所得に対する租税に関する二重課税の回避のための

日本国とベルギー王国との間の条約

〔昭和四十五年四月十三日号外条約第一号・

改正平成二年十一月七日号外条約第八号〕

 

日本国政府及びベルギー王国政府は、所得に対する租税に関し、二重課税を回避するための条約を締結することを希望して、次のとおり協定した。

 

第一条

 この条約は、一方又は双方の締約国の居住者である者に適用する。

第二条

1 この条約の対象である租税は、次のものとする。

(a)  日本国においては、

(@)   所得税

(A)   法人税

(B)   住民税

(以下「日本国の租税」という。)

(b)  ベルギーにおいては、

(@)   個人所得税

(A)   会社税

(B)   非営利団体税

(C)   非居住者税

(D)   源泉徴収税及び源泉徴収税補完税

(E)   (@)から(D)にいう租税の付加税(地方公共団体のための個人所得税の付加税を含む。)

(以下「ベルギーの租税」という。)

2 この条約は、1に掲げる租税と実質的に類似の性質を有する他の租税で、この条約の署名の日の後にいずれか一方の締約国において設けられるものについても、また、適用する。

3 この条約は、海上運送及び航空運送の企業に関しては、第八条2に規定する日本国の事業税についても、また、適用する。

第三条

1 この条約において、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

(a)  「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域をいう。

(b)  「ベルギー」とは、地理的意味で用いる場合には、ベルギー王国の領域をいう。

(c)  「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又はベルギーをいう。

(d)  「租税」とは、文脈により、日本国の租税又はベルギーの租税をいう。

(e)  「者」とは、個人及び法人をいう。

(f)  「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

(g)  「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。

(h)  「権限のある当局」とは、ベルギーについては、ベルギーの法令による権限のある当局をいい、日本国については、大蔵大臣又は権限を与えられたその代理者をいう。

2 一方の締約国においてこの条約が適用される場合には、この条約において特に定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約が適用される租税に関するその締約国の法令上有する意義を有するものとする。

第四条

1 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の租税に関し当該一方の締約国の居住者であり、かつ、他方の締約国の租税に関し当該他方の締約国の居住者とされない者をいう。

2 それぞれの国内法に従い双方の締約国の居住者となる者については、権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その者が居住者であるとみなされる締約国を決定する。

第五条

1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行なう一定の場所で、企業がその事業の全部又は一部を行なつているものをいう。

2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。

(a)  管理所

(b)  支店

(c)  事務所

(d)  工場

(e)  作業場

(f)  鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所

(g)  建物工事現場又は建設若しくは組立ての工事で、十二箇月をこえる期間存続するもの

3 「恒久的施設」については、次のことは、含まれないものとする。

(a)  企業に属する物品又は商品をもつぱら保管し、展示し、又は引き渡すため、施設を使用すること。

(b)  企業に属する物品又は商品の在庫を、もつぱら保管し、展示し、又は引き渡すため、保有すること。

(c)  企業に属する物品又は商品の在庫を、もつぱら他の企業による加工のため、保有すること。

(d)  企業のためにもつぱら物品若しくは商品を購入し、又は情報を収集するため、事業を行なう一定の場所を保有すること。

(e)  企業のためにもつぱら広告、情報の提供、科学的調査又はこれらに類する準備的若しくは補助的な性質の活動を行なうため、事業を行なう一定の場所を保有すること。

4 一方の締約国内で他方の締約国の企業に代わつて行動する者(5の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)が、当該一方の締約国内で、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する場合には、その者は、当該一方の締約国内における恒久的施設とされる。ただし、その者の行動が当該企業のために物品又は商品を購入することに限られる場合は、この限りでない。

5 一方の締約国の企業は、仲立人、問屋その他独立の地位を有する代理人でこれらの者としての業務を通常の方法で行なうものを通じて他方の締約国内で事業活動を行なつたという理由のみでは、当該他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされることはない。

6 一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人又は他方の締約国内において恒久的施設を通じ若しくは通じないで事業を行なう法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによつては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設であることとはならない。

