(@) 源泉徴収される租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に租税を課される額

(A) 源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得

(B) その他の租税に関しては、この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の租税

3 この議定書は、条約が有効である限り効力を有する。

 

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

二千七年一月十一日にパリで、ひとしく正文である日本語及びフランス語により本書二通を作成した。

 

日本国政府のために

飯村豊

 

フランス共和国政府のために

J・F・コペ

 

 

 

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約の効力の発生

〔平成八年二月二十八日号外外務省告示第九十号〕

 

 平成七年三月三日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約についてそれぞれの締約国において憲法上の要件が満たされたことを確認する通告の交換は、平成八年二月二十三日にパリで行われた。よって、同条約は、その第三十条1の規定に従い、平成八年三月二十四日に効力を生ずる。

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書の効力発生

〔平成十九年十一月二十六日号外外務省告示第六百三十九号〕

 

 平成十九年一月十一日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書について、我が国政府は、同議定書の効力発生に必要な憲法上の手続が完了した旨の通告を平成十九年八月七日に行い、フランス共和国政府は、同議定書の効力発生に必要な憲法上の手続が完了した旨の通告を平成十九年十月二十六日に行い、我が国政府はこれを同日に受領した。よって同議定書は、その第二十一条1の規定に従い、平成十九年十二月一日に効力を生ずる。

 

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書に関する交換公文

〔平成十九年十一月二十六日号外外務省告示第六百四十号〕

 

 平成十九年一月十一日にパリで所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約を改正する議定書が署名された際、同議定書に関する次の書簡の交換がフランス共和国政府との間に行われた。

 

(日本側書簡)

 

書簡をもって啓上いたします。本使は、本日署名された議定書(以下「二千七年議定書」という。)によって改正される千九百九十五年三月三日にパリで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とフランス共和国政府との間の条約(以下「条約」という。)及び二千七年議定書によって改正される千九百九十五年三月三日にパリで署名された議定書(以下「議定書」という。)に言及するとともに、次の提案を日本国政府に代わって行う光栄を有します。

1 条約第十八条2及び議定書9Aから9Cまでの規定に関し、次の(a)から(d)までに規定する内容が了解される。

(a)  フランスにおいて設けられ、かつ、課税上認められた社会保障制度に対し、日本国内において役務を提供する個人又は当該個人に代わる者(日本国の居住者に限る。)が支払う強制保険料については、日本国における当該個人の租税の額の決定に際しては、各課税年度において、日本国の法令に基づき日本国において設けられ、かつ、課税上認められた社会保障制度に対し支払われ得る総保険料の上限額に相当する保険料の額を限度として、日本国において控除するものとして取り扱う(条約第十八条2並びに議定書9B及び9Cに定める要件を満たす場合に限る。)。当該「上限額」は、厚生年金保険及び政府管掌健康保険につき日本国の法令に基づき控除することができる上限とされる保険料の額を合算したものとする。厚生年金保険及び政府管掌健康保険に係る保険料に関し、当該日本国の法令に基づき控除することができる上限とされる保険料の額の計算については、その他の方法は適用しない。

(b)  日本国において設けられ、かつ、課税上認められた社会保障制度に対し、フランス国内において役務を提供する個人又は当該個人に代わる者(フランスの居住者に限る。)が支払う強制保険料については、フランスにおける当該個人の租税の額の決定に際しては、フランスにおける一般租税法典第八十三条1―0―2の規定に従い、フランスにおいて全額控除するものとして取り扱う(条約第十八条2並びに議定書9B及び9Cに定める要件を満たす場合に限る。)。

(c)  一方の締約国において設けられ、かつ、課税上認められた社会保障制度に対し、他方の締約国内において役務を提供する個人に関し企業が支払う強制保険料(雇用者分担金)は、当該他方の締約国における当該個人の課税所得の一部とはされない。

(d)  議定書9Aに規定する「上限額」は、(a)と同じ方法で計算する。

2 条約第二十二条のA7(c)(C)に関し、スイス証券取引所及びシンガポール証券取引所は、公認の有価証券市場であることが了解される。

3 議定書6Aに関し、日本国については、「年金基金」には、(a)に規定するもの及び二千七年議定書の署名の日の後に導入された法令に基づいて設立される同一の又は実質的に類似するものを含むことが了解される。

(a)  年金制度又は退職手当に関する共済制度であって日本国の次に掲げる法令の規定に従って実施されるものにより設立される年金基金

(@) 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)

(A) 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)

(B) 国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)

(C) 地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)

(D) 私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)

(E) 石炭鉱業年金基金法(昭和四十二年法律第百三十五号)

(F) 確定給付企業年金法(平成十三年法律第五十号)

(G) 確定拠出年金法(平成十三年法律第八十八号)

(H) 独立行政法人農業者年金基金法(平成十四年法律第百二十七号)

(I) 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)

(ⅺ) 中小企業退職金共済法(昭和三十四年法律第百六十号)

(ⅻ) 小規模企業共済法(昭和四十年法律第百二号)

(xB)  所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)

(b) さらに、「年金基金」には、日本国については、投資基金又は投資信託であってその持分の全部が年金基金に所有されるものを含むことが了解される。

 本使は、フランス共和国政府が前記の了解を受諾することができる場合には、この書簡及びその旨の閣下の返簡が両政府間の合意を構成するものとみなし、その合意が二千七年議定書の効力発生の時に効力を生ずるものとすることを提案する光栄を有します。

 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

 

 二千七年一月十一日にパリで

 

フランス共和国駐在

日本国特命全権大使 飯村豊

 

フランス共和国

予算・国家改革担当大臣

ジャン=フランソワ・コペ閣下

 

(フランス側書簡)

 

(訳文)

 書簡をもって啓上いたします。本大臣は、訳文が次のとおりである本日付けの閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 

(日本側書簡)

 

 本大臣は、フランス共和国政府が前記の了解を受諾することができるものであることから、閣下の書簡及びこの返簡が両政府間の合意を構成し、その合意が二千七年議定書の効力発生の時に効力を生ずるものとすることを確認する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。

 

 二千七年一月十一日にパリで

 

フランス共和国

予算・国家改革担当大臣

 

ジャン=フランソワ・コペ

フランス共和国駐在

日本国特命全権大使 飯村豊閣下