第六条

1 不動産から生ずる所得に対しては、当該不動産が存在する締約国において租税を課することができる。

2 「不動産」の定義は、当該財産が存在する締約国の法令によるものとする。不動産には、いかなる場合にも、不動産に附属する財産、農業又は林業に用いられている家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(金額が確定しているかどうかを問わない。)を受け取る権利を含む。船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。

3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他のすべての形式による使用から生ずる所得について適用する。

4 1及び3の規定は、企業の不動産に係る所得及び自由職業の活動に使用される不動産に係る所得についても、また、適用される。

第七条

1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内で事業を行なわない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内で事業を行なう場合には、その企業の利得に対し、当該恒久的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内で事業を行なう場合には、各締約国において、当該恒久的施設が同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行ない、かつ、当該恒久的施設を有する企業と、全く独立の立場で、取引を行なう別個のかつ分離した企業であるとすれば、当該恒久的施設が取得するとみられる利得が、当該恒久的施設に帰せられるものとする。

3 恒久的施設の利得を決定するに際しては、経営費及び一般管理費を含む費用で、その恒久的施設のために生じたものは、その恒久的施設が存在する締約国内で生じたか又は他の場所で生じたかを問わず、経費に算入することを認められるものとする。

4 2の規定は、恒久的施設に帰せられるべき利得を企業の利得の総額の当該企業の各構成部分への配分によつて決定する慣行が一方の締約国において行なわれている場合には、その締約国が租税を課されるべき利得をその慣行とされている配分の方法によつて決定することを妨げるものではない。ただし、用いられる配分の方法は、その方法によつて得た結果がこの条に規定する原則に適合するようなものでなければならない。

5 恒久的施設が企業のために行なつた物品又は商品の単なる購入を理由としては、いかなる利得もその恒久的施設に帰せられることはない。

6 1から5までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によつて決定するものとする。ただし、別の方法を用いることについて正当な理由があるときは、この限りでない。

7 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が企業の利得に含まれる場合には、これらの条の規定は、この条の規定によつて影響されることはない。

第八条

1 一方の締約国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによつて取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 ベルギーの居住者が営む企業は、船舶又は航空機を国際運輸に運用することについて、日本国における事業税を免除される。

第九条

(a)  一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合又は

(b)  同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合

であつて、そのいずれの場合においても、両企業間に、その商業上又は資金上の関係において独立の企業間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されるときは、その条件がなかつたならば一方の企業の利得となつたはずである利得で、その条件のために当該一方の企業の利得とならなかつたものは、その企業の利得に算入して課税することができる。

第十条

1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の配当に対しては、当該配当を支払う法人が居住者である締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。その租税の額は、次の額を超えないものとする。

(a)  日本国においては、

(@) 当該配当の受領者が、当該配当が支払われることとなる日に先立つ六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の少なくとも二十五パーセントを所有する法人である場合には、当該配当の金額の十パーセント

(A) その他のすべての場合には、当該配当の金額の十五パーセント

(b) ベルギーにおいては、

(@) 当該配当の受領者が、当該配当が支払われることとなる日に先立つ六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の少なくとも二十五パーセントを所有する法人である場合には、当該配当の金額の五パーセント

(A) その他のすべての場合には、当該配当の金額の十五パーセント

この2の規定は、配当に充てられる利得についての当該法人に対する課税に影響を及ぼすものではない。

3 この条において「配当」とは、株式、受益株式、発起人株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及びその他の持分から生ずる所得であつて分配を行なう法人が居住者である締約国の税法上株式から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいう。

4 2に規定する税率の制限は、一方の締約国の居住者である配当の受領者が、その配当を支払う法人が居住者である他方の締約国内に、その配当の支払の基因となつた株式又は持分を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。

5 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国から利得又は所得を取得する場合には、当該他方の締約国は、その法人が当該他方の締約国外において当該他方の締約国の居住者でない者に支払う配当及びその法人の留保所得については、当該支払配当又は当該留保所得の全部又は一部が当該他方の締約国内で生じた利得又は所得からなるときも、当該配当に対していかなる租税をも課することができず、また、当該留保所得に対して留保所得税を課することができない。

第十一条

1 一方の締約国内で生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の利子に対しては、当該利子が生じた締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の金額の十パーセントを超えないものとする。

3 この条において「利子」とは、公債、債券又は社債(担保の有無及び利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)その他のすべての種類の信用に係る債権から生じた所得及びその他の所得で当該所得が生じた締約国の税法上貸付金から生じた所得と同様に取り扱われるものをいう。

4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である利子の受領者が、その利子が生じた他方の締約国内に、その利子を生じた債権を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。この場合には、第七条の規定が適用される。

5 利子は、その支払者が一方の締約国又はその地方公共団体若しくは居住者であるときは、その締約国内で生じたものとされる。ただし、利子の支払者(一方の締約国の居住者であるかどうかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設を有する場合において、その利子を支払う基因となつた債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、その利子を当該恒久的施設が負担するときは、その利子は、当該恒久的施設が存在する締約国内で生じたものとされる。

6 支払者と受領者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、支払われた利子の金額が、その支払の基因となつた債権を考慮する場合において、その関係がなかつたならば支払者及び受領者が合意するとみられる金額をこえるときは、この条の規定は、その合意するとみられる金額についてのみ適用する。この場合には、支払われた金額のうち超過分に対し、利子が生じた締約国の法令に従つて租税を課することができる。

第十二条

1 一方の締約国内で生じ、他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の使用料に対しては、当該使用料が生じた締約国において、その締約国の法令に従つて租税を課することができる。その租税の額は、当該使用料の金額の十パーセントをこえないものとする。

3 この条において「使用料」とは、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(映画フィルムを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠若しくは模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受けるすべての種類の支払金及び船舶又は航空機の裸用船契約から生ずる所得をいう。

4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である使用料の受領者が、その使用料が生じた他方の締約国内に、その使用料を生じた権利又は財産を実質的に保有する恒久的施設を有するときは、適用しない。この場合には、第七条の規定が適用される。

5 使用料は、その支払者が一方の締約国又はその地方公共団体若しくは居住者であるときは、その締約国内で生じたものとされる。ただし、使用料の支払者(一方の締約国の居住者であるかどうかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設を有する場合において、その使用料を支払うべき債務が当該恒久的施設について生じ、かつ、その使用料を当該恒久的施設が負担するときは、その使用料は、当該恒久的施設が存在する締約国内で生じたものとされる。

6 支払者と受領者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、支払われた使用料の金額が、その支払の基因となつた使用、権利又は情報を考慮する場合において、その関係がなかつたならば支払者及び受領者が合意するとみられる金額をこえるときは、この条の規定は、その合意するとみられる金額についてのみ適用する。この場合には、支払われた金額のうち超過分に対し、使用料が生じた締約国の法令に従つて租税を課することができる。

第十三条

1 第六条2に定義する不動産の譲渡から生ずる収益に対しては、当該不動産が存在する締約国において租税を課することができる。

2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産の一部をなす財産(不動産を除く。)又は一方の締約国の居住者が自由職業を行なうため他方の締約国において使用することができる固定的施設に係る財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(単独に若しくは企業全体とともに行なわれる当該恒久的施設の譲渡又は当該固定的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。ただし、一方の締約国の居住者が国際運輸に運用する船舶又は航空機及びこれらの船舶又は航空機の運用に係る財産(不動産を除く。)の譲渡によつて取得する収益については、他方の締約国の租税を免除する。

3 一方の締約国の居住者が1及び2にいう財産以外の財産の譲渡によつて取得する収益については、他方の締約国の租税を免除する。

第十四条

1 一方の締約国の居住者が自由職業その他これに類する独立の活動に関して取得する所得に対しては、その者が自己の活動を遂行するために通常使用することができる固定的施設を他方の締約国内に有しない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。その者がそのような固定的施設を有する場合には、当該所得に対しては、当該固定的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 「自由職業」には、特に、学術上、文学上、美術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含む。

第十五条

1 第十六条、第十八条及び第十九条の規定を留保して、一方の締約国の居住者が勤務に関して取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、その勤務が他方の締約国内で行なわれない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内で行なわれる場合には、その勤務から生ずる報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内で行なう勤務に関して取得する報酬に対しては、次のことを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

(a)  その報酬の受領者がその年を通じて合計百八十三日をこえない期間当該他方の締約国内に滞在し、

(b)  その報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われ、かつ、

(c)  その報酬が当該他方の締約国内に雇用者が有する恒久的施設又は固定的施設により負担されないこと。

3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機において行なわれる勤務に関する報酬に対しては、その締約国において租税を課することができる。

第十六条

 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する日当その他の報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

第十七条

1 第十四条及び第十五条の規定にかかわらず、演劇、映画、ラジオ又はテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人及び運動家がこれらの者としての個人的活動により取得する所得に対しては、その活動が行なわれる締約国において租税を課することができる。

2 この条約のいかなる規定にもかかわらず、1の芸能人又は運動家の役務が一方の締約国内において他方の締約国の企業により提供される場合には、その役務の提供により当該企業が取得する利得に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。

第十八条

 第十九条1の規定を留保して、一方の締約国の居住者に対し過去の勤務につき支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

第十九条

1 政府の職務の遂行として一方の締約国又はその地方公共団体に提供された役務について、当該一方の締約国の国民に対して、当該一方の締約国若しくはその地方公共団体が支払い、又は当該一方の締約国若しくはその地方公共団体の支出に係る基金から支払われる報酬(退職年金を含む。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

2 一方の締約国又はその地方公共団体が利得を得る目的で行なう事業に関連する役務につき支払われる報酬又は退職年金については、第十五条から第十八条までの規定を適用する。

第二十条

 第十五条の規定にかかわらず、大学、学校その他の教育機関において教育を行なうため一方の締約国を訪れ、二年をこえない期間一時的に滞在する教授又は教員で、現に他方の締約国の居住者であり、又は訪れる直前に他方の締約国の居住者であつたものに対しては、その教育に関して取得する報酬につき、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。

第二十一条

 もつぱら教育又は訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者で現に他方の締約国の居住者であり、又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であつたものがその生計、教育又は訓練のため受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、その給付が当該一方の締約国外から支払われるものであることを条件とする。

第二十二条

 一方の締約国の居住者の所得で前諸条に規定されていないものに対しては、その締約国においてのみ租税を課することができる。

第二十三条

1 この条約の規定に従つて直接に又は源泉徴収により納付されるベルギーの租税は、日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令の現行の規定及びこれらの規定についてその後行なわれる改正でその原則に影響を及ぼさないものに従い、日本国の租税から控除するものとし、また、当該所得が、ベルギーの居住者である法人が自己の株式又は資本の二十五パーセント以上を所有する日本国の居住者である法人に支払う配当であるときは、前記の控除にあたり、分配を行なう法人がその利得について納付するベルギーの租税も、また、考慮に入れるものとする。

2 日本国内の源泉から生じた所得で、この条約に従い直接に又は源泉徴収により日本国において租税を課されており、かつ、ベルギーの法令に従いベルギーにおいて租税を課されるものについては、

(a)  (@)  ベルギーの居住者である法人が日本国の居住者である法人の株式を所有する場合には、その株式について当該ベルギーの居住者である法人に支払われる配当で第十条4の規定の適用を受けないものは、ベルギーにおいて、これら双方の法人がベルギーの居住者であつたとすれば認められる免除の限度まで、第二条1(b)(A)に掲げる租税を免除される。

同様に、ベルギーの居住者である法人で、日本国の居住者である法人の株式をその法人の事業年度の全期間にわたり直接に所有するものは、当該日本国の居住者である法人で第二条1(a)(A)に掲げる租税を課されるものから支払われる前記の配当の純額について、ベルギーの法令に従い動産から生ずる所得について課される源泉徴収税の免除又は還付を受ける。ただし、当該ベルギーの居住者である法人が前記の源泉徴収税を課されていない配当をその株主へ再分配する場合には、その時に分配され、かつ、前記の源泉徴収税を課されるべき所得は、ベルギーの法令の規定にかかわらず、当該配当の額に相当する額の控除を受けることはない旨の了解の下に、当該法人が申告書の提出期限までに前記の源泉徴収税の免除又は還付を書面により申請することを条件とする。この免除は、ベルギーの居住者である法人がその利得について個人所得税を課されることを選択した場合には、適用しない。

   もつとも、この(@)の規定の適用は、第二条1(b)(A)に掲げる租税の免除に関してベルギーの法令がベルギーの居住者でない法人が支払う配当について同様の制限を課する場合には、日本国の居住者である法人がベルギーの居住者である法人で当該日本国の居住者である法人の議決権の二十五パーセント以上を直接又は間接に支配するものに支払う配当に限定される。

(ii) (a)(@)の規定に該当しない場合において、ベルギーの居住者が第十条2、第十一条2及び6並びに第十二条2及び6に規定する所得を取得するときは、ベルギーは、その所得について課されるベルギーの租税から、日本国において納付された租税を控除するものとする。控除は、日本国の居住者である法人の配当並びに日本国で生じた利子及び使用料で日本国で課税されたものの純額について課される租税から行なうものとする。控除は、ベルギーの現行の法令(その法令の原則に影響を及ぼすことなく行なわれるその後の改正を含む。)に規定されている外国の租税の一定の割合とする。

(b)  (@) ベルギーの居住者が(a)に規定する所得以外の所得でこの条約の規定に従い日本国で租税を課されるものを取得するときは、ベルギーは、その所得について租税を免除するが、当該居住者のその他の所得に対する租税の額の算定にあたり、前記の所得が免除を受けなかつたとすれば適用される税率を適用することができる。

(A) 法人その他の団体の構成員の所得でベルギーの法令により事業上の利得として課税されるものは、当該構成員が自己の利益のために行なう事業から生ずる利得として取り扱うものとする。

(B) (b)(@)の規定にかかわらず、日本国において課税される所得に対しては、日本国においてその所得から控除された欠損金でいずれかの課税年度においてベルギーで課税される所得から控除されたものに相当する額まで、ベルギーの租税を課することができる。

3 この条の規定の適用上、「日本国の居住者」とは、日本国の租税に関し日本国の居住者とされる者をいい、「ベルギーの居住者」とは、ベルギーの租税に関しベルギーの居住者とされる者をいう。

第二十四条

1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、同様の状況にある当該他方の締約国の国民が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件と異なり又はそれよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。

2 「国民」とは、

(a)  日本国については、日本国の国籍を有するすべての個人並びに日本国の法令に基づき設立され又は組織されたすべての法人及び法人格を有しないすべての団体で日本国の租税に関し日本国の法令に基づき設立され又は組織された法人として取り扱われるものをいう。

(b)  ベルギーについては、ベルギーの国籍を有するすべての個人及びベルギーにおいて施行されている法令によりその地位を与えられたすべての法人、組合その他の団体をいう。

3 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行なう当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。

この規定は、一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として自国の居住者に対して認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に対して認めることを義務づけるものと解してはならない。

4 一方の締約国の企業で資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者によつて直接又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の類似の他の企業が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件と異なり又はそれよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。

5 この条において「租税」とは、すべての種類の税をいう。

第二十五条

1 いずれの締約国の居住者も、一方又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合しない課税を受け又は受けるに至ると認めるときは、両締約国の法令で定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対し、その事件について申立てをすることができる。

2 その申立てが正当であると認められ、かつ、その権限のある当局が適当な解決を与えることができないときは、その権限のある当局は、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によつてその事件を解決するように努めるものとする。

3 両締約国の権限のある当局は、この条約の適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によつて解決するように努めるものとする。

4 両締約国の権限のある当局は、この条約の規定を実施するため、直接相互に通信することができる。

第二十六条

1 両締約国の権限のある当局は、この条約及びこの条約が適用される租税に関する両締約国の国内法令で、それに基づく課税がこの条約の規定に適合する課税であるものを実施するために必要な情報を交換するものとする。このようにして交換された情報は、秘密として取り扱わなければならず、この条約が適用される租税の賦課及び徴収に関与する者(当局を含む。)以外のいかなる者にも漏らしてはならない。

2 1の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行なう義務を課するものと解してはならない。

(a)  当該一方の締約国若しくは他方の締約国の法令又はその行政上の慣行に抵触する行政上の措置を執ること。

(b)  当該一方の締約国若しくは他方の締約国の法令の下において又はその行政の通常の運営において入手することができない資料を提供すること。

(c)  営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反するような情報を提供すること。

第二十七条

   この条約の規定は、国際法の一般原則又は特別の協定の規定に基づく外交官又は領事官の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

第二十八条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにブラッセルで交換されるものとする。

2 この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生じ、かつ、次のものについて適用する。

日本国においては、

この条約が効力を生ずる年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得

ベルギーにおいては、

(a)  この条約が効力を生ずる年の一月一日以後に貸記され又は支払われる所得について源泉徴収されるすべての租税

(b)  この条約が効力を生ずる年の十二月三十一日以後に終了する各課税年度の所得に対するすべての租税(源泉徴収されるものを除く。)

第二十九条

 いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間を経過した後に、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面による終了の通告を与えることにより、この条約を終了させることができる。ただし、その通告は、各年の六月三十日以前に与えなければならず、この場合には、この条約は、次のものについて適用されなくなる。

 日本国においては、

 その通告が行なわれた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得

 ベルギーにおいては、

(a)  その通告が行なわれた年の翌年の一月一日以後に貸記され又は支払われる所得について源泉徴収されるすべての租税

(b)  その通告が行なわれた年の翌年の十二月三十一日以後に終了する各課税年度の所得に対するすべての租税(源泉徴収されるものを除く。)

 以上の証拠として、下名は、このために正当な委任を受け、この条約に署名した。

 

 千九百六十八年三月二十八日に東京で、英語により本書二通を作成した。

 

日本国政府のために

三木武夫

 

ベルギー王国政府のために

アルベール・ユッペール

 


議定書

 

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約に署名するにあたつて、下名は、同条約の不可分の一部をなす次の規定を協定した。

 

1 第五条の規定に関し、一方の締約国の企業は、他方の締約国における建物工事現場又は建設若しくは組立ての工事に関連して、十二箇月をこえる期間、当該他方の締約国内で監督活動を行なう場合には、当該他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされる。

2 第十条3の規定に関し、株式資本を有する法人以外のベルギーの法人について「配当」とは、投下資本に係る所得としてその法人の構成員に支払われる給付をいう。

3 第十六条の規定に関し、法人の役員の報酬で管理的又は技術的性質の日常の任務の遂行に関して当該法人から受領するものについては、これを勤務に関して被用者に支払われる報酬とみなし、「雇用者」とあるのは「法人」として、第十五条の規定を適用する。

4 この条約のいかなる規定も、ベルギーが次の租税を課することを妨げるものではない。

(a)  ベルギーの居住者である法人の資産の分配に際して支払われる金額の全部又は一部についてベルギーの法令に基づいて課される特別賦課金

(b)  ベルギーの居住者である法人の株式の買戻しに際してベルギーの法令に基づいて当該法人に対して課される特別賦課金

 

 以上の証拠として、下名は、このために正当な委任を受け、この議定書に署名した。

 

 千九百六十八年三月二十八日に東京で、英語により本書二通を作成した。

 

日本国政府のために

三木武夫

 

ベルギー王国政府のために

アルベール・ユッペール

 

(右条約の英文)〔省略〕

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約の効力の発生

〔昭和四十五年四月十三日号外外務省告示第六十三号〕

 

昭和四十三年三月二十八日に東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約の批准書の交換は、昭和四十五年三月十七日にブラッセルで行なわれた。よつて同条約は、その第二十八条の規定に従い、昭和四十五年四月十六日に効力を生ずる。

 


所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約に関する書簡の交換

〔昭和四十五年四月十三日号外外務省告示第六十四号〕

 

昭和四十三年三月二十八日に東京で所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約が署名された際、次の書簡の交換が行なわれた。

 

(日本側書簡)

 

(訳文)

書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約に言及し、両国政府間で到達された次の了解を日本国政府に代わつて確認する光栄を有します。

1 第四条2の規定に関し、双方の締約国の居住者となる個人については、経済協力開発機構の模範条約案第四条2に定める原則を考慮に入れて、問題を合意により解決するものとする。

2 第三条1(h)の規定に関し、ベルギーについては、「権限のある当局」とは、次の者をいうものと了解される。

(a)  第四条2及び第二十五条2から4までの規定の適用上は大蔵省所得税総局長

(b)  第二十五条1の規定の適用上は所得税局長でその管轄の下において賦課が行なわれたもの

3 第八条1の規定に関し、この規定は、航空機を国際運輸に運用する一方の締約国の企業がいかなる種類の共同計算、共同経営又は国際運営共同体に参加している場合についても、同様に、適用するものと了解される。

4 第十二条及び第十三条の規定に関し、ある支払金につき条約第十二条又は第十三条のいずれの規定を適用すべきかの問題については、特許権その他これに類する財産の真正な、かつ、いかなる権利をも譲渡人に残さない譲渡から生ずる収益についてのみ第十三条の規定を適用することが了解される。

5 第二十四条3の規定に関し、一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国内に有する恒久的施設についての税率の適用は、その税率が、他方の締約国の居住者である法人の収益の大きさにより又はその収益が分配されているか否かによりその収益に対して異なる税率が適用されるために当該他方の締約国の法人に適用される税率と異なるときには、第二十四条3の規定に適合したものであると了解される。

 

 本大臣は、閣下が前記の了解を貴国政府に代わつて確認されるよう要請する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 

 千九百六十八年三月二十八日に東京で

 

日本国外務大臣

三木 武夫

 

日本国駐在ベルギー王国特命全権大使

アルベール・ユッペール閣下

 

 

(ベルギー側書簡)

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 

(日本側書簡)

 

 本使は、前記のことがベルギー王国政府の了解でもあることを本国政府に代わつて確認する光栄を有します。

 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 

 千九百六十八年三月二十八日に東京で

 

日本国駐在ベルギー王国特命全権大使

アルベール・ユッペール

 

日本国外務大臣

三木 武夫閣下

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約(抄)

〔平成二年十一月七日号外条約第八号〕

 

日本国政府及びベルギー王国政府は、千九百六十八年三月二十八日に東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約(以下「条約」という。)を改正することを希望して、次のとおり協定した。

 

第一条・第二条 〔略〕

第三条

1 この議定書は、批准されなければならない。批准書は、できる限り速やかに東京で交換されるものとする。

2 この議定書は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずるものとし、次のものについて適用する。

日本国においては、

この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得

ベルギーにおいては、

この議定書が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に貸記され又は支払われる所得

3 この議定書は、条約が有効である限り効力を有する。

 

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

 

 千九百八十八年十一月九日にブラッセルで、英語により本書二通を作成した。

 

日本国政府のために

加藤吉弥

 

ベルギー王国政府のために

L・ティンデマンス

 

(右条約の英文)〔省略〕

所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約を改正する議定書の効力の発生

〔平成二年十一月七日外務省告示第五百二号〕

 

 

昭和六十三年十一月九日にブラッセルで署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約を改正する議定書の批准書の交換は、平成二年十月十七日に東京で行われた。よつて、同議定書は、その第三条2の規定に従い、平成二年十一月十六日に効力を生ずる。